2003年 モロッコの労働事情

2003年10月29日 講演録

モロッコ労働組合(UMT)
サイド エル ヘレシュ

モロッコ港湾労働組合 事務局長
UMT中央委員

 

国内の状況

 モロッコは北アフリカに位置します。面積は約71万平方キロメートルです。北は地中海に面し、南はモーリタニア、東はアルジェリアと国境を接し、西は大西洋に面しています。多くの面積を山岳部が占めています。山脈の高さは約2,000メートルから4,000メートルに上ります。最高峰はツブカル山で、標高4,165メートルです。
 2001年の人口統計によりますと、モロッコの人口は2,870万5,000人であります。非常に若い国と言うことができ、15歳以下の年少者の人口比率が32.3%、60歳以上の高齢者は7.3%であります。また、1994年から2001年までの平均の人口増加率は1.7%でした。生産年齢である15歳から59歳の年齢層は拡大しておりまして、2001年には61%でした。また都市部の人口比率が非常に高く、2001年は55.9%で毎年増加しております。
 政治情勢について申し上げます。モロッコの政治体制は、立憲王制であり、民主制でもあります。社会保障制度も充実していると言うことができます。アメイディド・モー・ミーン(モハメッド6世(聖者の亡霊)と)いう称号を持ち、最高権力者である国王が治めており、この国王がすべての権力を持っています。国王は国軍の最高司令官でもあります。モロッコには憲法があり、その憲法は国民の投票によって承認されています。イスラム教が国の国教です。国の通貨単位はディルハムで、1ユーロは約11ディルハムです。
 国会は2つの議院からなり、第1議院が衆議院で第2議院が参議院であります。衆議院議員は5年ごとに行われる国民直接投票による選挙によって選ばれます。参議院議員は直接ではなく間接選挙によって選ばれ、各階層の代表者の集合体となっております。各階層には商工会議所、使用者の代表、各地方の代表、また労働組合の代表も含まれています。
 経済情勢について申し上げます。モロッコは農業国と言われています。しかし、可耕面積は全体の20%にしか過ぎません。2000年の統計によりますと、GDPは3億4,900万ディルハムです。証券市場は存在しますが、非常に弱いものであります。その他のアラブ諸国や北アフリカ諸国と違いまして、モロッコは正しく資源が活用されれば、完全自給を達成することができます。可耕面積が約800万ヘクタールあるわけですが、そのうちの600万ヘクタールが既に利用されています。また、そのうちの約80万ヘクタールが灌漑されています。その灌漑のために30余の大きな7ダムや水道施設が使われています。畜産業につきましては、年間約1,500万頭の羊が飼われています。森林は約500万ヘクタールを占め、そこから約5億ドルの収入を上げています。
 水産業につきましては、モロッコの海岸線は3,500キロメートルにわたって広がり、モロッコの漁業資源は、世界中でも最も豊富であるといわれております。約20万人の漁業従事者を雇用しています。ほとんどの水産物は輸出されています。
 独立以来、モロッコは植民地主義の悪弊から脱却することを図ってきました。そのために1960年‐64年5カ年計画が策定・実施されましたが、その一部は、1963年にキャンセルされることになり、その結果、観光業に携わる労働者の職業訓練などの必要性が出てまいりました。国の機関の90%は国が独立してから設立されました。これらの機関――産業的な企業のことを言っているのですけれども、国の企業が直接の生産基盤であります。200人以上の労働者を雇用する250余りの大企業がございまして、これらが全産業の60%を占めています。そして、生産の60%、全輸出の70%を取り扱っています。
 民営化問題について簡単に触れておきます。
 公営企業部門は、国内投資の約21%を含んでいます。国が産出する付加価値の約20%、すなわち32億ドルを年間産出しています。その分野は多岐にわたっておりまして、農業、食品加工、炭鉱、エネルギー、運輸、通信、サービスとなっています。しかし、自由化という最近の傾向によりまして、公営企業でも利益を上げない分野では望まれない存在となってきました。国は民間企業を奨励する政策を採っています。いろいろな改革を財政的に、また税制面で、そして関税の面で導入しようとしています。
 社会的な側面で幾つかの数字を申し上げたいと思います。文盲率は50%です。失業率では、労働可能な人々の27%が失業しています。すなわち3人に1人はいつも失業した状態にあります。
 労働組合をめぐる情勢について簡単に申し上げます。すべての植民地国で起きたことと同じように、モロッコの場合も支配国というのは植民地の労働者にいかなる権利も認めようとはしませんでした。それが1936年まで続きました。権利を認められていたのは、欧州から来た労働者だけでありました。1938年に初めてモロッコの労働者も含めた組織をつくることを植民地支配当局は認めるようになりました。徐々にモロッコ人労働者がフランスの労働組合に入っていきましたが、モロッコ人労働者だけの労働組合を結成することは認められませんでした。最初にモロッコ人労働者の団体が結成されたときには、それはフランスの植民地支配に反対する政治運動として結成されました。したがいまして、最初のモロッコ人労働者団体は政府の意向によるものでも、政党によるものでもありませんでした。それは労働者が栄光ある闘いを支配者に対して挑んだところから始まったのであります。

UMTの活動方針

 労働組合活動の基本的な原則、労働組合の基本的な立場について申し上げます。労働総同盟は国の自由と独立、またすべての政治的な団体に対する保護を確保するために闘います。労働者階級が繁栄するために、そして労働組合の権利を守り、労働組合員の精神的、また物質的な生活水準を向上させるために努力しています。モロッコにおいては労働組合の複数制が認められています。基本的にはモ8ロッコ労働総同盟と政府、そして使用者の3つの構成が基本でありますけれども、それ以外に存在している労働組合は各政党に所属しています。
 モロッコ労働総同盟の現在の最も大きな問題は、世界銀行やIMF(国際通貨基金)によって押しつけられている多くの強制的な構造調整政策により作り出された問題で、労働総同盟はそれと闘っていかなければなりません。重要なことですけれども、モロッコの労働者には、業績が悪いということで解雇された場合に社会的な保障制度が全くありません。モロッコは、ヨーロッパに近く、したがいまして地中海には自由貿易区などを設けて、経済関係の強化に努めておりますけれども、その過程においていろいろな大きな問題が発生しています。
 最後に一言だけ申し上げておきたいこがあります。モロッコの国会では、モロッコは外国の投資家たちのためにモロッコ人労働者を差し上げているという表現が使われていることであります。