2004年 エジプトの労働事情

2004年11月10日 講演録

エジプト労働組合総連盟(ETUF)
オサマ ガマル アブデル サミア

公共施設労働組合 事務局長

レファート アブデル マアブド アリ セヤム
公共施設労働組合 副事務局長

 

エジプトにおける組合活動

 エジプト労働組合総連盟(ETUF)の設立は19世紀にさかのぼります。1882年、国始まって以来のストライキが石炭労働者によって行われました。1884年に最初の労働組合に関する法律が制定されました。その後、国の独立などを経て1957年に23の産別からなる総同盟が結成されました。現在では450万人の労働者が組織化されています。
 エジプトでは労働組合の結成が憲法で保障されています。労働組合に適用されている法律は労働組合法で、これは1976年に法律35号として定められました。また2003年には労働法も施行されました。これらの法律のもとに労働組合活動が行われているわけです。国民議会議員の50%は労働組合から選出されなければならないという規定もあります。
 メーデーは労働者の祭典として毎年開催されます。メーデーには大統領も出席し、労働者のさまざまな問題について耳を傾けます。各組合の幹部と首相との会合は毎月行われるほか、組合指導者と各関係大臣との協議は恒常的に開催されています。
 組合の役員選挙は、基礎組合から総連盟に至るまでのすべての段階において完全な自由選挙が実施されています。選挙の際には司法当局が監督を行っています。

労働組合の権利

 法律第12号は労働者にストライキ権を保障しており、ストライキの具体的な方法を定めています。この法律は、協同組合、文化活動組織、スポーツ活動組織、その他の組織の運営方法についても定めています。機関誌の発4行、労働者大学、観光休暇村、労働者銀行といった福利厚生活動もこれにもとづいて行われています。条文中にある社会的綱領という箇所は非常に柔軟な規定になっています。
 エジプトにおいてもグローバライゼーションの影響が急速に進んでいます。この問題に対処するにあたっても労働者の参画が重要視されています。たとえば、労働者の同意なくして公営企業の民営化はできないことになっています。また公営企業が民間に売却される場合には、その株式の多くを労働者が取得できるようになっています。このような仕組みは多くのヨーロッパの国々で現在導入が検討されているところです。

労働組合の課題

 エジプトの労働組合が現在抱えている問題点について2つほど申し上げます。
 第1は組織率が低下していることです。その理由は、抗しがたいグローバライゼーションが進行する中で多くの工場が閉鎖されてしまい、古くから就労していた労働者が締め出されたことにあります。現在総連盟は450万人の労働者を組織していると申し上げましたが、労働者人口は全体で1,800万人にのぼります。未組織の労働者をどうやって労働組合に取り込むかが大きな課題です。具体的には、未組織の事業所、中小の事業所を組織化し、それらを23ある産業別組織にどう参加させるか、あるいは新たな産業別組織に参加させていくかという取り組みを行っています。たとえばミネラルウオーターを製造している企業の労働者は組織化されておりません。そこに水関係の労働組合をつくり、その労働組合を公共の電気・水・住宅の労働者を組織する私どもの公共施設労働組合の中に取り込もうとしています。こういった取り組みを23の産業別組織がそれぞれ行っています。
 2つ目の課題は民営化の問題です。これについては大統領自身も非常に気にしています。今年のメーデーの演説で大統領が「民営化によって労働者には不利益なし」という発言をされました。どういう意味かと言いますと、公営企業が民営化される場合には労働者がその株式の51%を取得し、これによって労働者が最大の株主になることを政府が保証する、ということです。また先ほどから申し上げているように、議会の半分が労働者の代表であるということから、政府の政策決定において労働者の意見が十分に反映され、民営化によって労働者が不利益をこうむることが回避される仕組みになっています。これでは逆に投資が逃げてしまうのではないかという懸念もありますが、いっぽうで投資省という役所がありまして、そこで投資を誘致するための具体的な施策も検討されています。
 グローバラ-ゼーションと民営化の過程で、アメリカとヨーロッパ諸国が私たちに求めたことが2つあります。1つは「大中東構想」というものです。この大中東構想については、エジプトの労働組合は他のアラブ諸国の労働組合と一致団結して拒否しました。2つ目は、新しくアラブに自由な労働組合運動をつくったらどうかという提案がアメリカからなされたことです。これについても大統領みずからの言葉で提案を拒否しました。労働者の問題にアメリカが介入してくることを、エジプトの労働者はアラブの同胞及び友好的な労働組合とともに拒否しています。