2010年 エジプトの労働事情

2011年1月28日 講演録

エジプト労働組合総連合会(ETUF)
アフメド ファフミー アフメド マフムード(Mr.Ahmed Fahmy AHMED MAHMOUD)

公益事業一般労働組合執行委員

 

1.当該国の労働情勢(全般)

 エジプトの労働組合運動は1898年に始まり、エジプト労働組合総連合会(ETUF)は1952年7月の革命の際に設立された。ETUFは2,300の労働組合委員会から構成されており、また24の産業別の労働組合連合から構成されている。2,400万人の労働者のうち600万人が労働組合に加盟している。
 エジプトにおける労働状況は、その他の世界各国、特に発展途上国におけるそれと大きく異なるものではない。繊維などの各部門における国家の民営化政策は、労働者の状況を一層深刻化させている。エジプトの労働運動は賃金の低迷や労働者の解雇、また職業訓練の必要性などといった多くの課題に直面している。

2.労働組合が現在直面している課題

 エジプトでは、労働者が直面する課題は組合毎に異なっているが、その原因は多くの場合、民営化政策である。生活関連サービス部門のような政府に属する部門を含む労働組合においては多くの場合、一部における賃金や諸手当の低迷を除けば、特に問題は存在しない。労働者及び家族がより重大な問題を抱えているのは、繊維部門のように民営化が行われた部門である。多数の労働者が解雇されたり、待遇が悪化し、企業が操業を停止することによって労働者が一切の手当を得られなくなるといった問題が発生している。

3.課題解決に向けた取り組み

 ETUFは、三者による団体交渉を通じて上記の課題解決を図っている。交渉は経営者側の強硬姿勢に代表される困難に直面することもあるが、前向きな成果を得て三者間の合意に到ることが多い。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 社会や文化はそれぞれに異なるものであり、ヨーロッパで起きていることがエジプトの文化や国民の性質に適合するものでなければ、エジプトにおいて必ずしも同じことが起きるとは限らない。ETUFは労働者の利益に資するためあらゆる当事者と協力する。政府が三者の一角を占めている以上、政府との関係が良好であることも重要である。

5.多国籍企業の状況

 エジプトでは経済改革や全世界の各国に対する門戸開放が開始されてから既に久しいため、多数の多国籍企業が活動している。これらの企業がエジプトの高度な成長の実現に影響を与えたことは明らかである。マイナスの側面に影響を受けたのは労働者たちであり、彼らは経営側の支配下に置かれるようになった。
 例えばフランス系のラファージュ社(旧エジプト・セメント工業社)は、労働者の権利を擁護するための労働組合委員会の結成を拒否しており、労働者の権利に対する各種の不当な行為を行い、職場の安全と衛生に関する権利を侵害している。、勤務中に病気に罹ったり負傷した労働者が排除されたり、労働者の権利を要求した者たちが事前の予告なく解雇されたりすることもある。また同社は労働者の疾患に際して治療費を全額負担することはなく、20%のみ支払うと定めている。そればかりか、20%支払いの対象を慢性病の場合に限る旨の変更を行った。