2000年 ボツワナの労働事情

2000年9月27日 講演録

ケセンツェング・マシュンバ
ボツワナ開発銀行従業員組合執行委員

 

ボツワナにおけるHIV 問題

 まず、HIV感染、AIDSの問題ですが、これは現在、ボツワナにおいて本当に深刻な脅威となっています。ご存知のようにこのHIV-AIDSは、世界的に見てもやはり政治的、社会的、経済的な大きな問題になっています。まず職場において働いている人たちの多くが、このHIV-AIDSに感染しています。現在、ある1つの職場を例として挙げますと、雇用者の半分、50%は次の5 年間以内にAIDSを発病して亡くなるだろうと言われております。また、発病してから数ヵ月間は仕事を離れなければいけないという状態が、会社や雇用主が直面している問題です。統計によりますと、ボツワナにおいて、15歳から29歳までの年齢層の20%が、HIV-AIDSにかかっているということです。HIV-AIDSに感染しているということは、若い人たちの可能性やエネルギーを取り去ってしまうことになりますし、また、経済からの恩恵を受ける人たちが、AIDSによって失われていくという状況をもたらしています。その中で、今度は雇用する側、経営者にとっても、新しく人を雇わなければいけない、そのたびにまた再教育、研修を行わなければいけないという問題が出てきています。ともかく、このHIV-AIDSは、労働者のみならず、国全体にとっても本当に深刻な脅威となっています。

ナショナルセンターのHIV対策

 ナショナルセンターは、HIV-AIDSについてもっと知ってもらうために、教育活動を行っています。9月27日から29日まで、ボツワナにおいて、HIV-AIDSに関しての会議が開かれることになっています。この会議はナショナルセンターが開催するもので、ICFTU-AFROからもサポートいただいています。簡単に言いますと、今、私どもがしていることは、この教育活動のみです。ともかく、働く人たちにとって、どれだけこのHIV-AIDSの問題が広がっているのか、そしてどれだけ脅威であるのか、実際に可能性を秘めている若い人たちがこの病気によって殺されている、可能性を妨げられているということを示し、教えるということが、私どものしていることです。特に、強調しておきたいのは、このHIV-AIDSの問題というのはアフリカ全体にとっても本当に深刻な問題だということです。

失業率について

 次に一つポイントとして挙げたいのが、高い失業率であります。ボツワナにおいても、失業率が高いという状態があります。学校を卒業した人たちでさえもが職が見つからない状況ですので、失業率が高いのは明らかだと思います。また、企業、会社が倒産をしたり閉鎖したりしているので、そのせいで失業率が高くなるという状況もあります。残念ながら詳しい数字は持ってきていません。

組織統合について

 現在、ボツワナでは国家公務員の再評価、再編成が行なわれています。その他に労働運動を強化していかなければいけないというのが、ボツワナにおいての一つの課題です。実際に、ナショナルセンターであるBFTUに加盟している組織は、16組合です。数自体は少ないのですが、ご存知のようにボツワナという国は小さい国です。例えば、銀行に焦点を絞りますと、各銀行に組合が存在します。ですから、銀行業をまとめて1つの組合が存在するということではないので、どうしても各組合の力が弱くなってしまいます。最近の議論で話に上がっているのが、こういったばらばらになっている組合を統合させようということです。1つの産業に1つの組合を目標にしています。やはり、こうして組合が同じ産業の中で分裂しているということは、それだけ組合の力が弱い。したがって、労働問題に関して改善を促したいとしても、政府に与える影響力がどうしても小さくなってしまいます。今までも、銀行の組合が集まって、統合を進める議論をしてまいりました。一応、その方向で、今話し合いが進んでいて、最終の話し合いが、10月7日から8日まで持たれることになっています。

賃金格差問題

 ボツワナにおける賃金の格差も深刻な問題の一つです。残念ながら統計を持っていないので、具体的な数字は挙げられませんが、賃金の格差は深刻な問題になっています。例えば最低水準の賃金は、1ヵ月600 プラ(1ドル=4.5 プラ)になります。ただ、この最低賃金の約600プラでは生計費が高くて、どこかに家を借りたり、食べ物を買ったりということが難しいのが現状です。今組合としては、賃金の格差の是正するよう政府に働きかけています。

民営化に対するBFTUの立場

 もう一つの問題が民営化です。ボツワナの労働者が直面している深刻な問題は、政府が押し進めている民営化の動きを受け入れるかどうかということです。この動きは、確かに問題によっては解決法の1つになるかもしれません。政府は、サービスの効率性を上げるために、民営化が必要だと言っています。また、民営化を進めることで国が進歩し、成長していくことにより、力がつき、海外からの投資も多くなり、また技術移転も盛んになるだろうというのが政府の見方です。民間のセクターにおいて、より開発、進歩が促され、チャンスが増えていくだろうと政府は考えています。実際の労働者たちは、民営化の是非の論争の真ん中にいます。ただ、十分な知識がないために、どういった立場を自分たちがとっていいのかわからない状況にあります。労組としては、民営化を進めることにより、さらに多くの職が失われ、失業率が上がるだろうという懸念に基づいて、民営化の動きに激しく反対をしています。しかし、政府はやはり民営化を進めたいために、既存の法律、ルールは過去のもので、それらに縛られるのはおかしい、改革を進めるためにはよくないのではないか、と主張しています。そのような人選は変えるべきだと言っています。いわゆる行政とは独立した形での三者構成委員会をつくるべきだというのが、私どもの主張です。
 もう一つ、運動において重要な点は、私どもが組合として、労働団体としての力を強化していくということです。労働組合の指導者たちが総選挙に参加をして、選出された人たちが議会の議員になってしまうと、どうしても労働運動の中に穴が開いてしまう、空白が生じてしまうので、組合と、組合員の力をつけていくということが課題になっています。