2009年 ベラルーシの労働事情

2009年9月11日 講演録

ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)
ヴィクター・スツカウ

Polotsk-Steklovolokno労働組合 委員長

 

労働基本権侵害とILO提訴

 ベラルーシでは労働者の基本的権利である団結権が侵害されている。すでに2004年にILOによる勧告を受け政府は状況を是正する義務を負いながら、このILO勧告は現在まで完全には実施されていない。
 ベラルーシには2つのナショナルセンターがある。旧ソ連モデルの労働組合をまとめているのが、ベラルーシ労働組合連盟(FPB)で、組合員総数は約400万人。この組織は政府の完全な統制下にある。現在の議長は政府の任命による。1991年に新たに組織された民主的労組をまとめるのがベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)である。BKDPは結成以来政府による絶え間ない規制と圧力を受け、組合員数は現在8,500人までに減少している。
 ベラルーシの労働組合は、1995年から2000年にかけて、ベラルーシ政府を相手として労働基本権違反を3度にわたってILOに提訴した。提訴状では以下の権利侵害が指摘された。

  • 事前の許可なく労働組合を結成する権利の侵害
  • 労働組合結成に必要な組合員の最低人数に関する事項
  • 政府の労働組合活動への介入
  • ストライキ権に関する事項
  • 労働組合に対する差別からの保護

 ベラルーシはILO総会の条約勧告適用委員会の場で労働基本権が侵害されている国として過去5回にわたって特別リストに載せられた。最後の記載は2007年6月の総会時であった。
 2007年、ベラルーシは労働組合への権利侵害を理由に、EUとの貿易特恵制度から除外され、現在までEUとの貿易で多大な損失を被っている。
 2009年になり漸くILO勧告が一定の程度であるが政府により実施される動きが出てきたが、十分な進展とは言えない。

  • 労働・社会保護省の下に、労使が協議を行う社会労働分野における法律改正協議会が設置された。
  • ベラルーシ民主労働組合会議(BKDP)が全国労働社会問題協議会のメンバーに選ばれた。その結果、BKDPは、2009-10年の基本協定書の立案・調印の当事者となっている。

 しかし、BKDPのヤルシュ議長は「ILO勧告のおかげでベラルーシの労働者は自由に団結し自ら選択するいかなる労働組合をも設立し、加盟することができるようになった。しかし民主的労働組合組織への加盟が労働者の勇敢な行為とみなされるのではなく、当然の権利とみなされるようになって始めてILO勧告の遂行における進展が図られる」と表明している。

労働組合が直面する課題

  • 労働者を労働組合から脱退させようとする使用者側の圧力から労働者を守ること。
  • 現場で労働組合を設立・登録し、組合活動を行えるように法的な保証を与える運動。
  • 大統領令によって労働者の雇用方式が短期雇用方式に変更された。国内で行われている契約雇用方式は、一時的な短期雇用契約である。事実上ベラルーシの全労働可能人口が、平均1年の短期雇用に移行させられている。期限付き契約で働く労働者は、雇用喪失を恐れて労働組合の設立や加盟の危険を冒そうとしない。その結果、賃金その他の労働条件を決定する時に、労働者の意見や希望は配慮されない。労使間の交渉はなく、使用者が押し付ける条件があるだけである。労働者は、使用者が出した条件で契約するか、それとも解雇があるだけである。この契約は労働者を威嚇することによる政治的な手段であり、最も被害を被っている労働者は民主的な独立労組に加盟している組合員である。

諸課題解決に向けた労働組合の対策

  • ILO提訴の活用およびITUCなど国際労働組合組織との協力
  • 労働組合員向けの情報提供活動の充実。
  • 各事業所レベルでの労働協約締結推進活動。
  • 三者協議会である法律改正協議会や全国労働社会問題協議会などを介しての法律立案・改正にむけて労働組合の参加を促し、また労働法規が守られているかの社会的監視の強化。
  • 労働組合活動家および組合員の労働組合教育の組織と実施。
  • 加盟組織およびその組合員への無料の法的援助サービス。
  • 権利侵害を摘発し、法的な手段その他利用可能なあらゆる手段を使っての労働組合と組合員の保護。ベラルーシでは労働者が民主的な組合に加盟しないよう威嚇する雰囲気が厳然として存在する。