2013年 カザフスタンの労働事情

2013年11月15日 講演録

カザフスタン労働組合連合(FTURK)
アイジャン イブラエバ(Ms. Aizihan Ibrayeva)

相談員(経済・社会保障・労働安全衛生担当)

 

1. カザフスタンの労働情勢全般

 カザフスタンの15歳以上の労働力人口は860万人で、就業人口は820万人。失業者数は減少傾向にあり、新たな雇用が増えている。国内の労働組合員総数は200万人強である。
 就業人口中、雇用労働者は540万人、自営労働者は270万人である。カザフスタンでは、国民の労働権の尊重に大きな関心が払われている。カザフスタンにおける経済的、社会的、文化的権利に関する国際条約の批准は、労働者をはじめ全国民にとって意義深いことであった。カザフスタンでは、社会労働関係分野での国内法の改正が続いており、カザフスタン共和国『国民雇用法』が改正された。その一環として社会的雇用制度が導入され、年金受給前年齢者や障害者、オラルマン(帰還カザフ人)*、21歳以下の若者などの個別グループの雇用促進に役立っている。
 また、政府により2011年3月に「2020年までの雇用プログラム」が承認された。このプログラムの主な目的は、安定的で生産的な雇用を支援することによる、国民の収入水準の引き上げである。プログラムの対象となるのは、自営業者、失業者および貧困層のカザフスタン人で、2011年7月1日より開始されている。
 プログラムは、以下の3つの分野からなっている

  1. 職業訓練および就職あっせん
  2. 農村を中心とする起業支援
  3. 居住地で就職あるいは事業発展の見通しがない場合の他の地域への移住

 「2020年までの雇用プログラム」は、国内の150万人を対象とする計画である。国内の貧困層を人口の6%以下にし、失業率を5.5%以下に抑えるという課題を掲げている。
 現在、労働組合の地方組織は「2020年までの雇用プログラム」の参加者として、自営業者、失業者および貧困者を労働組合に勧誘する活動を行なっている。また、技能向上や職業訓練に関するモニタリングや、農村を中心に新しいプログラム実施に関する情報・解説活動も行なっている。
 現在、施行中のカザフスタン共和国『労働法』は、その構造と内容によって、労使関係の構築および調整のしかるべき手続きを提供している。同法は十分に国際基準を満たし、労使間の利益のバランスを保っている。また、労働組合に労働者の法律上の権利や利益を守る役割を果たすのに必要な権限や保障を提供している。
 労働法に従って、労使関係制度は、労働協約関係制度の拡充、労働の標準化促進、労働安全衛生管理制度改革が行なわれ、発展している。

2.労働組合が現在直面している課題

 労働法規違反は、実態としては、実践面および実生活面を見れば続いている。労働権の侵害も多く存在する。非は使用者側にあり、使用者は故意に法令違反、無視を繰り返しているとカザフスタン労働組合連合(FTURK)は考えている。
 国家労働基準監督局による摘発だけでも、年間の労働法規違反は10万件以上に上る。このほか、検察機関による摘発も数万件に上り、うち約5000件は外資系企業である。
 労災による死亡件数も増加している。労働者の不法解雇や、同一技能の労働に対する外国人とカザフスタン人労働者の賃金差別も頻繁に行なわれている。これらの問題を解決していくためには、労使紛争の平和的調整が特に重要である。労使紛争の防止に肯定的な影響を与えていくものが、社会的パートナーシップである。
 現在、FTURKはILO条約第26号「最低賃金決定制度の創設に関する条約」および第95号「賃金保護条約」の批准を求めている。FTURKのこれらの提案は、大統領直属の人権委員会にも支持されている。FTURKはまた、賃金分野、公共サービス料金設定分野における政策が政府により策定されるべきであると考えている。最近これらの分野における諸問題が顕在化しはじめている。
*オラルマンとは、『移民法』において、「オラルマンとは、外国籍または無国籍のカザフスタン人であり、カザフスタン共和国の独立の時点で国外に居住しており、カザフスタンへ定住の目的で移住してきたもの」とされている。

3.課題解決に向けた取り組み

 FTURKは労働市場問題に大いに注目している。FTURKの強い要求により、2012~2014年の基本合意書に労働市場調整、雇用確保、失業率引き下げが義務であるとの文言が入れられた。雇用創出および維持、労働者の訓練および再訓練、失業者の技能向上と他職種での訓練、労働移動の管理――などを目的とする国民雇用プログラムが、FTURKも参加して策定された。また、カザフスタンでは未だに、労働者に対する賃金の支払い遅延が根絶されていないという問題もある。今年9月1日現在、未払い総額は約100万テンゲ(約6500ドル)である。これに関しては、憲法上の国民の労働の自由および安全衛生権の擁護、賃金支払いの遅延防止、労働者の『労働権擁護関連法』の改正問題における協力を目的として、FTURKはカザフスタン共和国検事総長府との覚書締結を発起し、2011年6月9日、FTURKと検事総長府との間で、協力に関する覚書が調印された。
 カザフスタン人の生活の質的向上には、依然として新たなしかるべき基準が必要であり、これからもFTURKは、実生活に必要な最低額のレベルの生活費を算定し、貧困ライン指標の決定と、その決定方法の改善を求めて行く。
 また、適正賃金を求める闘争において重要な役割を担っているのが、最低賃金引き上げと、労働賃金分野における国家保障の引き上げである。
 FTURKは、合理的な消費に基づいた最低賃金とするために、その算出構造の見直しを求めている。これにより、労働者はしかるべく体力を回復し、家族を養い、休暇や住宅、上質な医療サービス、自身と子どもが教育を受ける権利を行使することができる。そのために、法により保障された最低賃金は、消費者物価や医療サービス、教育、住宅その他社会的サービスにかかる費用の上昇を考慮したものでなければならないし、労働力の拡大を可能にするものでなければならない。つまり、カザフスタンの経済成長に応じて賃金を引き上げ、3人ないし4人家族の生活を支えるのに十分なものでなければならないと考えている。