1999年 アゼルバイジャンの労働事情

1999年2月10日 講演録

アギル・イサツクオグル・ダダシェフ
アゼルバイジャン労働組合連合 副委員長

 

アゼルバイジャンの国情

 アゼルバイジャン在住人口は800万人になります。というのは、アゼルバイジャン人は全世界で約4,000万人強おり、各国に住んでいるからです。なぜ、4,000万人いる中で800万人だけが自国アゼルバイジャンに住んでいるかというと、1823年に我々を分断した運命がありました。その結果、アゼルバイジャン南部の人々が、イラン、ペルシャ地方に移り、その地域に3,000万人のアアゼルバイジャン人が住んでいます。800万人が旧ソ連の中に残りました。
 1918年、初めてアゼルバイジャン人の手により、中近東で初の民主的国家をつくりました。ところが、1920年4月、ソ連軍によりアゼルバイジャンは占領され、ハンガリー、チェコスロバキア、ポーランドでおこったような悲劇が我が国にもありました。1990年1月20日、ソ連軍が首都バクー市において、200人を戦車でひき殺すという惨事です。毎年1月20日は、国民全体として喪に服す日としています。
このようなアゼルバイジャンにおける動きをロシアが見逃さないわけはなく、アルメニアとの紛争も始まりました。旧ソ連邦の領土で、初めてロシア軍を自国から追放した国がアゼルバイジャンです。アルメニアには、いまだにロシア軍の基地があります。実は、このソ連軍の攻撃により、国土面積8万8,000平方キロメートルのうち約20%の領土が占領されてしまいました。現在、我が国には100万人ぐらいの難民がいます。彼等は、占領されてしまった地域、アルメニア等から逃げてきた人達です。アリエフ大統領になって、アルメニアとの紛争も一時休止状態にはなっていますが、我が国の一部の領土は占領されたままです。
 このような状況が、私どもの経済、日々の生活にも大きく影響を及ぽしていますが、諸外国の応援をいただき、民主主義的な国家構築のために努力をしてきました。
ご存じのとおり、わが国は石油の埋蔵量も豊富で、1994年以降、世界の大きな石油関連会社との大型プロジェクトの契約が結ばれています。最近では、1998年12月に日本のジャペックス、インペックス、伊藤忠、そして帝国石油といった4つの企業との契約が結ばれています。

アゼルバイジャン労働組合連合(ATUC)の概要について

 1992年までは、旧ソ連邦の体制の労働組合がありました。古い体制に従い、アゼルバイジャンにも、労働組合中央評議会があり、各地域や産業別部門に関する活動は、すべて、労働組合中央評議会が行っていました。その体制は1992年末に崩れました。その後、1993年2月5日に、アゼルバイジャン労働組合連合を結成しました。これが、現在までの労働組合民主化への第一歩となりました。そして、指導部に入ったメンバーも、非常に若手で、委員長、副委員長、ともに当時37歳でした。設立当時、私が機関紙の編集長になったときも37歳でした。この機関紙の編集長は、きちんと労働組合連合会議において選出されています。
 現在、我々は労働組合の民主化を積極的に進めています。特に中央に権限が集中していたものを、地方や各産別組織に分散するようにしています。組合費も中央が集めていましたが、産別組織が集めるようにしました。
 第2の課題は、若手リーダーの育成です。今、労働組合の多くは23歳から40歳ぐらいの年齢層の若手になっており、そのうち33%が女性です。民主化のもう一つの手段として、彼らに門戸を開き、各国の労働組合との交流を促進することを考えています。
 ICFTUとの関係も構築をしており、協力関係を持っています。昨年、ICFTUが、バクー市で8回セミナーを実施しました。その後、会議も1回開催され、その際にはヨーロッパから労働組合のリーダーを招待しました。これらセミナー、会議では、ヨーロッパの労働組合の様子、また民主主義的な労働組合の活動について詳しく知ることができ、大変有意義でした。
 アメリカやフランスの労働組合とも交流を図っています。フランスには4つのナショナルセンターがあると思いますが、そのうち、民主主義的な労働組合とだけ交流をおこなっています。
旧ソ連邦時代は、モルドバとラトビア2つの共和国だけがICFTUとの関係を持っていたと思います。ロシアの大きな労働組合連合をも、ICFTUは加入を拒んだわけです。
 今年の2月5日、我々の委員長がブラッセルで、ICFTUの書記長と会いました。そのときにも、我が国の労働組合連合の加入に関しての話がなされました。今年中には加盟できることを期待しています。
各産別に関しましても、自由に国際交流ができるようにしており、PSIや、ヨーロッパ金属労働組合連合などのさまざまな民主主義的な組織との交流を図っています。たとえば、ヨーロッパの繊維関係の労働組合組織が、今年、バクー市で4回セミナーを開催する予定になっており、1回のセミナー期間は10日間、資金供給は12万ドルで計画されています。
 その資金は、コンピューターやそのほかの設備購入費、セミナー開催費、海外からこのセミナー等に参加する労働組合リーダーの滞在費に充てる予定です。

