2015年 アルジェリアの労働事情

2015年12月4日講演録

アルジェリア一般労働組合(UGTA)
ベルガセム・ケルファ(Mr.Belgacem Kerfah)

国立労働組合調査・研究所トレーナー兼UGTA教育・組織担当

ナイト・ウアラブ・ハジーラ(Ms.Nait Ouarab Hadjira)
UGTAベジャイア地方組織執行委員兼UGTA執行委員、女性委員会副委員長

 

1.労働情勢

(1)アルジェリア一般労働組合(UGTA)について
 アルジェリア一般労働組合(UGTA)は、それまであったフランス系の労働組合が労働者の権利、保護に熱心でなかったことから、これに決別する形で、フランスとの武装闘争の中から生まれた。(1956年2月24日)現在の組合員数は、男性の組合員数が約190万人、女性が約26万人となっている。その他に定年退職者の組合員もおり、総数で約220万人となっている。その組織構成は、48の地方組織、32の産別からなり、その基礎となる加盟組合数は960組合となっている。

(2)アルジェリアの労働情勢について
 まず、経済・賃金面について見てみる。実質GDPの成長率は、2013年2.8%、2014年4.1%、2015年の見通しが1.8%となっている。物価上昇率は、2013年4.75%、2014年3.5%、そして2015年が10.8%となっている。最低賃金は、2013、2014年とも1万5000アルジェリア・ディナール(約円)であったが、今年は1万8000アルジェリア・ディナール(約円)となっている。
 次に、労働関連について見てみる。労使紛争の件数(個人的な紛争、集団のもの両方を含む)は、2013年5200件、2014年4324件、そして2015年が3259件となっている。法定労働時間は1日8時間、週40時間、さらに、時間外労働の割増率は、午後4時半から8時までが25%、8時から10時までが50%で、それ以降12時までは75%、そして夜中12時から朝8時までは100%となっている。加えて、休日出勤の割増率も100%となっている。
 労働関連で特記すべきは非正規労働についてである。これにはさまざまな形態がある。例えば、道で物売りをしている者、家庭内労働、子供の労働といったものがあり、また、大都市には労働の許可を得ずに製造業を営んでいる者、あるいは観光部門や農業部門では、一時的、季節的な労働というのも存在している。いずれにせよ、非正規労働は国民の必要とする商品・サービスを増やす反面、労働者の権利を無視し、賃金面、社会保障面、安全労働面に問題を投げかけ、ディーセントワークの実現を妨げている。
 いまひとつの特記すべき点は、多国籍企業についてである。これら企業は、労働期間を短期間に限定して雇用と解雇を繰り返し、賞与や手当を支払わず、低水準の賃金支払いで済ませ、社会保障を適用しない労働慣行を作り出している。

2.労働組合が現在直面している課題

 労働組合の活動が現状の経済情勢に影響を受けることは否めない。最近の石油価格の低下は、GDPを停滞させ物価を上昇させるなど、経済情勢の悪化を招き、労働市場に悪影響を及ぼしている。また、労働者の生活面でも購買力を低下させ、社会的状況に悪影響を与えている。
 こうした厳しい現状を注視しながら、労働組合が直面している課題を提起する。ひとつは、前段でも述べた非正規労働や民間部門に働く労働者の労働条件改善と解雇防止である。非正規労働は低賃金労働を助長しており、また、社会保障基金にも加入できていない。民間部門に働く労働者については、その雇用を守るための労働組合設立が困難な状況を呈している。使用者側は労組活動を嫌い、事業閉鎖、海外再投資などに打って出ることもある。また、非正規労働者や契約労働者は、労働組合と使用者の関係枠組みの外にあり、裁判を起こしても勝ち目がないなどから、労働組合加入が躊躇されている。2つには、女性組合員を決定権限のある地位につけること、並びに、できるだけ多くの若者、女性を労働組合活動に巻き込むことである。アルジェリアの国民一般のメンタリティーは、女性が組合活動に参加することに抵抗感がある。また、法律上は労働者も労働組合も守られ,侵してはならない権利も有しているが、使用者の暴虐な脱法行為などに対し、労働組合の力が弱く、活動を妨害される傾向がある。

3.その課題に向けてどのように取り組もうとしているのか

(1)これまでの課題解決による成果について
 アルジェリア一般労働組合(UGTA)は、これまで厳しい環境の中にありながらも、政労使三者構成、あるいは二者(労働組合・政府/労働組合・使用者)の社会的対話の実施により、いくつかの成果を勝ち取ってきている。
 その内容は、[1]政府の費用負担で雇用機会を創出する国民雇用機構の設置、[2]起業を政府が支援する国民青年雇用機構の設置。この機構を通じ90%まで銀行融資を受けることができるほか、起業から5年間課税免除、[3]家庭で働く女性に対する社会保障保険と2000アルジェリア・ディナール(約円)の奨励金、[4]労働組合役員(選挙選出)構成における女性比率として30%を下回ってはならない、[5]若者と女性の労働組合での活躍を支援するため、働く青年委員会、女性労働者委員会の全国レベル(中央)とその支部の各県への設置、[6]若者と女性への研修機会の提供のため、国立研究技術センターによる労働組合研修プログラムの策定、[7]民間部門の労働組合設立の奨励、などである。
 こうした取り組みにより、失業率は10%にまで低下した実績がある。

(2)課題解決に向けたこれからの取り組みについて
 アルジェリア一般労働組合(UGTA)は、国民社会契約の枠組みもあり、社会的対話に強力な政策を有してきた。これは、いかなる国民経済の発展も社会の健全性なくしては実現されないという思いからである。こうした思いの上に、雇用政策をあらゆる方面から強化する視点に立って、[1]全ての職を求める若者がディーセントかつ恒常的な仕事に就けるよう、政府や使用者団体とともに努力する。このような共同行動により、若者の職業社会生活を始める機会を提供する、[2]雇用機会を増やす投資と経済発展を国内外の投資家に奨励する、[3]技術革新で生産性を向上させ、雇用機会も増やすことを奨励する(これが生活水準の向上につながる根本策として)、[4]労働者と求職者の研修を通じ、職を求める若者が現実の仕事のニーズにマッチするよう継続的改善を図る、[5]起業精神、特に中小ビジネスの起業を奨励する(経済発展と雇用創出に極めて重要なこととして)。
 以上のような雇用を安定させるためのさまざまなメカニズムを通じ、直面する課題の解決に努めていく。