2008年 南アフリカの労働事情

2008年7月9日 講演録

南アフリカ労働組合会議(COSATU)
ンポ・エドウイン・パケディ

全国鉱山労組教育担当次長

 

 最も大きな問題は高い失業率である。失業は特に女性と青年を直撃し、失業者の3分の2は35歳以下の青年であり、またその50%はかって一度も働いたことがない労働者である。女性の失業率は30%である。
 1980年代から90年代を通じて、特に鉱業や農業における未熟練労働力への需要が大幅に減退し、代わって熟練度の高い工業技術者への需要が高まっている。その意味で日本との間で熟練技術者に関して交流が深まることが望まれる。
 労働組合が直面する大きな課題は非正規パートタイム労働者の増加と外注化・アウトソーシングの増加の問題である。このことは雇用の安定と適正な賃金を含めて完全な権利と保護を享受していない大量の労働者が生み出されていることを意味する。特に民間部門では高賃金労働者と低賃金労働者の賃金格差が劇的に拡大している。
 必要なマクロ経済環境を創り出すことによって雇用を創出するには政府の役割が大きい。政権党であるアフリカ民族会議(ANC)はこの立場を承認しているので、近い将来政府は積極的な役割を果たすであろう。労働組合としては、その間、継続的に民間企業および政府に対して働きかけを行い、また不当な解雇や雇用の削減にたいしては抗議行動やストライキで対抗する。
 COSATUと政府との関係は、ある特定ポイントにおける労使の力関係によることもあり、両者の関係は流動的ではあるが、総体的にポジティブな関係にあると言える。特に両者の関係は全国経済開発労働協議会(NEDLAC)を通じ、雇用戦略を推進する上で協力・協働関係にある。
 南アフリカに進出している多国籍企業は、極めて強力な労働組合運動が存在するために、企業にとり意に沿わない環境で活動している。多国籍企業の典型的な苦情は、南アフリカの労働組合はあまりにも強力過ぎ、直接外国投資には向かないという苦情である。労働市場があまりにも硬直し柔軟性に欠け、労働者を保護し過ぎていると主張している。多国籍企業は「二重の」労働市場制度の導入を求めてキャンペーンを行っている。多国籍企業の言い分では、ある一定の年齢までの労働者は、特に新規参入の労働者は労働法で保障されているすべての権利を享受する必要はなく、長い労働生活の中でいずれは正規の雇用を得る機会があるので最初はパートタイム労働など非正規労働として扱われる制度を導入すべきであるというものである。解雇し易い状況を作り出すのが目的である。このシステムは政府も提案したが、労働組合側の反対に会い、協議を経て昨年12月に政府は撤回した。
 しかし多国籍企業は依然として下請け契約やパートタイム労働などの法的に許される受け穴を活用しようとしている。この種の不安定な労働力は大部分が周辺地域からの不法移民・難民労働者で構成されている。
 現在労働組合として大きく展開しているプログラムが2つある。1つは鉱山業、建設業や農業における労働安全衛生問題への取り組みである。2つ目は全国的に高騰する物価値上げ反対の行動である。食料品をはじめとする諸物価の値上げは特に貧困層を直撃している。
 グローバル化に対してはCOSATUは、南アフリカ政府があまりにもグローバル化を称賛し過ぎている傾向があるので、貧困層に目を向けるよう働きかけている。

南アフリカ労働組合会議(NACTU)
ノムザモ・アリス・キリマニ

HOTELICCA(ホテル・ケータリング・酒類)労働組合副委員長

 

 労働情勢は安定せず、容易に解雇が行われている。紛争処理に関する法廷案件も未審議件数が増えている。労働市場における競争が激化している。
 大きな問題は非正規労働への切り替えが増加していることである。労働者が人間として扱われず軽視されている。労働仲介斡旋業者による搾取が拡大している。
 住宅問題が深刻化している。健康医療問題で都市部と農村部の格差が拡大している。教育についても格差が拡大している。
 これらの問題解決のために経営側、NGO、NACTUを含めて労働組合も参加する全国経済開発労働協議会(NEDLAC)で対策が協議されている。
 南アフリカには基本的には3つの労働団体が存在するが、それらが1つの連合体として統一すれば労働者・労働組合の影響力が強まり、直面する諸問題について解決への大きなステップになることは間違いない。NACTUと南アフリカ労働連盟(FEDUSA)は協議を重ね、既に南アフリカ労働組合総連合(SACOTU)を結成した。将来COSATUも話し合いに加わることが望まれる。
 NACTUは政党との関係では中立を保っている。
 現在の食料品や石油価格の高騰は、今のまま推移すれば致命的な影響を与えかねない。現在の状況を打破するためにNACTUとしてはストライキをも視野に入れながら活動している。