2015年 アゼルバイジャンの労働事情

2015年7月10日 講演録

アゼルバイジャン労働組合連盟(AHIK)
トゥラル・スレイマノフ
ザウル・ハミドフ

 

【経済の活況で賃金、雇用も改善進むが、非正規雇用が課題】

 アゼルバイジャンの経済はダイナミックに発展を続けている。経済改革の推進、複数の産業部門の発展、石油部門の発展の加速、社会福祉の向上や社会保障の強化を目指す、という目的のはっきりした政策の結果、高いレベルのマクロ経済指数や国民の福祉向上を示す指標が達成された。2014年1月1日現在、GDPの伸びは5.8%、国民1人当たりのGDPは7985ドル(約96万3790円)である。2013年度の国民所得は8%増え、国民一人あたりでは6.6%増となっており、月平均336.6AZN(アゼルバイジャンニューマナト)、米ドル換算で432ドル(約5万2142円)となった。
 雇用労働者の月平均賃金は6.2%増の423.0 AZN(542ドル=約6万5419円)、公務員の賃金も平均で10%増加、最低賃金も13%引き上げられ105AZN(135ドル=約1万6295円)となった。さらに、すべての社会手当が引き上げられ、年金基礎部分も17.6%引き上げられ100AZN(128ドル=約1万5450円)となった。貧困率は5.3%まで下がっている。
 また、雇用促進を目的としたプログラムを実施した結果、2014年の9カ月間だけで10万人以上の新規雇用が生まれ、過去10年間で130万人の新規雇用が創出された。この結果、失業率は5%台となっている。しかし、天然資源は掘り尽くせば無くなってしまう。その為政府は経済の多様化を掲げ、非資源経済を担う民間部門の強化に力を入れている。
 AHIKは、ナショナルセンターとして市民社会の成員として、国の生活のすべての主要分野の形成に活発に参加し活動を行っている。AHIKは、150万人以上の組合員を有しており、傘下には、27の産別、504の市・地区の委員会、68の統一労働組合委員会、1万730の単組が加盟している。
 我々の活動の主要分野は、労働組合の組織機構の最適化、組合員であることのモチベーションアップ、立法活動による法整備、社会的パートナーシップの発展、組合員教育および情報活動におけるイノベーション導入、青年および女性のための活動の活性化と差別の撤廃などである。
 アゼルバイジャンの労働組合は、国の労働法規の改正に実質的な影響を与えている。我々の提案により、過去8年間で『労働法』、『行政法律違反法』、『労働組合法』などが改正された。さらには、労働者の労働安全衛生および健康増進活動の改善のため、我々は次の項目に国家予算をつけることができた。それは、労働法務・技術インスペクター、委託医師、社会保険インストラクター、スポーツ担当スタッフ、労働組合スポーツ会の専門家を労働組合の職員として雇用することである。また、国内の治療・健康増進施設への無料パスも実現した。
 AHIKの部門改編は、労働者の権利に重大な影響を与え、権利擁護活動に注力することとなった。このような対策を行った結果、組合員が大幅に増え、組織拡大に成功した。また、労働法の改正後、解雇問題などに関する組合員からの相談件数が減り、2006年の414件から2014年には345件に減少した。訴訟件数も2006年の83件から2014年は17件となった。
 労働組合は、多国籍企業労働者の組織化に関する経験がある程度蓄積されている。大会で決定された綱領には、多国籍企業の組織化や動機づけの活動を強化することを盛り込んだ。その結果、2005年の時点では、多国籍企業の68社にしか労働組合がなかったが、現在では約600社の外資系企業で労働組合が活動している。業種としては、石油、ガス、自動車、農業、食品、保険、建設などである。
 また、青年をどのように労働組合活動へ参加させるかが課題である。青年の組合活動への参加は、特別な意味を持ち始めている。青年は、労働組合が今後強化・発展するための重要な資源だと考えている。その観点から、青年労働者および学生が抱える経済、社会・労働分野における問題の解決に注力しながら、彼らを労働組合の運動に誘っている。また、集団行動を行う際には、彼らの中から活力ある人的資源を形成する必要がある。現在AHIKにおいては、組合員の内3人に1人が30歳以下の青年である。
 現在、アゼルバイジャンでは、非正規雇用の労働者を労働組合になかなか組み込むことができない。非正規労働者の組織化は、アゼルバイジャンの労働組合が抱える大きな課題である。

*1ドル=120.70円(2015年10月27日現在)