2010年 ジンバブエの労働事情

2010年10月8日 講演録

ジンバブウェ労働組合会議(ZCTU)
ピーター・ギフト・ムタサ(Mr. Peter Gift Mutasa)

ジンバブウェ銀行関連労働組合(ZIBAWU)委員長 

 

1.政治情勢

 ジンバブエは1980年に独立したが、その前は英国の植民地であった。1980年以来、ジンバブエはずっと一党支配下にあり、一人の大統領、ムガベ大統領に支配されてきた。1990年代の初めに、政府は国際通貨基金(IMF)の構造調整計画を採用した。この構造調整計画は、一般市民や労働者全般に非常に厳しい状況をもたらした。
 ジンバブエの労働組合運動は、政府をソーシャルダイアログ(社会的対話)に引き込んで、このような問題を解決しようと試みたが、政府は労働組合の言うことに耳を貸そうとしなかった。労働組合の全国連盟、ジンバブエ労働組合会議(ZCTU)は1999年、政党をつくることを決定し、その政党を、民主的な変革のための運動(Movement for Democratic Change:MDC)と名づけた。
 このような政党ができたことにより、ムカベ大統領率いる与党ZANU-PFはさらに弾圧的になり、政府の支配に対抗、挑戦しようとする労働組合の指導者を逮捕し始めた。国は完全な混乱状態に陥り、経済全般が急激に悪化した。物価は高騰し、インフレ率は100万%以上とも5億%以上とも言われる状況となった。
政府はこれに対応するために高額の紙幣、例えば10億ドル札、500億ドル札などを印刷したが、経済の崩壊を止めることはできなかった。
 基本的なサービスが不足し、電気もなければ食料もなく、衛生状態も悪化した。このような状況で、政府は以前にもまして、さらに圧政的になり、政府の方針に対抗する人々を続々と検挙、逮捕するようになった。
 2008年に大統領選挙が実施されたが、政府は自由な選挙を行うという約束を守らなかったため、野党側はこの選挙をボイコットした。この選挙は非常に暴力的となった。与党は様々な人権侵害を行い、人を殴打、拘留したり、村では女性がレイプされたりした。この選挙は大変な混乱の中で実施された。
 選挙後、国際的な圧力、ジンバブエの周辺諸国からの圧力により、与党と野党の連立政権である包括的な政府(インクルーシブガバメント)が2009年に成立した。
 包括的政府が樹立された結果、現在、ジンバブエでは比較的平和な政治環境が整っている。新しい経済制度も導入され、自国の通貨に代わって主要な国際的通貨である米ドルや日本円が導入された。現在、ジンバブエのお店では円を含む主要な外国通貨を使うことができる。
 大統領は、来年、大統領選挙を行うと発表したが、もう既に混乱が起き始めている。

2.労働組合が直面する課題

 ジンバブウエの労働組合は様々な問題に直面している。第1は、企業の破たん・閉鎖で多くのリストラが行われて労働組合員が大幅に減少し、そのため労働組合財政が危機に瀕していることである。法律的には例えば公共秩序治安法などにより、労働組合活動家が迫害されている。それらの法律は労働者の組織化などを制限し、労働組合が自分の力を発揮できないようにしている。制限的な内容の法律のため、ストライキも自由にできない。ストライキを行うときにはまず申請を出さなければならず、申請を出しても、すべての労働者がストに参加できるとは限らない。

3.労働組合の対応

 ジンバブエの問題は、基本的には政治的な問題である。従って労働組合は一致団結して、政治的な解決を図る努力をしている。

4.政府との関係

 ナショナルセンターと政府の間には根強い不信感、敵意が存在する。それはイデオロギー上、そして政策上の違いがあるからだ。そもそもナショナルセンターはムカベ大統領に反対する野党の結成に尽力し、与党は、ナショナルセンターが政治的な野心を抱いていると疑っている。

5.多国籍企業問題

 多国籍企業は、ジンバブエのすべての問題の原因となっています。多国籍企業はジンバブエが抱える問題を利用しようと考えており、政治家とつるみ、肩を組んでいる。多国籍企業は、経済力、資金力を行使して、労働関連法を自分たちの都合のいい内容に改正しようとしている。一番問題の多い多国籍企業は中国系の企業である。中国系の多国籍企業は労働者の組織化を徹底的に阻害している。労使紛争の主なものは、労働組合活動家の迫害、弾圧である。