2002年 モンゴルの労働事情

2002年12月4日 講演録

モンゴル労働組合連盟(CMTU)
エルデネフー ニャムスーレン

モンゴル労働組合連盟 財政局長

 

CMTUの状況

 CMTUは、地域組織が22、産業別組織が12の組織で構成されています。CTUMの加盟人員数は約40万人です。CMTUは、ICFTU(国際自由労連)及びそのAPROに加盟しています。また産業別労働組合は、それぞれの国際産業別組織(GUF)に加盟しています。CMTUの全体的な方針および、、政策を地方において個々に実行する組織は県、首都レベルの労働組合になります。
 CMTU大会が最高決定機関で、日々の活動は総評議会で決定されます。総評議会は50名の委員で構成され、それぞれの県、首都、産業別労働組合及び女性、青年委員などのトップで構成されています。総評議会では労働組合の規則、申請事項や、苦情処理、財政問題などが討議されます。県、首都レベルの労働組合は、独自の会合に開催して、その下部組織に当たる単組などの活動について、話し合いを行います。
 CMTUは、労働者の権利・利益を守るために、現行の法律の改善、また新しい法律についての意見表明を行なっています。またILOの諸会議にモンゴルの労働者を代表して参加して、モンゴルの状況について国際的な理解を広めています。また緊急に決定を要する問題に関して、政労使の三者による話し合いに参加し、調整作業などに当っています。
 各レベルの労働組合組織は、すなわち産業別労働組合は省庁などと交渉し、単組は経営側を交渉対象とし、問題の解決を図ります。これら労働問題、社会問題の解決のために、基本的には行政、経営者、労働組合の三者に話し合いの中で、社会的合意形成を行ないながら、さまざまな問題の解決を図っていきます。

CMTUの活動状況

 政府は、高齢者年金に対する政府援助を、年度内に2回の段階を経て、最終的には25%増やす約束をしたのですが、年度末になっても20%増しか実現できなかったために、CTUMは政府を相手に、労働法に基づいた労働争議を起こしました。また最低賃金を3万6,000トゥグルク(約1ドルが1,100トゥグルク)にまで引き上げるという約束を履行しなかった政府に対し、労働争議を起こしました。これら2つの問題については、現在も話し合いが続いています。
 労働法の実施を確実なものとし、協定を実行させる活動も行ってます。人権デー、労働組合週間という活動を行っています。この時期には、デモを組織し、遵守されなかった労働者の権利の回復を要求し、関連研究の発表などが行われています。
 これらと同時に政府の2003年度の国家発展予算案に対して、CMTUは意見書を作成し、政府に提出しています。これら予算案に対して、以下の問題について意見を盛り込んでいます。労働組合の政策についての理解を求め、解雇された労働者の保障に必要な基本的財源を予算の中に反映させること。新規雇用の発掘。年金額の増額。税金の減額。国内産業・国内工業の発展。海外からの借金、また、予算における資産利用の状況に関して、非政府機関などと合同で監査を行うことなどです。
 モンゴルの政治に関しては、土地私有法に関する審議が行なわれましたが、この法律に反対する小政党の戦いが現在も続いています。既にこの法律は、2003年から施行される決定が出ていますが、ほかの小政党が反対運動をいまだに繰り返しているわけです。しかし国民側は、これに対して非常に落ちついて対応しており、これといって反対する行動に出ていません。
 CMTUが直面している幾つかの問題について述べると以下のようになります。公務員を組織化するための活動が行われていますが、これについては大きな問題が出てきました。だれをだれから守るのかという根本的な問題となっており、働組合は関心を払っています。

エルヘンバータル スジール
ウムヌゴビ県労働組合連盟 会長

 

