2003年 チュニジアの労働事情

2003年10月29日 講演録

チュニジア労働総同盟(UGTT)
ムラード ベン モハメッド ベンサッシ

職業訓練・雇用・海外移民省庁関連労働組合 副事務局長
UGTT青年委員会委員長

 

国内の状況

 まず、チュニジアの概略について申し上げます。チュニジアは北アフリカに位置します。人口は約1,100万人。1,100万人の国で失業率は16%であります。15歳から29歳までの若者が人口の約4割を占めています。
 チュニジアの政治体制は共和制であります。複数政党制が認められています。従ってチュニジアは民主的な国と考えられます。
 チュニジア労働総同盟(UGTT)は故ファラハト・ハッシャード氏の指導のもとに、1946年1月20日に結成されました。その前に2つの失敗した事例がありました。1回目は1924年で、委員長モハメド・アリ・ハーミ氏の行動は失敗に終わりました。2回目は1937年に結成の動きでありましたが、フランスによって弾圧されました。すなわちチュニジアはフランスの植民地であったからです。フランスは労働者間にあった対立をうまく利用して弾圧を加えました。
 1944年に、ファラハト・ハッシャード氏を中心にフランスの労働組合の形を真似た労働組合を結成することに成功しました。しかし、創設者のファラハト・ハッシャード氏は、1952年12月5日に暗殺されてしまい、長く生きることができませんでした。労働運動そのものが植民地支配に対して危険な活動だったからです。
 植民地闘争に勝った後、労働組合運動の最も重要な問題とは、労働組合運動の独立でありました。しかし民主的かつ基本的人権に基づいた労働運動を行うことを新しい独立した政府は好ましいものとせず、1965年、78年、85年という時期に、繰り返し労働総同盟そのものを攻撃しました。
 しかし、1989年のスーサ大会以降、総同盟は賃金交渉について3年ごとに交渉することを決定し、それを90年以来継続して続けることができました。労働法に関する改正なども行っています。

UGTTの活動方針

 UGTTは国際的に、またはアフリカ地域内で活発に活動しています。その幾つかを紹介します。
 UGTTの会長は、まずICFTUの副会長を務めていることです。更にマグレブ諸国労働組合協議会(USTMA)の事務局長、アフリカ労組統一機構(OATUU)の執行委員、ICFTU‐AFROの執行委員、国際アラブ労連(ICATU)の議長、そしてアフリカの働く女性委員会のメンバーなどを務めていますす。これに加えまして、国際公務員労連(PSI)などの国際産業別組織(GUF)においても多くのメンバーが責任ある地位についています。
 2002年に開催した大会の後、UGTTはいくつかの問題に対して活動の修正を行っています。例えば、病気休業に対する保険、失業に対する保険基金をつくることなどについてであります。更にこれまで5回も交渉が行われてきましたが、賃金、労働基本権、労働協約に関する問題もあります。
 世界の情勢はチュニジアに大きく、かつ厳しい影響を与えてきました。とりわけ2001年9月11日の事件によって、観光業は大打撃を受けました。国の観光収入は大きく減少しました。また関税の撤廃も大きな影響を与えております。
 現在チュニジアが置かれている経済状況は、今後、社会的構造のバランスを大きく崩す要因となると思われます。チュニジアの経済は1980年代は基本的に国内の需要の増加とともに発展していました。1973年から83年の間は、国の政策もあり国民の購買力が非常に伸びた時期でありました。しかし、その後、政策の変更もあり、一部の社会的階層、すなわち富裕層が有利になる状況になっています。
 チュニジアでは、国の政策に基づきまして、UGTTとの間に3年ごとに賃金改定を含む労働条件の改善に関する交渉を持つことができるようになりました。国の経済政策は輸出指向政策に向かっております。海外市場が開かれたものになり、同時にチュニジアの国も市場を開放しなければならなくなりました。EUとの協定により、自由な貿易を将来的に確保することで、チュニジアがその義務を果たさなければならなくなったからであります。
 現在UGTTが政府に強く求めている問題は、税制の改革であります。現在の税制は給与生活者にとり極めて厳しいものとなっています。例を挙げますと、給与生活者が払っている税金は、約8億3,200万ディナールでありますが、これに対して企業が払っている税金は3億4,000万ディナールに過ぎないのであります。
 経済の状況は社会的な状況に大きな影響を与えます。経済が社会的に与えている影響で第一に言えることは、多くの労働者が解雇されている状況です。特に民営化、あるいは産業構造の改革で多くの労働者が解雇されています。一方、経済の悪化により、新しい雇用は増えなくなっています。雇用も短期であったり、パートタイムで満足しなければならなくなっています。民間部門は、非常に横暴な労働慣行を採用するようになり、低い賃金で企業の利益を極大化しようという行動に出がちであります。
 UGTTの現在の重点闘争課題について申し上げます。まず病気休業保険で更に、賃金決定に関して団体交渉を行うこと、失業に対しての国民的な基金を創設することであります。
 UGTTは、50万人の加盟労働組合員、7,000の単位加盟労組、そして25の地方組織、20の産別組織、30の一般労組を代表しています。
 最後に一言だけチュニジアの組合活動の特色を申し上げます。チュニジアでほんとうに民主的な行動ができ、自由な発言ができるのは労働組合の中だけだという実情があります。労働組合には市民生活のあらゆる階層の人たちが参加しています。そして、あらゆる政治的傾向の人たちを含んでいます。したがいまして、そのような中で私たちは民主的かつ自由な組合活動を標榜して活動をしております。