2003年 ザンビアの労働事情

2003年10月1日 講演録

ザンビア労働組合会議(ZCTU)
レオナード ヒカウンバ

ザンビア労働組合会議 会長

 

国内の状況

 ザンビアの労働組合運動の観点から、政治、経済、そして社会的な分野において、最も重大な、あるいは関心がある問題についてお話をさせていただきたいと思います。私どもがどのような政治的な状況の中で、労働組合運動を展開しているのかということについてお話をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、与党と野党の間はもちろん、与党と市民社会組織、主として非政府組織との間に緊張があるということです。ザンビアの政治状況の中で、緊張が生まれている2つの要因があります。1つは現在も係争中ですが、2001年の選挙をめぐっての緊張です。選挙で敗れた候補者たちが、この選挙は自由な形で、公正な形で行われなかった、不正行為があったという感情を持っている、あるいはそう信じているということです。現在、最高裁判所に、大統領選に当選をしなかった候補者から訴訟が行われています。
 もう一つの緊張は憲法の見直し過程に関しての緊張であります。その理由ですけれども、憲法の調査が行われた時に、司法の専門的な見地から、憲法の中に不明な条項が含まれていることが発覚しまして、新しい憲法を制定する必要があると言われたためであります。この憲法を見直し過程を、どのように行うのかという方法論に関して、意見の不一致が一部にあります。
 次に、我が国の経済状況についてですが、我が国の経済実績は、依然として低迷、貧しい状況にあります。今回、生産性本部を訪問して話を伺った時に大変関心を持ったことがあります。生産性本部で伺った政策の一部を、我が国で採用できれば、私どもの経済を向上・改善させることができるのではないかと思いました。現在、ザンビアの国の財政状況は歳出が歳入を上回る状況で、米ドルで1億ドル以上の財政赤字になっています。
 ザンビアでは2000年末までに国営企業の95%が民営化されました。しかし、民営化の影響は、悪い方向に出てしまいました。民営化された一部の企業が閉鎖に追い込まれ、また多くの労働者が職を失ってしまいました。民営化された企業がどのように活用されるべきか、明確な方向性が見出せないことが原因であります。この民営化は、IMFと世銀の要請によって行われたのですが、IMF、世銀は現在でもさらに民営化を進めるように圧力をかけています。現在、民営化の対象となっている業種は、国営の銀行、電力、テレコミュニケーションなどの分野です。民営化プロセスの進行とともに経済の自由化が進行しています。経済の自由化の進行によって、南アフリカの企業がどっと我が国に進出をしてきています。
 こうした経済状況の中で、小規模企業が厳しい状況に置かれることになりました。南アフリカから進出してきた企業との競争にさらされて、多くの小規模企業が閉鎖に追い込まれています。そして、ザンビアの輸入の半分は南アフリカからの輸入で、南アフリカにとってザンビアは大きな市場になっているわけです。外国系の企業の我が国への進出で私どもが一番懸念していることは、外資の企業が得た収益のほとんどが、その企業の出身国へ還元されてしまって、ほとんど我が国に再投資されないことであります。2日前ですけれども、ザンビアの大統領が日本の首相と会談を持ちまして、ザンビアに進出している日本の企業が収益の一部をザンビアに再投資するという部分的な合意に達したという話を聞きました。こうして外資系の企業が、我が国に再投資することが、私どもに最大の恩恵をもたらしてくれる一つの方法であると期待しているわけです。
 社会状況につきましては、先ず貧困のレベルが極めて高い状況を申し上げなければなりません。国民の8割以上が極めて貧しい生活を余儀なくされています。こうした人々の1日当たりの生活費はわずか1ドルです。
 もう一つの大きな問題は、HIV・エイズ感染の問題です。推計によると、我が国の国民のおよそ2割がこのHIV・エイズに感染していると言われています。貧困が厳しい状況にあることを考えますと、HIV・エイズの感染率が、今後、さらに高まっていくのではないかと懸念しています。
 貧困が極めて深刻であり、そして失業率も極めて高い水準にあるため、犯罪のレベルも極めて重大な要素となっています。犯罪の深刻さは依然として重要な問題ではありますが、徐々に抑制されてきています。
 学校を途中で止める子供の数が増えている問題もあります。その要因は、我が国の経済がうまく機能していない、あるいは経済実績がよくないためであります。また経済的な理由で十分な数の学校を創立できない問題もあります。また、深刻な貧困により、親が高い授業料を払えないため、子供に継続して教育を与えることができていません。

ZCTUの活動方針

 ZCTUの行動方針について申し上げます。今まで申し上げてきました状況を踏まえて、私どもは多大な任務をこれから果たしていかなければならないことを十分に承知しています。この状況を打開するために、何をしなければならないか。それは労働改革という意味で行っている運動、すなわち労働者に法的に十分な保護を与える運動を行っていくことです。
 私どもが大きな関心を持っている分野の一つは、憲法改正の問題です。国を経済的にも社会的にも繁栄させていくためには、すぐれた統治が必要であると思っています。そしてそのすぐれた統治の基盤になるのが国を治める憲法です。したがいまして、私どもはこうした国の基盤となるすぐれた憲法をしっかりと定めるということに大きな関心を抱いています。
 もう一つ私どもが大きな関心を抱いている分野は、HIV・エイズ撲滅のための闘いです。多くの努力と時間をこのHIV・エイズ撲滅に向けていかなければならないと考えています。この問題に今取組まなければ、国にとっても、そして1人1人の個人にとっても、さらに大きな経済的な負担を伴う問題になっていくのではないかと懸念しています。
 次は、こうした行動方針から、どのような成果を上げようと考えているのかについて申し上げます。労働法の改正、改革では、私どもは議員への要請に期待をしています。そして、三者委員会からの勧告が議会を通過する、あるいは承認されることを期待しています。この勧告の承認なくしては、私どもが期待するような法律、あるいは労働法の改正が行われないと思っています。
 憲法改正のプロセスに関して私どもがとっている行動方針は、憲法の見直しについての提案を最高委員会に送るということです。私どもの意見、あるいは立場が憲法に反映されるように期待しています。そして今後、更にこの憲法の改正プロセスが関係者より受け入れられ、承認されるような形で展開されることを期待しています。そして、すべてのステークホルダー(利害関係者)が協力して、様々な誤解がある中で、それを乗り越えて、憲法改正のプロセスを進行させてほしいと願っています。
 最後に、HIV・エイズ撲滅のために私どもが計画していることは、HIV・エイズに対する意識を高めるためのセミナーを開催することと、これによりHIV撲滅のための提言を前進させるということです。さらに私どもは職場でHIV・エイズ撲滅に対する政策、あるいは方針のアドボカシー運動を行っていきたいと思っています。また、HIV・エイズに関する法の策定にも参加していきたいと考えています。