地方における労働組合の状況

 地方における労働組合の活動についてと、職場における安全衛生問題についても紹介します。
 モンゴル国は、南側が中国と国境を接し、その最南部にウムヌゴビ・アイマグ県があり、モンゴルで一番大きな県です。ウムヌゴビ県の中心都市であるダランザトガトから、首都ウランバートルまで560㎞あります。このアイマグ(県)は1923年につくられ、2003年は設立80周年となります。2002年現在において6,548世帯、人口は4万4,594人です。15のソム(県の下の行政単位の1つ、54のバ)グ(ソムのさらに下の行政単位)で構成されています。その中でも最も大きなソムは、ダランザトガト・ソムで、人口は1万3,420人です。15のソムにそれぞれ労働組合、県の中央部に産業別労働組合、全部で30の労働組合があります。
 1999年に「労働について」という15章142項からなる法律が制定されました。行政、経営者、労働組合の三者の話し合いにより、3つの言葉で法律を制定し、出版されました。この法律は制定されてから今日まで、一切変更されていません。最近、この内容について、変更を加えるべき事項があるのではないかと言われ始めました。この法律を施行する際に、幾つか条件と合わない事項が出てきたために、労働省による改正案がつくられています。モンゴルでは、週5日制、40時間が労働時間と決まっています。
 モンゴルでは、1,000の発展目標が掲げられていますが、それらは8つの基本事項に集約されます。貧困、飢餓からの脱却。全国民が最低限の教育を受けること。男女平等を推進し、女性の義務・役割を増やすこと。これに関しては、モンゴルの女性連合組合から、1つまとまった考えが提出されています。乳幼児死亡率を低下させること。母親の健康維持。エイズ対策。自然環境の保護のために世界との協調を深めていくことなどが含まれています。わが県において特に今、問題視されているのは、まずは貧困、次に財政難、社会保障問題、失業問題、過疎化の問題です。過疎化ということでつけ足しておくと、人間が過疎化していくだけではなくて、自然環境を過疎化するというモンゴル語になりますが、草がなくなり、動物もいなくなりという状況も含めています。国民の移動に関する問題。7番目には生活環境の問題。次が人事問題。次が規律をよりよきものにしていくための問題などです。
 これらの問題を解決するために、政府に対してさまざまな要求をしてます。例えば、雇用対策推進のための法律を制定させました。これに沿って、就職支援を行う基金を設立しました。この基金の結果として、失業者・貧困者数の削減に非常に大きな影響を与えることができたと思われます。県に登録され、把握されている失業者は751名と言われていますが、潜在的な失業者数を全部合わせるとおそらく3,000名に及ぶと思われます。失業・貧困を減少させるために就職を推進する活動が、以下のように行われています。専門的職業を持っている人に対して、その職業を証明する証明書を発行すること。専門的技術を得るための再教育。小規模の融資。経営者たちを支援すること。社会貢献度の高い仕事を創造していくこと。活動のための資材・物資などを豊かにし、専門技術の向上に努めるなどが行われ、成果を上げています。
 地方労働組合が直面している困難な問題点として、特に私の県では、県の労働組合が郡の労働組合において活動できずにいます。労働組合の組合費を県に集中させられないために、県の側で何か活動を行おうとしても、財政的に問題があって不可能です。地方に行くための交通機関、輸送機関、また、それらの活動を支えるための物品・物資が不足しているために、教育活動及び研究活動などを行うことができずにいます。組合員等の選挙によって選出された組合役員たちが、大変消極的な活動を行っているという問題もあります。構成員が大変少ないために、影響力を持ち得ずにいます。土地があまりにも広いために、郡と郡の間が大変遠く、また県との連絡などもとりにくいために、交流を行うのが非常に難しくなっています。
 このような状況下において、組合員をいかに増やしていくかという点、また、どのように奨励すれば、労働者たちが我々の組合に参加してくれるのかという点について、皆さんに伺えればと思っています。これらの困難からの脱却のために、韓国、香港の方々からのご意見もいただけると思って、来ています。
 またJILAFの支援で職場の安全衛生問題に関するプロジェクトをご紹介します。このプロジェクトは我々の県において、大変大きな成果を挙げています。今お見せしている写真は、プロジェクトの様子を移した写真です。この施設は、2000年に韓国資本によって建設された集中暖房システムのお湯を供給する施設です。大変優秀な建物で、壊れることもなく、立派に仕事をしています。このプロジェクトには郡及び県にあるさまざまなレベルの労働組合の人間が参加しました。プロジェクトに従って行われたセミナーなどに参加している様子の写真です。今後この教育活動を行っていくための専門家を育て、継続的な活動を行っていこうと思っています。またさらに、行政、経営者、労働組合が共同して、このプロジェクトを、さらに企業別に行うことによって、よい結果を得ることができるのは間違いないでしょう。
 日本のように市場主義経済の大変発達した国において、組合員たちの間で、どのような教育活動が行われているのか、大変興味があります。また、労使協定違反をいかに食いとめればいいのかについても伺えればと思っています。労働関係のよい面、悪い面について、今回のプログラムで勉強して、自国において、よきを広め、悪しきをなくしていくために活動していこうと考えてます。

2002年2月6日 講演録

モンゴル労働組合連盟(CMTU)
スフバートル ザルマ

モンゴル労働組合国際担当会長補佐

 

