1999年 モンゴルの労働事情

1999年2月10日 講演録

ナムナンドリージ・チェベグジャブ
モンゴル労働組合連盟 中央組織オルガナイザー

 

モンゴル労働組合(CMTU)の活動状況

 モンゴルの労働組合運動は、1917年に始まりました。1927年の大会で、正式にモンゴル労働組合連盟として結成されました。
 傘下には、13の産業別の組織、22の地域別組織があります。これらの組織に44万4,000人弱の組合員がいます。また、1994年にICFTUに加盟しました。1997年にはモンゴルで初めて労働組合の権利に関する法律が採択されました。現在、CMTUの管轄している機関には、学生数が700名近くあるモンゴル労働大学、文化会館、労働事情に関する研究等を行う機関のトレーニングセンターなどがあります。
 1998年は、我々にとっては非常に困難な1年でした。その理由としては、1996年に、モンゴルで初めて政権をとった民主連盟の内閣が、96年から98年の間に2回も解散してしまったことがあります。最初の内閣は、6ヵ月間しか機能せず、そのために、労働組合から支持されていた種々の政策や方針が、後回しされる結果になりました。そのようなこともあり、昨年我々は2回ほど全国的なデモを行いました。また、地域によってはストライキなども行いました。
 本年度、我々にとっての最大の課題は、21世紀に向けての第一歩である2000年のCMTU大会の開催ですが、そのなかで第1番目に、組織強化、第2番目に、地域や産業別組織の財政状況を整備があげられます。また今年度、全国レベルの三者協議を行う予定もあります。

モンゴルの雇用情勢

 それでは、現在のモンゴルの労働雇用情勢について、データも紹介しながら申し上げたいと思います。
 モンゴルでは、年々雇用情勢が悪化しつつあり、失業者が増加過程にあります。1998年の統計によりますと、モンゴルの労働人口は116万人弱で、そのうち67%は職を持っています。モンゴルには、政府管轄の労働調整所、日本で言う職業安定所がありますが、それらの職業安定所に6万3,700人が登録しています。これは、モンゴルの労働人口の7.5%に相当する数値になるわけですけれども、1997年に比べますと、3.3%登録者が増加したことになります。
 現在の失業者のうち51%は女性です。失業者の3.5%は高等教育を受けている人たち、10.3%は短大や専門学校を卒業した者、22.3%は職業訓練を受けた労働者、9%は高等学校の卒業者、11.1%は義務教育を受けていない人たちです。
 これらのデータを見ますと、モンゴルの雇用情勢は非常に大変な時期にあるということがおわかりになるかと思います。モンゴルの失業者がなぜこんなに多いのかという要因について次のことがあげられます。
 まず、現在のモンゴルにおける経済問題です。公営企業の民営化や行政機関の構造改革が原因で、何百という雇用がなくなったわけです。ここで、一つ例を申し上げますと、以前、国営企業だった製靴工場では2,000人が働いていましたが、現在従業員は300人まで減らされているというような現状があります。CMTUは、これらの情勢を改善するために、雇用安定を図るための法を整備し、失業保険の制度を強化すること、職業安定所の活動等を拡大することなどの要請を政府に対して出しています
 この雇用情勢に関する問題については、昨年の6月29日から31日の間に、ICFTU-APROの協力で、国際会議をウランバートルで行い審議しました。その結果、現在、保健関連の分野において効果を上げています。
  しかし、賃金の引き上げや年金、他の社会保障手当の増加等については政府に対して働きかけていますが、現状の生活水準の悪化に追いつかない状況が続いています。ここに、一つ統計水準を申し上げたいと思います。1990年に、モンゴルにおける一家庭のエンゲル係数は40%でしたが、1998年には、それが60%に引き上がっています。失業に伴い、国民全体の生活状況が悪化し、モンゴルの国民構成における貧困層が増大しているわけです。1998年の時点で、モンゴルの貧困家庭のうち40.6%は、収入源のない家庭です。政府も1994年に貧困対策を打ち出し、2000年までに貧困層を10%までに減らす目標を掲げて、政策等を行っています。
  1998年におけるモンゴルのインフレ率は、1990年と比べますと、198%で8倍であります。それに対し、年金の最低水準は60%しか増加しておらず、賃金の平均も55%しか上がっていません。もちろん、CMTUとしては、このインフレ率を下げるためにいろいろ活動を行っています。政府は、賃金の基準を否定したり、年金の金額を一定水準に保ちながら、インフレ率を下げようという政策を打ち出しています。しかしそれは、労働組合としては、良い方法ではないと主張しています。
 現在、モンゴルの年金の平均は月14ドルぐらいです。賃金の平均は月55ドル弱です。これは、今まで政府が勝手に決めてきた賃金水準であると我々は見ています。1998年から生活最低基準を保護することに関する法律が採択され実施されています。この法律の中で、生活最低基準は、今までは内閣の管轄機関が算出していましたが、これからは国会管轄の国民統計機構がその水準を算出するという制度に変わりました。
 現在のモンゴルにおける各家族の生活最低基準というのは、都心部では月1万6,000ツグリク、地方では月9,600ツグリクであるというような基準があります。今年行われる予定の全国的な三者協議の中で、CMTUとしては、生活最低基準を月2万5,000ツグリクまで上げるようにという要請を出しています。(事務局注記:1998年1ドル=約830ツグリク)

労働法の改正

 今度、国会で審議され、新しく改正が盛り込まれた労働法についてお話しします。1997年に採択されました労働法は、以前から適用してきた労働法とさほど変わらないものでした。現在民主化の中で、憲法も変わり、他の経済社会情勢の中で執行される法律も大きく改正されてきましたが、民主化の中で採択されてきたいろいろな法律と比べますと、今、モンゴルで適用している労働法は昔のままで、内容も一般的なものばかりです。CMTUとしては、新しい法案を早期に採択してもらえるように国会に働きかけています。
 今、国会に提出しています労働法は、15の章と133の条から成ります。この法案の主な内容は、労働協約に関すること、団体交渉や労働協約に関すること、また労使関係に関することです。CMTUは、この法案を作成し、内閣に提出、内閣の法律審議会で1回審議されています。
 この内閣法律審議会のメンバーの中に、CMTUの副会長や法律顧問が代表として入っていました。現在は、国会は休会中ですが、今年4月1日に招集が予定されており、この法案が審議される予定です。