2012年 ベラルーシの労働事情

2012年12月14日 講演録

ベラルーシ民主労働組合会議BKDP
Mr.ラマン・ヴィクタラヴィッチ・エラシェニア

 

1.当該国の労働情勢(全般)

 ベラルーシ共和国は、東欧の小国(20万7000平方㎞)であり、人口940万人、労働人口468万6000人である。80万人以上の出稼ぎ労働者は、主にロシアとポーランドで働いている。労働者の海外流出の主な原因は、低賃金である。わが国の賃金は、東欧地域最低で月額約490ドルで、最低賃金は130ドルとなっている。消費物資が常に値上がりし、インフレ率が高い状況にある。
 さらにベラルーシ共和国の労働者の99%は短期雇用契約で働いており、簡単に首を切られてしまう。企業には本当の意味での労働組合が無い。わが国における労働者の状況は、東欧のみならず全ヨーロッパで最低だと言える。
 最近、国内の低賃金、不安定な雇用を原因とした出稼ぎ労働者の国外流失に歯止めを掛ける「大統領令」第29号が発令された。労働者が契約期間を終えずに国外に移住しようとした場合、内務機関による訴追を受けて、強制労働罰を科せられるというものである。国際的な法律に違反しているし、ベラルーシの憲法や労働法にも違反しているが、政府首脳の独断、横暴が行なわれているのである。

2. 労働組合が現在直面している課題

 独立労働組合と経営者の関係は、数社を除きパートナー的関係とは呼べない。主として経営側は、独立労働組合を閉鎖しようとしている。その手段は、労働組合活動家や一般の組合員に対し圧力をかけ、ひどい場合には解雇や労働組合活動家へのボーナス不支給、組合費のチッェクオフの停止、労働組合の活動場所や資産剥奪、労働組合活動家の企業への浸透妨害などである。経営者は、黄色い(御用)労働組合を使い労働協約や賃金合意締結の協議から、あらゆる手段で独立労働組合を排除しようとしている。
 労働者の権利侵害の最たる例が、ILO案件(議題)No.2090である。ここではベラルーシでさまざまな労働者の権利侵害があることを11項目にわたって指摘しており、7回の協議が行なわれた。

3. 課題解決に向けた取り組み

 それらの問題解決のため、労働組合は問題が起こると、交渉により現場レベルで解決しようと努力している。それが無理な場合には、最高裁を含む裁判所に訴えている。また、社会の関心を引くため、労働組合のメディアおよび独立メディアを利用している。国際労組組織やILOに対しては、すべての情報を提供している。ベラルーシにおける集団抗議行動は、現在『集団的行事法』の厳格化に伴い、実質不可能である。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)と政府の関係は、非常に緊張しており、ほとんど交流がない。政府と接点があるのは、いわゆる三者委員会だけである。ベラルーシ労働社会問題国民評議会と呼んでいる三者委員会の席でのみ、BKDPと政府の交流がある。それ以外では、政府は独立労働組合運動など存在していないふりをしている。
 事実上、政府は黄色い(御用)労働組合であるベラルーシ労働組合連盟に、労働者の利益を代表する権利を与えており、大統領は2005年、当面ベラルーシに独立労働組合は作らせないと公言した。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 ベラルーシ共和国での多国籍企業の進出は、ほとんど進んでいない。過去18年間の当局による独裁的で行政によって指揮される体制が続いたことで、"市場経済を有する社会主義の小島"と位置づけられた。従って、巨大企業の大部分は、現在国営である。しかし、過去数年の国の経済崩壊と対外債務の増加、工業企業民営化が迫っているため、近い将来わが国には多国籍企業資本が進出してくるであろう。
 現在、ベラルーシにおける多国籍企業の進出は、コカコーラ社とガスプロム社の二社のみである。