1998年 エジプトの労働事情

1998年7月15日 講演録

ファローク・シェハタ・エル・アワディ
銀行・金融・保険一般労働者組合

 

労働運動の歴史

 エジプトの労働運動の歴史は19世紀末にさかのぽりますが、1889年に印紙たばこ労働組合というものが最初に設立されたのがその始まりです。その後は、1942年に労働組合に関する法律85号が制定されました。そして、エジプトの法律では65条にわたる文言がありますが、これが労働関係を規定しています。この法律が規定しているところにより、エジプトの労働運動は民主的な基礎の上にその活動をする権利があるということです。

労働達動の原則

 1つは、労働運動全般の統一です。まず第1に、エジプトの労働運動は複数の運動をしないということです。その2は、労働運動への参加の義務です。この意味は、労働運動に参加する者は、法律及びそれぞれの労働運動が定めるところの基本的な決まりを遵守することです。3番目は、労働運動の自由です。組合員がその組合に参加したり、脱退する完全な自由を有しています。その理由の1つはエジプトがこの件に関する国際条約に加盟しているからです。第4番目の原則は、それぞれのレベルにおける労働組合組織を構成する際における民主的な手続です。この意味は、労働者及び使用者の双方が代表を選ぶときに民主的な手続で選定するということです。同時に、国家権力側からこの手続きに何の干渉もしない、また、そういった民主的な手続を妨げる行動をとらないということを意味しております。
 そして、1976年の法律第85条は労働関係に関する法律ですが、この法律は労働組合に対して、社会・経済開発に関する協議及び交渉をすることができる権利を保障しました。そして、この法律により、労働者の関係及び社会、経済開発に関する法案あるいは制度条等が法律になる前に、すなわち立法、行政機関で審議される前に組合側がその協議に参加できる権利が保障されたのです。

ナショナルセンターの構造

 エジプトにおける労働運動の構造はピラミッド構造をしており、その基礎にあるのはそれぞれの会社組織における労働組合や、あるいは産業別の労働組合です。一般組合と呼んでいますが、それぞれが参加する形で、その上の大きな産別の組織となるわけです。そして、総連合会がそのトップにきて、その下の組織をすべて統合しています。そして、その基礎単位のエジプトにおける組合の数は約4,000です。産別は23です。この23の産別はそれぞれの特定の職業、職能あるいは産業別の一般組合でして、この23すべてがエジプト労働組合総連合会(ETUF)に所属しています。
 この産別の例として、私の参加している銀行関係一般組合をご紹介します。銀行・金融・保険一般労働者組合は、この23の産別の1つです。この一般組合は1960年に組織されました。その組合員数は12万人で、その基礎となっている組合の数は80です。その組合は大体4つの部門に分かれており、1つは、特別機能を持っている銀行、その2は一般的な商業銀行、3つ目は保険関係、そして最後は、これは公共部門の財政省及び関税局、そういったお金を取り扱う機関の職員です。

現在は経済構造改革が課題

 現在、経済構造改革を進めています。政府及び工業者組合と私どもが、ILOの指導に基づく新しい労働法の制定に向けて協力しています。この新労働法は経済構造改革がもたらす社会的、経済的な大きな社会の変革にこたえるものです。もちろんこれは私たちの社会、経済の独立を守るために大変に重要なことであり、また、その目的とともに歩めるものでなければなりません。私どもは、社会的に意見を発表する場、あるいはセミナーなどあらゆる機会を通じて、この経済構造改革が社会的に非常に重要な使命を持っているものであり、これを成功させるべきであるということを訴えています。同時に、この経済構造改革が労働市場、雇用問題あるいは労働者の生活水準といった分野においてネガティブな作用を持っている、その点について十分に注意しなければならないことも訴えています。そして、このような労働組合の取り組みは政府、とりわけ政府指導者の重要な関心を呼んでいます。それは、この労働者の取り組みが経済構造改革の基本を逸脱しない限りにおいてということです。
 我々労働運動は、この経済構造改革が労働者の生活水準を改悪しないように一生懸命努力しています。つまりこの構造改革によって、失業したり、あるいは年金の受給期間が早く終わるという被害をこうむらないようにということです。そして、政府がつくりました社会開発基金に基づく融資を受けられるように、また、彼らのために事業があるので、そういった事業につくことができるように側面的な支援をしています。