2013年 南アフリカの労働事情

2013年12月13日 講演録

南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU)
ナリユス・モロト(Mr. Narius Moloto)

事務局長

 

南アフリカ組合連盟(FEDUSA)
ドロシー・ノクゾラ・ロヴ(Ms. Dorothy Nokuzola Ndhlovu)

中央執行委員

 

1.南アフリカの労働情勢(全般)

 南アフリカ全国労働組合協議会(NACTU)と南アフリカ組合連盟(FEDUSA)は、南アフリカ労働組合総連盟(SACOTU)を結成し、密接に活動している。 
 南アフリカは、1994年にようやく民主化が達成された。しかし経済は、現在も植民地時代のままで、全土の87%が今なお白人によって所有されている。
 主たる産業は金融業である。鉱業は南アフリカ経済の土台であり、産業と強く結びついており、法人税および輸出収入に多大な貢献をしているほか、直接・間接を問わず経済活動と雇用の源泉となっている。これらの産業は輸出志向型の産業で、少数のエリートが支配している。その他の部門には公務部門、運輸、建築、農業、製造業(石油化学、金属製品、木製品、製紙、電気機械類、食品・飲料、観光・宿泊業)などがある。
 南アフリカはかなり長い間、国内総生産(GDP)3.4%の年間経済成長率を維持していたが、近年経済成長は下降傾向にあり、2012年には2.5%、2013年には2.1%に落ち込んでいる。
 南アフリカ経済は、多数の失業者のための雇用創出に常に苦労してきた。2003年から2007年にかけてGDP成長率が最高を記録した期間でさえ、経済の労働吸収率は低かった。この期間の特徴は、生産的経済とサービス部門との成長率の不均衡だった。経済の構造自体に問題があって,失業者が多く出ている。失業率は非常に高く、定義にもよるが、25~26%に達しており、就労意欲を失った労働者を含めた場合には失業率は40%にものぼる。政府統計によれば、南アフリカには450万人の失業者がおり、さらに230万人が「就労意欲を失った」労働者と分類されている。このグループには、高学歴と低学歴の両方の若者が含まれている。この高い失業率にはいくつかの要因があるが、中でも、不十分な教育制度、若者の比率の大きさ、技能や専門的訓練の不足に起因する労働力需給の不均衡などがあげられる。
 経済構造の転換に関しては、政労使による三者構成委員会が設置され、若年者の雇用創出、女性に対する教育提供などを論議する場ができた。法制上では、雇用均等法ができ、女性の採用比率、人種別の比率、管理職の女性比率などを規定している。
 賃金については、労働市場においてきわめて議論の分かれる領域である。南アフリカは世界で唯一ストライキ・シーズン(注)を有する国である。労働者の所得は依然として、資本が国内で生み出す収益に比べてはるかに少ない。賃金への分配は1994年以来減少しているのに比べ、利益分配は現在55%で安定している。
 南アフリカの北西部に位置するマリカナのプラチナ鉱山では、搾取的賃金に抗議する平和的ストライキに参加していた34人の労働者が、射殺された。この事件のあった2012年8月11日は、南アフリカにとって陰鬱な日となった。しかし、これらの労働者の死を無駄にするわけにはいかない。彼らを忘れず敬意を表し、生活賃金のために闘う必要がある。南アフリカの労働者階級の3分の2が平均所得月額2750ランド(約255ドル)を下回る所得しか得ていない。この事実は、国内の不平等の大きな原因となってきた。南アフリカは、世界で最も不平等な社会の一つであり、こうした不平等は、性別、人種、技能に基づき異なる。
 南アフリカの女性のほとんどは自営であり、インフォーマル部門に仕事を見つけている。こうした女性はさまざまな小規模ビジネス、経済的ベンチャー、南部アフリカ開発共同体(SADC)域内での商業に従事している。インフォーマル部門には、男性や若者も少数ながら従事している。また、かなりの数の女性が裕福な家庭の家事労働者として雇われており、専門組合が組織されている。
 労働市場は、官民両部門を含めて男性労働者に支配されている。数字上、女性は男性よりも少なく、その原因は敵対姿勢、伝統的価値観、女性に不利な労働環境、違法行為、教育レベルの低さにある。
 南アフリカは『雇用基本条件法』において労働時間を法制化し、労働時間を規制している。労働者の最大労働時間として週5日勤務の場合45時間、週6日勤務の場合は48時間を義務づけている。残業と休日出勤も規制されている。ただし、雇用者の法令遵守については課題がある。

