2000年 エジプトの労働事情

2000年11月22日 講演録

サイード・タハ・ハッサン
建設業・建設資材加工業労働組合委員長

 

国営企業の民営化

 初めに、エジプトが現在抱えている労働運動の現状について簡単にご説明します。皆様もご承知のとおり、エジプトは現在、政治的、経済的また社会的にも大変重要なプロセスを通過しようとしています。1991年より、我が国はすべて国営企業であった従来の体制から、資本主義体制へ、企業の民営化を急速に進めています。エジプトは35年前より、準社会主義体制といいますか、ほとんどの生産設備、企業を国が保有してきました。国は現在、所有していた各企業の株式を、民間企業あるいは個人投資家及び外国の多国籍企業等に売却しています。また、小さな企業については、その企業の従業員に売ることにしています。利益を上げている企業については株式を積極的に市場で売り、逆に大きな赤字を累積させている会社については、リストラを行っています。それらの赤字会社は、その累積債務を銀行に対して支払わなければなりませんが、それをまず国が行い、その上で、労働者数を必要最小限にまで減らしています。

企業の民営化に伴うETUFの活動

 エジプトの労働運動は、このプロセスにおいて重要な役割を果たしています。このような民営化のプロセスにおいて私どもの優先課題は、労働者にまで被害が及ばないようにすることです。まず既に売られた会社、またこれから売られる会社についても、早期退職制度に従った労働者は、十分な補償金を得られるようにしています。また、引き続き勤務する者については、民営化が始まる前に有していた労働者としての数々の権利はそのまま保証されることを確保しています。すなわち民営化以前に有していた賃金水準、医療関係の制度、社会保障制度、これらをすべてそのまま引き継ぐということです。また同時に、一 時退職金を受けて退職した人々については、今後も家族とともに幸せに暮らせるように、起業するように指導しています。これらのプロセスは、すべて国との完全な合意のもとに、またそれぞれの既に売られた会社、これから売られる会社の経営、組合、政府三者の完全な合意のもとに行われています。
 その他には、民営化された会社の株式の一部、10%を労働者が保有する制度があります。この株式を10年ないし15年の分割での購入が行われています。そして株式を保有する者は、株式保有者会議という集団をつくり、会長はその会社の役員として経営に参加することになっています。
 もちろん我々総同盟は、Shura評議会に対して、新しい資本主義の時代にマッチした新法を制定する際の政策要求活動をしています。それから、女性の労働現場における地位の向上及び育児労働の軽減に努めています。また、新しく資本主義体制で仕事をしていくために、企業内または組合内で労働者の教育・訓練に努めています。その中には団体交渉の方法なども含まれています。このような分野では、外国の経験に多くを学ばなければなりません。そのため、アメリカ・アフリカ連帯センター(AAC 、またフリードリッヒ・エーベル)ト財団などの協力により、学習の機会を頂いています。
 また、一たん退職した人たちが新しい職種につけるように職業教育訓練を行う研修所などの設置に努めています。この分野においては、私たちは大変大きな成果を上げています。

ETUF の国際活動

 私たちの活動において特に重要なことは、国際的な労働者の連帯機関、ITSまたICFTUという場において、我々の活動を諸外国の同胞と共に活動を行なっていることです。また、アラブ地域においても、アラブ労働機関または産別アラブ労働機関という場において連帯を強めています。
 ILO条約に基づいた国内的な労働慣行の整備にも努めています。もちろん、美しい話ばかりではなくて、エジプトにおいては、我々労働者の権利を守るためにほんとうの闘争をしなければならない状況もあります。