2016年 アルジェリアの労働事情

2016年11月11日講演録

アルジェリア一般労働組合(UGTA)
アブドゥルカーデル・ゾウビール・ベドブーディ
アーバン・アンナバ労働組合 書記長
ラティーファ・シャハラザード・シハウイ
ナーマ県労働組合 女性委員会委員
サーラ・ハムダーン
コシデール・パイプライン公社労働組合 執行委員

 

1.当該国の労働情勢(全般)

  2014年 2015年 2016年(見通し)
実質GDP(%)
(出典元)
4.16%
(アルジェリア財務省)
3.5%
(アルジェリア財務省
4.6%
(アルジェリア財務省)
物価上昇率(%)
(出典元)
3.5%
(アルジェリア財務省)
5.1%
(アルジェリア財務省)
4.6%
(アルジェリア財務省)
最低賃金
(出典元)
□時間(86.54)
□日額(692.32)
□月額(15,000)
アルジェリア・ディナール
□時間(103.85)
□日額(830.32)
□月額(18,000)
アルジェリア・ディナール
□時間(103.85)
□日額(830.32)
□月額(18,000)
アルジェリア・ディナール
労使紛争件数
(出典元)
4,324件 3,259件 3,000件
法定労働時間
(出典元)
8時間/日
(労働法)
40時間/週
(労働法)
時間外/割増率
25%から50%
(労働法)
休日/割増率
100%
(労働法90/11第52条)

 近年、政府は公的部門をはじめとする経済のあらゆる部門においてディーセントワークを実現するため、労働条件の遵守に力を入れている。中でもインフォーマルセクターについては、政府にとって重要課題の一つと認識されているが、インフォーマルセクターには、雇用を創出し、失業者を吸収するという側面もある。そうした労働力を活用して、開発政策を支える役割も担っているほか、所得を生むだけではなく、市民のニーズに応える製品やサービスを供給する機会を提供している。しかしその一方で、賃金、社会保障、安全衛生に関する労働条件が、あるべき状態とは程遠いケースがほとんどであり、労働者の権利が侵害されており、収益に対する税金の支払いを逃れるため、大半の労働者について社会保障基金への申告がなされていない。
 世界経済がグローバル化の影響に晒される中、アルジェリアでは生活水準の向上の一方で、市民の購買力が全般的に低下しているため、インフォーマルセクターの管理や、民間部門での不安定雇用への対応を困難にしている。また、公共部門においても、2016年、2017年の2年間、保健、教育および水資源分野の職務を例外としながらも、新規雇用の凍結が行われることになった。
 こうした状況の中で、特に女性の労働者が犠牲となっている。具体的には、物売りや窓口対応の仕事をする女性が、社会保険に未加入のまま、不衛生な環境での長時間労働によって搾取されている。また最近では、女性の内職(子守、清掃、縫製、菓子製造など)が増えている。こうした仕事は未申告のまま発注されており、利益に対する税金も納付されていないため、統計などによる実態の把握は困難である。
 アルジェリアに進出している多国籍企業は、従業員の採用において有期雇用契約に頼っており、期間満了後は労働者を容易に解雇することができる。また、こうした労働者たちは、諸手当や賞与を受け取る権利を奪われているため、法律が定める最低賃金に満たない賃金が支払われ、さらには、社会保障からも見離されている。
 なお、『労働法90/11号』は、『第12条』において、季節労働ならびに更新に適さない性質の業務のための有期雇用契約の条件や、季節労働の従事者への補償について定めている。ここに定められている条件を遵守する限り、使用者は短期間で労働者を解雇することができる。また、こうした雇用契約は、建設工事や公共事業など、雇用の期間が事業の実施期間と直接関連する分野において交わされている。

