2015年 モルドバの労働事情

2015年7月10日 講演録

モルドヴァ労働組合連盟(CNSM)
アデリーナ ダニイ

【厳しい経済情勢続く中で、労働者の生活向上など課題も山積】

 CNSMの組合員数は416,274人となっており、女性が24万4794人(58.8%)、男性が17万1480人(42.1%)となっている。また、若者が11万1084人で、全体の26.6%を占めている。現在、CNSMの部門別連盟が27団体あり、このうち9団体は国際産業別労働組合組織(Global Unions Federations-GUF)に加盟しており、18団体は産業労働組合インターナショナルズ(Industrial Trade Union Internationals)に加盟している。CNSMは34の地域において、業種横断的な地域労働組合評議会を設置している。モルドヴァの労働組合は、過去5年間に組合員数が9万人減少したので、現在の組合員数を維持するとともに、組織化し増やしていくことが課題となっている。
 モルドヴァの最低賃金は、2014年の月額1650レイ(117ドル=約1万4122円)から2015年は1900レイとなるが、ドル換算では104ドル(約1万2553円)へ下がってしまう。これは、2015年はマイナス成長(-2%)が見込まれるなど厳しい経済実態を反映した為替レートの下落によるものである。最低賃金の水準を他の国々と比較しても、モルドヴァは決して豊かな国ではないことがわかる。
 法定労働時間は1日8時間、週40時間となっている。時間外労働に関する規定は、最初の2時間までは基本の時間給の1.5倍以上で、2時間を超えると2倍以上を支払わなければならない。休日あるいは祝日労働は、2倍以上の支払い義務がある。休日あるいは祝日に出勤した場合は、本人の希望により、別の日に休暇を取得することができるが、その場合は祝日労働に対しては規定額が支払われる代わりに、休暇を取得した日は無給扱いとなる。
 モルドヴァでは、非正規労働が問題となっているが、現段階では非正規労働者を含む不安定雇用形態の労働者の置かれている状況について説明できるデータがない。社会・経済に関する報告書は、一部統計データが欠如しているか不完全であり、予測に使うことや、報告のために必要な情報を集めることは困難である。しかし、我々は、国内の全労働者の57%が非正規労働者であり、こうした非正規労働者の労働価値の総額150億レイ(約908億円)くらいになると見ている。状況は部門によって異なるものの、労働者の40%は労働契約を結んでいないと見ている。
 モルドヴァでは、移民として国を離れていく人、国外流出は非常に多い。その理由は、家族を養うためにいい職を求め、いい給料を求めて国外へ働きに行く経済移民で、行き先は、主にロシア、ヨーロッパ諸国、中でもスペイン、フランスが多い。
 モルドヴァでは、「封筒入り賃金」が横行している。これは、インフォーマル部門である農業、商業、建設、輸送部門で多くみられる。これは、使用者が賃金を封筒に入れて労働者に直接支払うことで、税金逃れをするというものである。農村部でも頻繁に行われており、女性よりも男性の方が「封筒入り賃金」を受け取っていることが多い。 
 CNSMは、政府及び国会に対して次のような要求を出している。まず、最低賃金額を平均賃金の50%から60%に設定し、その後、消費者物価の変動に合わせてスライドさせていくというものである。年金についても同様に、年金額の算出のもととなる所得を物価スライドさせるべきである。このように賃金や年金に関しては、尊厳のある生活を可能にするような最低限の保障を行うようにすべきである。
 次に、我々が抱えている問題の一つに、労使関係調整法の改悪阻止がある。また、国会は改正労働法を制定しようとしているが、これは改悪である。現行法は、使用者は労働組合の同意なく組合員を解雇できないとなっているが、この条文を改悪し、労働組合の同意がなくても使用者はしかるべき理由があれば、組合員でも解雇できるようにするものである。これを阻止しなければならない。労使紛争の件数の統計調査はないが、実際には争議は行われている。労使紛争の解決を図るための労働裁判所の創設を行うことも必要である。
 3つ目に、効果的な社会的パートナーシップというものを創設したいと考えている。国レベルでは政労使の三者委員会があるが、産別レベルではないため、産別レベルの三者委員会を設置したいと考えている。
 CNSMは、このほかにも政府や国会に対して、「封筒入り賃金」の悪しき慣行や、不法就労を減らすために、さまざまな影響力を行使すること、統一所得税率導入の阻止、職業病の予防のためのさまざまなサービスの導入の加速、電気料金、天然ガス料金の値上げ阻止、倒産の危機にある3つの商業銀行の存続などを要求している。
 これらの課題を解決するため、組合員に対して権利を保護するための相談・法律的な支援を行っている。また、労働組合として経営側と交渉を行い、労働協約、その他の合意文章に調印したり、社会・経済をテーマとしたテレビやラジオ番組、討論会に労働組合代表を積極的に参加させたり、さまざまな情報資料の作成・配布、新聞の発行や、それらの情報を通じて、労働組合関連の論文などを発表している。
 また、CNSMは、組合員に対して医療サービスも行っており、人間ドックのような健康診断も受けられるし、病気が疑われる場合は労働組合から補助も出るので、少額で医療サービスを受けることが可能である。また、リゾート地に旅行する場合には優待券を発行している。
 モルドヴァは、2014年にEUとの間で連合協定を調印し、EUからさまざまな改革指示が出された。モルドヴァ政府は、それを実行するため行動計画を立案した。今後これらがきちんと実行されるよう労働組合として注意深くモニタリングをしていかなければならない。

*1ドル=120.70円(2015年10月27日現在)
*1モルドバレイ=6.05円(2015年10月27日現在)