2009年 チュニジアの労働事情

2009年12月11日 講演録

1.労働事情(全般)

人  口 10,272,000人(2008年)
労働組合 チュニジア労働総同盟(UGTT)
加盟40組織 24地方組織  組合員数350,000人(2008年)

 世界各国の労働組合運動と同様にグローバリズムや1995年以降進んだ経済の構造調整、資本主義の新たな進展によって、労働組合運動は今日、新たな現象に直面している。国は医療や教育の分野を中心とする改革を放棄し、多くの機関を民営部門の利益に資するために手放した。経済の新たな動向として、税制面での優遇措置の期限が切れた後、外国との競争に耐えられず多数の企業が閉鎖されることとなった。
 このため、労働者の置かれた状況は悪化し、民営化による解雇は青年層や高学歴層を中心とする失業者を増加させた。派遣労働や契約労働など新しい形態の不安定労働や不適正労働が広がった。賃金や社会福祉、医療や衛生・安全面でディーセント・ワークの条件を満たさない不安定な労働が広がりつつあるといった多くの問題を生じさせている。
これらは企業内における労働組合の代表力にも悪影響を及ぼし、賃金の低下や社会保障サービスの後退、職場の衛生と安全の条件が軽視されるなどの問題につながっている。

2.労働組合が現在直面している課題

 2008年夏以降の世界的な経済危機の下で、チュニジアの抱える失業や解雇、社会福祉といった問題はますます深刻化している。
 それはチュニジアが対外貿易に依存(80%)しているからであり、なかでもEUとの貿易依存度が高く、ヨーロッパにおける経済危機の深刻さが影響を及ぼした。また世界経済への開放度も非常に高くなり(110%)、2008年に5%であった経済成長率は2009年には3%に低下した。
 国は経済危機によって損害を蒙った外国企業を支援するため、職場の維持や企業が他国からの誘いかけに抵抗し得るよう支援すること等を謳った法律第79号を制定した。しかし一部企業による同法の悪用(法律第79号に謳われた特権適用の条件を確保するための国家審議委員会にUGTTが参加できないこと)に加えて、国家機関とくに社会保障基金に多大の負担が生じている。
 これは企業2,953社中284社(労働者290,000人中76,795人すなわち25.44%を雇用)に影響を及ぼし、契約労働者を中心とする4,000人が解雇された。

3.その問題解決に向け、どのように取り組もうとしているか

 UGTTは、労働者の置かれた状況や要求を把握し、労働者の経済的・社会的状況を改善するための計画策定に向けた理論的活動および現場での活動が根本的に重要と位置づけている。
 UGTTは労働者の利益や、物質的・精神的に獲得してきた成果を擁護するため、交渉という方策を重視する。また、社会的対話を拡大するとともに、交渉のシステムについては中央集権的なあり方に歯止めをかけ、引き続き確実に発展させるよう努めている。
 そのため、以下のような目標に向けて闘争を展開している。

  1. 公正な税制の実現に向け国家が調整者としての役割を確実に果たすようにすること。
  2. 利益の公正な再分配。拙速な利潤追求傾向や情実主義への抵抗。投資と雇用が各方面で均衡よく行われるよう調整を促進すること。
  3. 失業保険のための国家基金を再生させ、解雇された労働者を保護すること。
  4. 疾病保険制度を確立するため、公的な保健部門を育成すること。
  5. 社会基金と年金制度の将来に関する交渉の開始。国家的な主要課題、とくに雇用問題をめぐる協議の成果をフォローアップすること。
  6. 社会的および個人的自由と人権の理念を確立し、閉鎖性や過激主義に走らず民主的に対話を行う文化を根づかせるすべての市民団体や国民勢力との協力を強化すること。
  7. 国外の労働組合運動との協力を拡大し、外国の経験から学び役立てること。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 UGTTは国民独立運動と近代的国家建設に中心的な役割を果たし、様々な社会改革に寄与し、設立当初から人民の自由と社会の公正のための闘いに参加してきた(独立の原則)。UGTTは国家の開発と未来の創造における主要なパートナーである。
国家の介入のあり方はグローバリズムの影響の下で変質し、国家機関の現代化と再構築(1995年の構造改革)にとりかかって以降、構造改革の動きに偏った姿勢を示すようになった。それまでは、困難な時代をともにした味方であった労働組合運動に対して、国家から攻撃が行われることはなかった。

