2008年 アゼルバイジャンの労働事情

2008年6月18日 講演録

アゼルバイジャン労働組合連合(ATUC)
ジェイラ・アドハーモヴァ

国際局専門家

 

アゼルパイジャンの現状

 アゼルバイジャン労組組合は1993年、第19回アゼルパイジャン労組大会において設立された、社会的で非政治的な団体です。傘下に29の産別及び産業横断的な労組組織を抱え、組合員総数は150万人であります。 ATUCは、憲法、労働組合法、および自らの規約の枠内にのっとる形で活動をしています。更にATUCは経済力があり、社会保障が行き届き、精神性豊かで法の支配を受け、民主的な社会づくりを目指しており、その点での政府、企業家、社会運動の努力を支持しています。
 労組法は1994年に採択され、労働分野及び様々な社会・経済問題に開する法案準備への幅広い参加権を労組に与えており、かなり有効な手段であります。この労組法は、労働者の労働・社会・経済上の諸権利に関する基本文書を、ATUCとの話し合いの後で検討・採択することを求めています。そして労組が労働者を守るという自らの機能を有効に、具体的に果たすために、社会的パートナーシップの枠内で基本合意書というものが、内閣、ATUCおよび国家独立企業家連合の間に締結されています。
 アゼルバイジャンが直面している課題は、市場経済への移行期における問題であり、その問題はアルメニアとの武力紛争で受けた被害によって深刻化しています。アルメニアはアゼルバイジャンに侵攻し、アゼルバイジャン領土の約20%を占領し、約100万人が難民化したり、強制移住させられました。アゼルパイジャンは経済的にまたモラル面で甚大な被害を蒙って。

市場経済化の新労働法

 上記の特徴を認識したうえで、アゼノレバイジャン労組は、何よりもまず、労使の利益のバランスを公正に考慮した上で法的基盤を充実させる必要があると考えています。現代的な社会・経済環境や市場経済の発展には、当然労働法規の整備や労使関係の民主化が必要でありました。
 アゼルバイジャンでは、1999年、CIS諸国の中では早い時期に、新労働法が採択されました。憲法第38粂によれば、労働は個人及び社会の福祉の基礎である。各人が自らの労働能力に基づき、自主的に活動の種類や職業、業務、職場を選択する権利を有するとあります。この労働法には、労使関係における労働者及び使用者の労働・社会・経済上の諸権利が、それら諸権利に関係のある法規定とともに定められています。すなわち労働・休息権、安全で健康な環境での労働権、その他の基本的人権や自由を保障する原則・規則、またアゼルバイジャンが加盟するILO条約やその他の国際法規に従い、労使関係の発生、変更、停止を調整する規範などであります。
 また労働法は、しかるべき執行権力機関、国家=コンツェルン、企業、アソシエーション、企業合同が、自らの権限の範囲内で、また労組組織及び経営者団体の参加のもとに、労働安全衛生分野の国家政策を各職場で実現するための基本方針を定め、それに関してあらかじめ規定された施策を実施し、またこの分野でのその他の措置を行うと規定しています。この労働法は、使用者の原料(材料)、生産手段を用いて自宅で労働を行う労働者にも適用されます。
 職場で労働安全衛生規定及び規則が守られているかを評価するための職場評価実施手順や業務上災害の調査及び登録、手順、危険で過酷な労働条件の事業所や職業(職務)、女性及び18歳未満の労働者の雇用が禁じられている地下労働のリスト等の、労働安全衛生分野における一連の批准済み法規は、産業部門の枠を超え、経済活動の全部門で適用されなければなりません。
 業務上災害を受けたり職業病に罹患した場合、使用者の責任で労働者にもたらされた損害の補償にかかわる主要法規には「労働上の義務遂行の際、身体的損傷を受けたり職業病に罹患した労働者あるいはそれらの理由により死亡した労働者の家族に対する企業、施設、組織による補償給付手順について」「業務上災害の調査及び登録について」「職業病に罹患する確率の非常に高い職場のリスト承認について」の各政府決定があります。
 そして現在は、業務上災害及び職業病に備えて労働者に個人的に保険をかけることを義務付ける法案を準備中であります。
 社会的に公正で調和のとれた労使関係の形成において、もう一つ重要な問題を取り上げたいと思うのが、非正規部門での労働です。385万人の国内労働者のうち、130万人しか正規雇用労働者がおらず、255万人が非正規雇用であるため、問題は複雑です。まさに非正規経済において、労使関係を調整する労働法違反が多数みられることです。この部門に特徴的なのが、労働協約がないこと、低賃金、12~14時間(本来は8時間)にわたる長時間労働、有給休暇や休日が与えられない、病院の疾病証明書があっても有給扱いにならないなどです。ただ近年、政府、労組、経営者団体の協力のおかげで、国の法律に基づき、労使関係の一連の最重要条件を一部監管下に置くことができるようになっています。