(注)ストライキシーズン:南アフリカでは、冬場(6~9月)に恒例的にストライキが頻発する。

2.労働組合が直面する課題

 アパルトヘイト(人種隔離政策)の時代を過ぎて、ようやく南アフリカの労働組合は労働者への正当な処遇を確保するための正式な権限を与えられた。労働組合は、大企業の利益に相対する労働者の権利の保護を目的として設立された組織である。つまり、加盟労働組合のメンバーは、自身の直面するあらゆる不当な労働慣行について苦情を申し立て、労働組合の支援を受けることができる。 労働組合介入によって報酬の増加や労働条件の改善等がもたらされる可能性がある。
 非正規雇用の出現が、南アフリカの労働市場を不安定にしてきた。労働のあっせん、アウトソーシング、第二次アウトソーシングを通じた労働の柔軟化は、労働組合員の核である正社員数に悪影響を与えている。国内の組合組織率は、全労働者数の30%を占めるにすぎない。
 非正規雇用は、労働組合にとって『労働法』の施行における新たな課題をもたらした。これをきっかけとして、労働組合は労働斡旋業者の禁止を要求するに到っている。南アフリカの労働組合は、臨時雇用を6ヵ月に限定し、その期間を超えれば常用雇用とみなすように一致団結している。
 南アフリカは青年労働組合代表を奨励し、各種機関を通じて訓練を提供している。しかしながら、現実には、青年労働者の労働組合主義へのより積極的な関与が求められる。青年労働者の雇用の伸びは、労働組合の組織に新たな課題をもたらしている。労働運動は若者の要求に応える関連プログラム、キャンペーン、サービスを策定・展開しなければならない。このことは、ソーシャルメディアが労働運動を一変させたテクノロジーの時代に合わせて考えるべきことである。コミュニケーションは継ぎ目がなくなり、労働組合は組合員数を増やして適切にサービスを提供するために時流に乗らざるを得なくなっている。
 南アフリカの女性労働者については、ある種の企業文化や事業形態がパートタイム労働やフレックスタイム労働、ジョブシェアリングに関する時代遅れの政策という形で女性の昇進を妨げている状況を今なお目にする。出産育児に携わる女性の場合、個人生活や家族生活が職務遂行能力に影響を及ぼしがちであるとの考え方が今も一般的である。逆も真なりで、仕事上の要求が女性の家族生活に影響を及ぼすであろうことも理解できる。一方、本人のスキルや才能に関わらず、女性労働者の多くは同じ地位の男性労働者に比べ賃金が低いという現実もある。

3.課題解決に向けた取り組み

 失業問題には根本的原因がいくつもあり、一つのアプローチで解決することはできない。国内では若年雇用補助金、求職者助成金、雇用税の優遇措置をはじめ、積極的な労働市場プログラムがいくつか開始されている。これらは労働力供給サイドのインセンティブであり、産業政策行動計画(IPAP)2に採り入れられている産業化プログラムのような需要サイドのインセンティブと組み合わされている。労働組合は全国最低賃金を要求している。NACTUはこの要求を支持し、不平等の隔たりを埋め、賃金条件を改善する必要があると考える。さらに、ディーセントワークを検討議題として採用すると共に、団体交渉を通じて労働者の生活水準の向上にかなり貢献している。私たちは生活賃金のために闘っており、今後もこれが私たちのビジョンとなる。
 主な3つの労働連盟、南アフリカ労働組合会議 (COSATU)、南アフリカ労働組合連盟 (FEDUSA)、全国労働組合評議会 (NACTU) によるLabour Job Creation Trust社の設立は、失業や不正な労働慣行の問題への対応を目的としている。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 職場にはさまざまな形態の労働組合イデオロギーが存在する。しかし、南アフリカの場合には、基本的に2種類の労働組合が存在する。すなわち、COSATUのように同盟の集まりである連合を通じて特定の政党と提携した労働組合、FEDUSA のようにいかなる政党とも関係を持たない、いわゆる非政治的同盟連合である。このため、特に政府や名だたる経営者の決定に対して異議が申し立てられている場合、FEDUSAがメンバーを代表するさまざまな組織での決断にあたってはいくらかの困難が生じる。政治的関係というものは、労働者に関係する問題や団体交渉の問題に間違いなく影響を及ぼすためである。