5.多国籍企業の進出状況

 チュニジアは労働力が豊富であり、ヨーロッパと比べて賃金が安く、また近隣諸国と比べても労働者が技術的な要求に適応しやすいため、多数の多国籍企業が入ってきている(母体企業142社、傘下企業2,895社)。
 世界各国が直面する金融危機の影響の下で、これらの多国籍企業は労働法や労働組合の権利を尊重しているにも拘わらず、労働者は劣悪な状況に置かれ権利を侵害されている。またこれらの企業は移り変わりが早いため、労働者の解雇が頻繁に行われるという問題が生じている。さらに政府は多国籍企業を誘致するために派遣労働や契約労働など、柔軟な雇用形態を推進している。
 多国籍企業は、空港や港湾に近い海岸地域に展開しており、IT分野ではドイツのLEONI社が4,500人、Valeo社が2,000人を雇用している。またサービス分野ではフランスのteleperformance社のコールセンターがあり6,000人が雇用されている。

2009年2月25日 講演録

チュニジア労働組合同盟(UGTT)
シハーム サーシー(Ms. Sihem Sassi)

スワックス市初等教育労働組合組合教育担当

 

1.一般労働事情

 80年代末から90年代初頭以来、国は保健や教育分野での調整的な役割を放棄し、数多くの組織や企業を民営化した。さらに、国際的な競争力のない企業は閉鎖した。また多くの外資が、チュニジアから他国へ移転していった。海外投資法による様々な恩恵を受けられる期間が終了したためである。こうした事が主な原因となり、全国レベルの失業率は上昇した。組合のない中小企業が目立つようになったことで、特に一時契約や無契約労働の蔓延、賃金の低下、社会保障の後退、職場における安全や健康に関わる法規制の欠如が顕著に現れている。

2.労働者が直面している諸問題

 不安定な雇用、高学歴保持者の失業という事態は労働運動が直面している大きな問題でもある。雇用が脆弱で、かつ社会基金の助成に国家が介入しないことから、労働者は保健や疾病、年金など社会保障の分野が脅威に晒されている。国は近年まで、石油などの天然資源に公的な税源や、輸出時の関税に財源の多くを依存していた。しかし石油生産量が大きく後退し、加えて年々関税額が減少していった(チュニジアとEUとのパートナーシップ協定締結、また世界貿易機関への加盟による)ため、国内税、とりわけ所得税、法人税、付加価値税などが国家予算の大きな財源になった。

3.問題解決への取り組み

 チュニジア労働組合同盟(UGTT)は組合員教育を通じ組合員への必要な情報と技能習得の機会提供をしている。ナションルセンターとして交渉で労働者の有形無形の利益を守り長年に渡って多くの利益をもたらしてきた。諮問機関でありその権限は限定的ではあるが社会経済評議会の一員と社会の最大多数の利益を守る運動をしている。

4.労働運動と政府の関係

 UGTTはフランス統治からの解放闘争において根本的な役割を担った。国のため、社会のための闘争は、1946年にUGTTが結成されて以来継続されてきた特質である。また独立以降は近代国家の建設、及び経済と社会両面の計画的発展に関わってきた。にもかかわらず、政府とUGTTの間に度々危機が訪れた。それは労働組合側がその独立性(組織権、選択権、決定権)を堅持したからである。組合員は多大な犠牲を払って、組合の独立性を守ろうとした。80年代末から90年代初頭にかけて成立した政府とUGTTの合意以来、両者は3年ごとに定期交渉を行い、財政や業種といった側面から労使関係にかかわる問題を見直している。

5.多国籍企業

 数多くの多国籍企業がチュニジアに進出した背景には労働力が豊富かつヨーロッパに比べて安い上に、チュニジアが戦略的な地点に位置するためである。これらの大半はヨーロッパ籍の、軽工業、組立業、中でもエレクトロニクス分野の企業であり、労働者を大量に雇用している。これら企業はおおむね、国内労働法を尊重し、労働者が自ら選出する組合を尊重する。ただ問題としては、こうした企業がチュニジアに根付かず、程なく他国に転出するため、労働者の解雇をめぐり大きな問題が残されてしまうのが常である。