2.労働組合が現在直面している課題

 まず、購買力の低下が労働者の置かれる社会的状況に及ぼす影響が挙げられる。また、非常に多くの分野で不安定雇用が存在しており、労働条件の改善、社会保障の充実や、原油価格の下落がアルジェリアの労働界に及ぼす影響もある。失業者の吸収という面において、民間部門の果たしている役割は重要であり、労働力が高い比率で増加している一方、民間企業では組合の結成が使用者の干渉によって困難になっている。労使双方が遵守すべき事項について合意がある場合でさえ、使用者側が解雇による脅しを行うこともある。
 インフォーマルセクターにおける安価な労働力の搾取、特に社会保障基金への未申告や、ディーセントワークとは程遠い労働条件もあげられる。使用者による法令遵守の状況を監視するとともに、司法的手段による追及をも任務とする労働検査局の職務怠慢があげられ、そうした怠慢を原因とする労働組合との連携および協働が欠如している。
 契約労働者、特に若い労働者が解雇を恐れての組合加入の躊躇や、アルジェリア社会の男性中心的な考え方による女性の組合参加の疎外などがあり、決定権を有するポストに女性組合員を登用し、可能な限り多くの若者や女性に対し組合への加入を促進しなければならない。労働者は、労働関係法制や労組により法的に保護されているはずであるが、法律の解釈や理解が当該責任者の間で異なっているため、労使間の対立を引き起こしている。

3.その課題解決に向け、労働組合としてどのように取り組もうとしているのか

 これらの課題解決に向けて、三者間(組合、政府および事業主)ならびに二者間(組合および政府、または組合および事業主)での社会対話の原則が確立されており、これまでに20回の三者対話、13回の二者対話が開催された。UGTAは、こうした対話を通じて、いくつかの成果を得ることができたほか、失業を解消するための雇用メカニズムの設置に参画し、失業率は9%にまで低下した。具体的には次のとおりである。

  1. 国家労働庁による費用補助の支援を通じての雇用創出
  2. 起業の支援にあたり国家青年雇用庁が費用の90%を限度とする銀行からの融資や、5年間の免税措置を実施
  3. 女性の内職労働者に対して社会保障を確保する措置として、2,000アルジェリア・ディナールの給付金を支給。また、失業中の若者に対しても、自動・任意申告によって同様の措置を実施
  4. 役員に選出される組合員の内、女性の比率を30%以上に義務付ける
  5. 全国的な青年委員会および女性委員会を設置するとともに、県レベルの支部を設置する。その目的は、組合における女性や若者のプレゼンスを後押しする
  6. 女性や若者の組合員を増やすために、組合としての計画を策定し、決定権を有するポストに女性や若者を登用するための能力向上を推進
  7. すべての当事者が遵守を義務付けられる社会経済開発協定への署名
  8. インフォーマルセクター労働者の捕捉と社会保障の確保のため、当該労働者の強制申告
  9. 使用者が労働者の申告および保険料の支払いを遅延したことに対する罰金を免除することで、労働者の申告と社会保障基金への加入を促すことを通じて、社会保障の適用とインフォーマルセクターの解消を推進
  10. 産業共通合意や、企業特に民間企業における団体合意の拡大
  11. 民間部門における組合の組織化を推進
  12. UGTAとして、社会対話のための強力な政策を推進し、全国レベルの会合を開き、国家経済の浮揚には、全ての協同者の間で社会的な安定が不可欠であることを啓発

4.その他

 UGTAは、政府および事業者団体と連携し、若者の求職者に対する支援の取り組みを継続している。組織としての取り組みでは、ディーセントワークと雇用の安定を達成するだけではなく、若者を職業的・社会的生活へ取り込んでいくことが可能となる。
 また、経済開発のために、国内外からの投資を促し、雇用機会の増加や、技術革新を促すことにより、生産性の向上と雇用機会の創出をもたらし、生活水準の向上に取り組み、若者の労働者および求職者に対する職業訓練を通じて、労働市場のニーズに応える取り組みも続けている。
 さらに、国家青年雇用支援庁(ANSEJ)および国家失業保険基金(CNAC)のスキームに基づき中小規模のプロジェクトを通じた起業家精神を強く推奨している。これらの機構は、プロジェクト成功のための支援を行っており、経済開発において重要な役割を果たしつつ、雇用の創出源となっている。

*1アルジェリア ディナール=1.0399円(2017年2月1日現在)