2012年 アゼルバイジャンの労働事情

2012年12月14日 講演録

アゼルバイジャン労働組合連盟AHIK
Mr. ヴサル・ママドヴ、Mr.サブーヒ・イマノヴ

 

1. 労働情勢(全般)

 2011年の統計によると、アゼルバイジャンの総人口は910万人で、そのうち、462万6000人が経済活動人口にあたり、25万900人が失業している。これは経済活動人口の約5.4%を占めている。
 2011年の国内総生産は、6345万8000ドル(2012年10月、5604万3000ドル)。 2011年の国民一人当たりGDPは7003ドルであった。 同年の平均月給は462ドル。
 これは、CIS諸国において、ロシアとカザフスタンに次いで第三位である。アゼルバイジャンでは、伝統的に石油部門の平均給与が最も高い国であり1500ドル、平均給与が最低レベルは、農業で250ドルとなっている。
 国の年金の平均額は186ドル。 2008年にはこの数字は80ドルであった。過去10年間、わが国は急速な経済成長を遂げてきた。富の再分配を意図した政策の結果、2001年の49%から2011年の7.6%となり、アゼルバイジャンの貧困レベルは大幅に低減された。最近の5年間で最低賃金は2倍になり120ドルとなった。さらに、石油部門の10%の成長とマクロ経済の良好な環境によって、新たな雇用が生み出され、失業率が2003年の10.7%から2011年の5.4%へと低下した。(ILOのメソッド))
 2009~2013年の社会・経済発展、貧困層の低減と2008~2015年の持続可能な発展、2006~2015年の雇用戦略に関する国家プログラムは、この分野の改善に貢献している。

2. 労働組合が現在直面している課題

 今日、ヨーロッパ諸国をはじめとした世界を覆う財政危機は、最も大きな問題である大量解雇とその結果である失業と社会不安をもたらした。わが国では失業者の増大がほとんど見受けられなかったが、それは問題が一切存在しないという訳ではない。
 最も緊急の問題は、労働市場における非公式な経済活動である。試算によれば、国の雇用の68.4%、または約300万人が労働契約を結ばずに働いている。これはCIS諸国内のみならず、その他の多くの国々の中でもアゼルバイジャンが突出していることに注目しなければならない。政府はこのような労働市場におけるネガティブな習慣を排除するために決定的な措置を講じている。このような措置が講じられた結果、2012年は15万人の労働者に対して、今までは存在していなかった労働契約の締結を保証することができた。
 最低賃金は、最も差し迫った問題の一つである。過去10年間で、最低賃金の増額に焦点があてられており、その結果、最低賃金は77倍に増加した。議会は2005年、国内の最低賃金は平均月収の60%以下であってはならないとするヨーロッパ社会憲章を批准した。今日、アゼルバイジャンにおける、この比率(純賃金)は29%である。
 2010年にアゼルバイジャン労働組合連盟(AHIK)の執行委員会は、3つの問題をCIS諸国の首脳に提起した。

  1. 最低生活水準以下の最低賃金の用途
  2. 賃金スライド制の最小期間
  3. 最小賃金額における外部支払金の欠如

 現在、アゼルバイジャン共和国議会によって2013年の予算とともに最低賃金の増額についても協議されている。また、統計によれば、2009年の女性の平均賃金は、男性と比べて41.4%も低いという点に注目しなければならない。

3. 課題解決に向けた取り組み

 脱税のような非公式な経済活動と闘うことは、政府、そして労働組合の利益のためである。この目的を達成するために、政府とAHIKは協力しなければならない。この問題は、特に2012~2013年の三者の一般労働協約で強調され、この領域でのコントロールを強化することで合意がなされた。
 労働組合の最大の成果の一つは、『労働法』第80条の変更である。この改正では、経営者のイニシアチブによって従業員が解雇または職員数が削減される際に労働組合の同意を得るという点が盛り込まれている。これは、新しい労働組合の設立や既存の労働組合の会員数拡大へのきっかけや動機となった。
 2005年から、CIS諸国の労働組合において、最低賃金を最低生活レベルにまで上昇させるための連帯運動が行なわれている。同時に、労働組合からの直接的な支持のもとで、さまざまな方策が施行された結果、最低賃金の最低生活レベルに対する比率は、32%から89%へ上昇した。
 雇用におけるジェンダー平等の保証の問題に関して、AHIKは政府に対し、ILOの条約No.156「家族的責任を有する労働者:平等な扱いと男女機会均等」を批准した。最終的に、昨年議会の決定により、アゼルバイジャンは昨年、同条約を批准した。
 特に重要なのは、雇用問題に対処する社会的パートナーシップの強化である。
 国内のすべての地域で、労働組合地域委員会代表の参加の下、「雇用について」の法律に準拠し、雇用促進のための委員会が設立された。現在、共和国委員会の設立に向けての準備がなされている。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 AHIKと政府の関係は、ポジティブな相互対話の上に成り立っている。特筆すべきは、2000年まで、社会的な対話、交渉、一般労働協約の締結が、政府と労働組合総連合との間でのみ行なわれていたということある。またその後、一般労働協定に加盟したのは、第三の重要なカウンターパートである起業家連盟のみであった。アゼルバイジャン労働組合は、民主的な社会対話を確立することができた。社会対話によりさまざまな困難な課題の解決や社会の安定が可能となることは、今までの経験により明らかとなっている。法基盤強化と社会対話システムの発展の問題は、一般協約に関する最も重要な問題の一つである。
 現行の一般労働協約において、一連の相互義務を含んだ一項目がこの問題にあてられている。社会対話の肯定的な結果の例として挙げられるのは、最低賃金を最低生活費のレベルまで上昇させたという点である。
 AHIKは、国の法律を改善する上で実質的な影響を及ぼしている。『労働法』の改正や変更以外で、最も重要なことに、『労働組合法』と『行政違反法(CPC)』の改正がある。
 その中で注目すべきは、組合組織に組合費を適時に支払わない経営者に対する責任追及であり、また、召集によって退職した若い労働者に対する職の供給の義務である。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

 アゼルバイジャンにある外国資本の多国籍企業では、およそ6万5000人が働いており、そのごく一部が労働組合に加入している。このような企業の経営者は、ありとあらゆる手段を使って労働組合の設立を妨げる。同時に、多国籍企業の労働者の中には、労働条件に不満を持つ地元の住人が多く、また、主にこのような企業で働く外国人よりも低い賃金が支払われている。
 AHIKは数度にわたり、この問題に関するセミナーを行ない、マスコミ報道の場で発言も行なっている。本年10月にバクーで、AHIKとILOの計画により、「多国籍企業に関するILO条約」というテーマでセミナーを行なった。セミナーには、ロシアやトルコ、カザフスタンの石油ガス企業の労働組合やILOの代表が参加した。AHIKは労働協約のための共通要件を開発し、連帯運動を実施するための情報交換のためのシステムを構築した。
 私たちの活動の結果、≪Bos Shelf≫、 ≪McDermott≫、 ≪AZFEN≫、 ≪Bahar Energy Operating Company≫といったアゼルバイジャンの石油ガス部門の多国籍企業50社の半分以上に労働組合が設立された。しかし、アゼルバイジャンの産業部門の労働組合の地道な努力にもかかわらず、「アンチ労働組合ゾーン」と言われる外国企業"British Petroleum"、"McDonalds"、"TeliaSonera (Azercell)","Hyatt Regency"、"Coca Cola"などといった企業がまだ活動を続けている。