国内の状況

 モンゴルの政治状況は2000年に総選挙が行われ、新内閣が発足しました。また2002年には地方選挙が行われ、新たに地方行政機関も回復しました。
 1996年から2000年まで政権を担当した民主連盟は2000年の選挙で大敗し、野党であったモンゴル革命党が国会の76議席のうち72席を占めることになりました。現在、国会では民主連盟に加盟している民主関係の党は2議席のみを持っているだけです。CMTUは、あらゆる政党から独立した活動や運動を展開しています。特定の政党を支持していません。
 次に最近2年間のモンゴルの経済状況について、いくつかの数字をご紹介します。新しい政権が発足して以来、製造業や鉱業分野において、多少の経済成長が見られますが、年平均経済成長率は現時点で1.1%に留まっています。このような低い経済成長にも関わらずインフレ率は2000年は8.1%、2001年は11.2%に達しました。
 このような経済困難の中で、生活水準は下がり、生計費は高くなっています。人口は以前、かなり高い増加率を保っていましたが、現在は1.4%の年増加率に留まっています。失業も深刻化しています。労働調整局の統計によると、2001年の失業率は15.4%で、完全失業者数は14万8,000人です。
 新政権が発足してから1年半になります。いくつかの分野では国民の生活に明るい兆しが見られますが、必ずしもこれは国民の生活水準が向上していることにはならないと、CMTUは考えています。このような経済的に困難な状況の中、先月の30日にCMTUの執行委員会が開催されました。その執行委員会で労働者の利益を守るために労働組合として、対話を進めながらも、必要な場合は労働紛争も辞さない方向で運動や活動を展開していくという決定を行ないました。
 モンゴルが市場経済体制に移行して以来、モンゴル政府のマクロ経済対策は基本的にはIMFなどの国際金融機関その他の指導や援助に基づいて進められてきたと言っても過言ではありません。最近、政府はIMFと共同で、貧困解決のための対策案という声明を発表しました。
 この声明の中には、これから3年の間に国内総生産を4%から6%まで引き上げること、インフレ率を10%台に抑えること、また政府予算の赤字を6%まで抑えることなどの課題と目標が掲げられており、労働組合側としては、これらの課題や目標に賛同し支援していく方針です。
 しかし、政府の政策の一環として国有企業の民営化が急速に進められています。また行政機関の改革なども進められています。これらの対策の過程で労働者の生活水準が下がり、労働者の基本的権利などが侵害されることも起るのではないかと思います。CMTUは政府に対して、労働者の権利を守るための対策も同時に打ち出していくことを強く要求していく予定です。
 2002年末に政府は、さまざまな国際機関と一緒に進めてきた政策の結果を取りまとめ、それを国民に発表する予定になっています。CMTUは、その内容を注意深く精査し、それ以降打ち出される政府の政策等に対して、労働者の権利を守るための政策要求を打ち出していく予定です。
 1991年から2001年の10年間にわたる我が国への国際機関や支援国からの援助の総額は予定では29億3,000万米ドルの約束でした。これらの支援約束の72%が2000年までに実施されました。昨年は総額3億3,000万ドルの国際支援の約束がありました。そのうちの52%が低金利融資支援の約束でした。これらの数字が何を意味しているかというと、政府がいかにしてモンゴル自身の力、国内の生産性を高めるため政策を重視せず、逆に海外からの支援に頼りきってしまっているかを表していると思います。現在の我が国の財政は海外からの支援に依存した状況にあると、CMTUは見ています。
 そのほかの政府の政策の中にも労働者の権利に反するものが多くあると思われます。例えば政府は、2001年から2004年にかけて、国有企業の大規模な民営化を推し進める方針を打ち出しています。この方針によると100近くの中小の国有企業を民営化することや、また国内の有力な16の大国有企業を民営化する予定が組み込まれています。
 しかしこのような過程で民営化が正当に行われるように具体的な政策が同時に打ち出されない限り、これらの国有企業で働いている労働者の権利や雇用が損なわれるとCMTUは考えています。そのために、民営化の過程で雇用を守ること、従業員の職業訓練を行うこと、そのほかにさまざまな手当てや補助を行うことなどを同時に国の政策の中で約束すべきであると、労働組合としては考えています。政府はこれらの国有企業の労働組合と交渉を行うなり、話し合いを行なう場を設けるべきであります。
 CMTUは労働者の実質賃金を引き上げるために、政府や使用者側と協議、交渉を行う予定があります。交渉要求事項の中で労働者の賃金を20%近く引き上げるべきという項目が含まれています。賃金の引き上げ率を決定する制度に関して、基本的にその年や、そのときの消費者物価指数の上昇率を考慮した制度をつくるべきです。このような具体案をもって、来月行われる予定の三者の交渉に臨む予定です。

CMTUの活動方針

 活動方針については、労働組合組織の構造をこれからももっと強化していく必要があると考えています。国有企業の民営化に伴い、労働者が労働組合から離れる傾向があります。また新たな外資系企業の労働者を労働組合に加盟させていくための活動もCMTUの直面している重要な課題の1つです。
  現在のCMTUは公務員の加盟率が高いわけですが、国内の産業構造はより民間部門が成長していく過程ですので、CMTUとしても民間部門、特にサービス部門の労働者を組織化していくことに力をいれていかなければなりません。その関係で、CMTUは国際的な労働組合組織や機関から様々な支援を受けていますが、JILAFがモンゴルで実施している労働安全衛生に関するセミナーや、労使関係に関するセミナーは我々にとって極めて有意義であり、活動を推進していく上で非常に参考になっています。