アゼルバイジャンの労使関係

 労働人口は約300万人です。公式的なデータでは、失業者は4万1,000人になっていますが、労働組合で調べたところ、実際の失業者数は、大体40万人~45万人でした。
平均月給は、44ドルです。最低生活費は、82.3ドルになっていますので給料が44ドルでは、生活するには足りません。
 平均年金は、月12.7ドルです。そして、失業手当は、平均月7.5ドルです。
現在、我が国の労働組合は、ILOを重視しており、ILO条約の批准数は約60です。市場経済移行期に当たり、必要な法律の整備が行われ、同時に、労働法、労使関係制度の改定がなされています。労使関係を調整するような新しい法律も採択されています。
 例えば、団体としてではなく個人が契約を結べるという個別契約法、個別労働争議解決法、それから、団体契約・協約に関する法律、団体争議解決に関する法律、また労働保護法、雇用法、休暇に関する法律、ストライキ・集会・デモ等に関する法律などがあります。
このように、新しい一連の法律が採択されて、労使関係は向上してくるはずですが、現実的にはなかなかうまくはいっていません。
 法律では消費者物価に合わせた給料の上昇ということがうたわれていますが、それも守られておらず、給料の遅配も続いています。特に企業が倒産、民営化されるようなときには、労働者の権利がなかなか保障されていないのが現実です。また、不当な大量解雇、期限つきの違法な労働契約が結ばれたり、雇用者が一方的に労働時間を延長したり、また、不当な休暇の削減をしたりといったような、さまざまな違法行為がなされています。
 つまり、たくさんの問題が残されているわけです。そういった問題の背景には、市場経済に移行して間もないため、まだまだ経営者そのものが経験を積んでいないということが言えます。その一方では、古くからの労使関係がまだ残っていると思います。また、経営者の利益を守るような国レベルの機関もありません。
 政府当局は、通常団体交渉の際にはきちんと調停を行うような、中立的立場にいなければいけないのですが、アゼルバイジャンにおいては、国の機関そのものが、一方では雇用者である場合が多くあります。その際は、調停する相手が労働者と交渉している自分自身、いわゆる当事者になってしまうということです。
 国営であれ、民間企業であれ、いわゆる経営者の考え方、また労使に対する態度、立場というものがなかなか変えられないのが現状です。
このような一連の問題はありますけれども、多少なりとも、確実に前進をしていると思います。社会・経済体制・政治体制においても改革がなされている中で、労働組合の果たす役割、果たしめる位置というものがかなり変わって、改善されてきています。
 労働組合は、労働者の利益を守り、労働者の意見を伝えるといった立場から、平等な労使関係の構築に努力をしており、社会的パートナーシップという原則にのっとっての活動を心がけることが最も有効だと考えています。そういった原則にのっとり、海外のさまざまな経験を今後学んでいきたいと考えています。
 先ほどのさまざまな新しい法律について付け加えますが、それらの法律は採択され、それにのっとり、新しい労使関係の構築が現在なされています。
 その結果、今は労働組合と政府との間において、総合協定が調印をされています。また産別賃金協定、国の産別組織と産別の経営者組織との交流、関係性が構築されています。また、団体契約・協約が企業レベルで結ぱれるようになっています。
 我々、アゼルバイジャンの労働組合としては、国家と政府との関係を構築するに当たって、国とは、ある意味では経営者であり、また、現段階の新しい労働組合の中においては調停役になるわけです。今後、国との関係性の構築という点でも努力していかなければならないし、また、それ以外の労使関係(労働組合と民間企業の経営者との関係)も新しい原則に基づいて構築をしていくことが大事だと思っています。
 現在、総合協定が調印をされ、産別・地域別契約、また団体契約というものもそれに引き続いて調印をされています。これが、政府の機関との関係を構築するための基礎になっています。これらは、三者主義をとっているものの、経営者団体がまだ全国レベルで形成されていないため、経営者が欠ける場合が多くあります。つまり、三者主義というよりは、労働組合と政府の二者間での総合協定です。
 この新しいパートナーシップにのっとった関係の構築はまだ、十分でない現状ですが、ぜひ議会を通して、労働組合また組合員の権限をきちんと法律的に確立するよう努力をしていきたいと思っています。