多国籍企業の活動

 独立国家としてのアゼルバイジャンの形成及び民主的発展にとり重要な意味を持つ出来事が、1990年代に世界の大規模かつ主導的な石油会社とカスピ海の石油・ガス資源の探査・採掘及び輸送についての契約に調印したことであります。これらの契約は「世紀の契約」として我が国の歴史にその名を刻みました。「世紀の契約」においては、アゼルバイジャンの石油・ガス田の探査及び採掘だけで多国籍企業と19の契約が締結されました。
 多国籍企業における労働者の搾取問題が、アゼルバイジャン労組の主要テーマとなりました。それらの企業においては、頻繁に地元労働者の権利が侵害され、経営側が団体交渉を回避し、労働協約を締結しないケースがみられます。これらの企業で働く労働者は賃金ほしさに、同一労働をする外国人労働者の何分の1かの貸金で慟くことに同意せざるを得ない状況です。また地元専門家には、より有害で危険な職場が与えられるどの不文律があり、労働者たちは失業を恐れて差別待遇を受け入れざるを得ない状況です。
 このような状況の原因は、多くの多国籍企業幹部が、アゼルバイジャンの国内法を尊重していないことにあります。これらの企業は、国際法規、なかんずく団結権や団体交渉権をも乱暴に侵害しており、あらゆる手段を用いて労組の設立や活動を邪魔しています。このような状況に対し、アゼルバイジャン労働者は当然不満を抱き、たとえばそれはBP社(複数)及びそのコンソーシアム傘下の下請け企業における一連のストライキに発展しました。そして労組迎合や石油・ガス産業の労組の産別共和国委員会による介入の後、ようやく地元労働者全員の基本時間給および賃金を増額することが出来て、「マクダーモット」「ボス・シェルフ」「サリヤンオイル」他の企業で労組設立が可能になりました。
 我々は母国で頻繁に、外国企業の経営側から労組の見解に言いがかりをつけられ、労組を設立しようとしても激しい抵抗を受けています。多くの企業では、産別労組が必死に努力しても、まだ労組を設立出来ていません。例えば、国内に50社もある石油会社のうち労組があるのは数社にすぎない状態です。

ATUCの運動

 アゼルバイジャンの1ヵ月の最低賃金は、現地通貨で60マナト、USドルですと約73ドルです。今年度の労働者の平均賃金は月に約258ドルになっています。これでは最低賃金が生活費に必要な額に満たないもので、労組連合として内閣に対して、生活の必要最低額のレベルまで引き上げるようこ、見直しを常に働きかけています。
 また毎年、国家予算が発表される時にあわせて、アゼルバイジャンATUCとして、見解をまとめて政府に主張しています。その中では社会保障費の年金とか最低賃金など、物価上昇に伴って上昇するように、見直しを要求しています。
 アゼルバイジャンの労組は今、労働安全衛生を非常に重視して、2008年の労働安全衛生分野の活動に「私の人生は私の労働であり、私の労働安全衛生である」というスローガンを掲げて、2008年一年間で60回のセミナーを開催する予定です。また労組の努力によって、2006年から2015年の期間で雇用率を引き上げるという国家プログラムが採択されたところです。われわれはこの国家プログラムの実現で、失業者数を半分にすることを目指しています。
 最後に、アゼルバイジャンATUCは、労使関係の調整についての条約を含め、ILOの主要条約を図会が批准するための作業を継続して取り組んでいきます。