2013年 チュニジアの労働事情

2013年10月4日 講演録
チュニジア労働総同盟(UGTT)
ラウダ ベン エファ(Ms. Raoudha Ben Aifa)

中高等学校教員組合 執行委員
 

1.チュニジア労働総同盟(UGTT)について

 チュニジア労働総同盟(UGTT)は、1946年に設立された。1948年のパレスチナ戦争では、UGTTの中から義勇兵として参加した者もいた。設立以来、UGTTは国家の開発、経済・社会関連の各プログラムの実現に貢献してきた。1978年と1985年には、組合活動の独立性を守るため、政府側と対立して大ストライキを敢行した。現在、加盟人員数は65万人で、チュニジア最大のナショナルセンターである。近年になり、UGTT以外のナショナルセンターが設立されるようになった。例えば、規模は小さいが、現在の与党であるムスリム同胞団系の新たな連合組織が設立された。UGTT は、1990年代から団体交渉を3年ごとに行なっている。昨今の「アラブの春」と言われる革命において、UGTTはその揺りかごとなった。革命時には警察との衝突もあったが、人々の命を守ったのはUGTTであった。

2.チュニジアの労働情勢全般

 チュニジアは今、革命後の移行期にあって、困難な政治・経済・社会危機の最中にあり、それが労働全般の状況に影響を及ぼしている。失業者の数は増えており、革命後、特に高学歴者の失業が増え、2012年の約30万人、2013年には約80万人に増加し、失業率は20%を上回っている。
 労働時間は、法律上は8時間と定められているが、派遣会社を通じた派遣労働者は、さまざまな問題を抱えている。不定期、短期間、低賃金などの雇用形態を強いられ、こうした不安定雇用の比率がますます増加している。
 最低賃金は法律によって定められることになっており、政労使間での交渉の対象となっているが、物価の上昇が深刻化している中で、その基準の見直しが必要となってきている。労働者が尊厳ある生活を送るためには、現在の賃金では不十分である。

3.チュニジア労働総同盟(UGTT)が直面する課題

 UGTTが直面している課題のうち重要なものは以下のとおりである。
 (1)ディーセントワークの実現と人間の尊厳にふさわしい職場環作り
 (2)農業やサービス部門などで不安定な雇用に苦しむ女性労働者の問題
 (3)労働組合の権利を新憲法に取り入れる問題(最近の課題)
 (4)政労使の対話の進展
 UGTTは、社会的権利や労働組合の権利を憲法に盛り込むために取り組んでおり、制憲議会にUGTTと労働者のビジョンを重視する憲法草案を提示している。また憲法に、社会的権利や自由などを取り入れるよう働きかけを行なっている。
 UGTTは政労使の対話を、賃金の設定を目的とするだけではなく、各産業分野においても、こうした対話を通じて、種々の協定を政労使間で締結するための取り組みとして進めている。また労働法制についても、この枠組みでの対話を重視している。UGTTは、労働政策のすべてにおいて、その枠組みの中でUGTTがその調整役を果たすための働きかけを行なっている。
 そのためにUGTTでは、デモや集会、産業分野別のストライキやゼネストを通じて、国家に要求するための平和的な活動を行なっている。その結果、公共部門において労働者2万人を正規の雇用形態に移行させる成果を勝ち取ることができた。また今年、2人の野党指導者が暗殺される事件が起った際には、抗議のゼネラルストライキを敢行した。現在、UGTTの指導部は、殺害の脅迫を受けており、危険な状況にあり、厳重な警備の中で活動を続けている。

4.チュニジア労働総同盟(UGTT)について

 UGTTは1946年に結成された。結成当初は、植民地支配から国を解放するための戦いに参加した。独立以降、国の開発にも関わってきたとおり、UGTTは、労働者や労働組合の問題だけではなく、政治、経済、社会の全般的な問題についても取り組んでいる。UGTTは 、経営者団体、弁護士組合、チュニジアの人権団体などと共同で、現在の危機を脱却するための工程表を提示した。それによって、革命後の移行期に当たる今この時を直ちに終了させ、憲法制定を可及的速やかに実現させ、安全な状況の中で次期選挙が実施できる状況を作るための取り組みを行なっている。この工程表には、まず現政府が辞任して、辞任後4週間のうちに新憲法を制定することという内容が含まれている。辞任後に組織される政府は実務者による政府であって、独立が確保され、選挙を行なうための中立的な立場にある政府でなければならない。現在のムスリム同胞団内閣は非中立的で、テロリストを煽り立てており、実際にテロ活動がチュニジアで始まっている。UGTTは、現在の政府あるいは与党が譲歩するように、集会やデモなどの平和的な運動を進めている。今、チュニジアは非常に大きなうねりの中にある。