2011年 ナミビアの労働事情

2011年10月21日 講演録

ナミビア労働組合全国組合(NUNW)
Mr. エリア・ムアトンブランゲ・マンガ

 

1.労働情勢(全般)

 1990年3月21日に独立に至ったナミビア政府は、この国の歴史上初めて労働組合と使用者団体の権利と責任を十分に認める新たな労働法制を公布した。この法制で特に重要なのは、労働関係諸制度を規定し、労働情勢を扱う全国政労使三者構成の審議会を設立するということが明記された点である。 1992年の法律改正では、労使紛争の解決、あるいは予防方法なども規定されるようになった。当初、労働法は労働者を「報酬を受ける仕事に週2日を超えて従事している人」と定義していた。この定義では臨時労働者が法律の対象にならないが、改正により労働者の定義も「労働時間の長短にかかわらず報酬を得て仕事をする人はすべて労働者である」と変わった。 労働組合については、現在の約30の労働組合組織があり、2つのナショナルセンターの傘下に入っている。最大の組織がナミビア労働者全国組合で、加盟組合員数は8~9万人である。

2.労働組合が現在直面している課題

 ナミビアの特徴は収入あるいは経済的格差が非常に大きい点および高い失業率である。特に女性、若者の失業率が高い。
 失業と貧困、さらに格差が拡大している。労働組合組織として歴史的な任務を認識しながらも、組織力、人材能力が十分に開発できていない。
 HIV/AIDS感染者・患者に対する差別もある。 フォーマル経済の縮小、都市と農村間の人の移動、多数の中等学校中退者の労働市場への参入の結果、インフォーマル経済が急速に拡大している。

3.労働組合の取り組み

 NUNWの第5回通常大会において、貧困と格差の問題を取り上げ、基礎所得連合に参加する決議を採択した。これは所得再配分や貧困緩和を促進し,社会にある程度の平等を回復することをめざしたものである。現行経済モデル・構造が全体的な成長を妨げているとの見解に基づき、政府との対話を進める決議も採択した。労働組合は、輸出代替を通じて貧困と失業を引き下げる効果を上げられると考える。
 また、ドイツ政府の支援を受け、HIV/AIDS感染者・患者向けのヘルプデスクを開設した。開設から5年が経過し、このデスクを通じて産別に対し、労働協約にHIV/AIDS条項を含める交渉を行うよう促している。
 インフォーマル経済に関しては、インフォーマル部門労働者の権利・利益を代弁する組織との連携を進めている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 ナミビア労働者全国組合(NUNW)は独立運動に際し重要な役割を果たしてきたので、現在も与党と連携をしている。
 「すべての労使関係制度には、その個々の発祥たる歴史、政治、法、経済、観念、社会、文化の名残が刻まれている」と言われるように、独立前からの政府との親密な関係があり、政府とNUNWの関係は安定し、調和がとれている。
 NUNWは与党アフリカ人民機構(SWAPO)党に加入している。この関係は独立以前からのものであり、独立後も続いている。

5.多国籍企業の状況

 ナミビアは特殊な植民地としての歴史があり、結果的に旧宗主国である隣国の南アフリカと特別な貿易・商業関係にある。こうした歴史的な事情から、ナミビアで活動している多国籍企業の8割は南アフリカの企業である。ほとんどのナミビアの多国籍企業は、いわゆる輸出加工区(EPZ)の地位を獲得し、免税だけでなく、制限なく利益を本国に送金する便宜を享受している。
 労働関係に関しては、時折、労働争議が起きている。これは現在の給与・賞与の支払いに構造的な不平等が存在することが原因となっている。労働争議は確立された紛争解決機関に持ち込まれ、何とか妥協点を見つけて解決されている。