2012年 アルジェリアの労働事情

2013年1月25日 講演録

アルジェリア一般労働組合(UGTA)
報告者: ヌールッディーン ジャーニー(Mr. Nourredine ZIANI)

アルジェリア一般労働組合(UGTA)調査研究所トレーナー
カリーマ ビントリヤ(Ms. Karima BENTRIA)
アルジェリア一般労働組合(UGTA)調査研究所トレーナー

 

1.労働情勢(全般)

 アルジェリア一般労働組合(UGTA)は、1956年2月24日に設立された。政党、政府および経営者から完全に独立した自由で民主的な労働組合である。ブルーカラー、ホワイトカラーを問わず、労働の成果として賃金などを受け取っているアルジェリアの労働者を対象とする組織である。また、定年退職した労働者、求職者、解雇された労働者も組織している。
 アルジェリア民主人民共和国は北アフリカに位置しており、面積は238万1741平方キロメートル、北アフリカの大国であり、人口は約3700万人である。年齢別構成は、0~14歳が29%、15~64歳が66.3%、65歳以上が4.7%である。
 アルジェリアは、独立後に急速な発展と成長を遂げたが、石油やガスなどの燃料部門に依拠しながら、その開発と自由経済の政策をとってきている。社会主義経済体制から市場経済に移行していく中で、大きな変化を経験した。国営企業の一部は民営化され、民間や外国の投資に門戸が開放された。1989年の憲法制定で1党独裁体制が終わり、民主主義が確立されるという展開となり、労働者の権利に関する原則も定着してきた。しかし、経済金融危機の中で、1990年代の初めにIMFのプログラムに従って債務再編成が行なわれ、労働者は解雇され、失業率は30%を上回った。2000年代の初めには徐々に治安も回復して、石油の価格も上昇した。石油による収入は、今日に至るまで外貨獲得の主な源泉であり、アルジェリアの輸出総額の98%を占めている。
 労働力人口は、全体が1181万2000人で、15歳以上の人口の41.7%。そのうち女性は182万2000人で14.2%、男性は899万人で68.9%である。公営部門と民営部門の就業人口の割合は、公営が34.4%、民営が65.6%である。またそれぞれの性別の割合を見ると、公営では女性が45.8%で、男性が32.3%、民営では女性が54.2%の、男性が67.7%となっている。就業人口に占める産業別の割合で見ると、商業・サービスが55.2%、建設が19.4%、工業が13.7%、農業が11.7%である。また失業人口の総数は107万6000人で全体の10.8%で、女性の失業率は19.1%、男性は8.1%である。
 
(注)一部、割合(%)が合わないが、報告者の報告通り記載している。

2.労働組合が現在直面している課題

 アルジェリアの労働組合が現在直面している課題は、組織率の低下である。雇用されても、若年層は労働組合に加入したら解雇されるのではないかと恐れている。また、経営が困難になっている企業における労働者の解雇や、世界経済危機の中で深刻化している労働者の購買力低下の問題がある。民営部門における労働者の割合が増加する中で、一部の経営者は会社内に労働組合が存在することを拒否している。労働組合にとっては、労働者を組織することが難しい状況となっている。また労働関連の法律がきちんと適用されていないことがあり、不安定な労働形態や未組織労働者の拡大とともに失業者が増加している。

3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているのか

 その解決に向け、アルジェリア一般労働組合(UGTA)では、全国レベルでの戦略を策定している。課題解決のためには、社会対話・団体交渉の原則を導入することや、若年層および女性の労働組合加入を促進するための戦略を策定する必要がある。UGTAの中に、女性の労働組合加入を促進するための全国的なキャンペーンを組織する特別プログラムが作られ、繊維の部門から開始された。組合員に必要な法律的な知識を伝えて交渉力をつけるための研修を全国レベルで計画している。そして、政府、UGTA、使用者がそれぞれ遵守すべき条件を定めた国民・経済・社会協約の見直しに向けて準備を進めている。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 ナショナルセンターと政府は、労働問題についての社会対話を行なえる関係にあり、協議を継続しており、労働問題に対処するため、政労使の三者による定期的な会合が開かれている。また、UGTAと政府の二者間の会合も開かれている。UGTAは、社会対話こそが労働者の問題を解決するための有効な手段と考えている。国民・経済・社会協約は、2006年に政府、UGTA、使用者の間で承認された。これは経済開発の戦略を変更すること、国民の生産力を動員すること、そして社会福祉を向上することが目的である。

5.多国籍企業の進出状況について、また、多国籍企業における労使紛争について

 アルジェリアの多国籍企業は数百社進出しているが、その多くは南部で燃料部門に関連する企業である。その他には食品企業などがあり、これらの企業では多くの問題に直面している。自然発生的な抗議行動が起きており、UGTAは労働法を適用するよう労働検査局に対する働きかけを続け、労働者を保護しようと活動を展開している。また、労働組合活動の自由と団体交渉の権利を尊重するよう関係方面への働きかけも行なっている。
 現在の問題としては、労働環境、職場の安全衛生、労働組合活動の権利に関するもの、言語の問題、国内法が尊重されていない現状、労働者との契約や保険に関する不正な操作――などがある。

6.民主化運動の情勢について

 今日のアラブ世界の解放運動においては、民主主義は旧体制を打倒するための基本的な理念となっている。民主主義は、国を豊かにしてくれるという大きな希望を呼びさまし、それが社会正義となり、革命の拡大へとつながった。リビア、チュニジア、エジプトにおける旧体制の打倒を経て、現在それが大きな転換期を迎えている。民主化運動の中で、さらなる政治参加、法の支配、そして自決権などを求める動きが強まっており、多くの国民は、より豊かな暮らしがもたらされることへの期待も高まっている。
 アルジェリアは、民主化に関する過去の経験がある。中東・アフリカ北部地域における現在の民主化運動は、イスラム主義的な要素が強くあり、これが果たして民主化の促進につながっていくのか、それともイスラム主義そのものが民主主義、民主化の障害になっていくのか、などを問いかける必要がある。

7.民主化運動の課題について

 民主主義とは、意見の相違や利害の対立を平和的に処理するための理念であり、またその仕組みがあってこそ成り立つものである。そういう制度だということを認識する必要がある。すなわち、暴力装置を制御して、内戦の発生を防がなければならないということである。そのためには、次のことが求められる。
 一つは、誰もが納得できるような内容の憲法によって、民主主義を法律の形で実践していくことが必要である。二つ目は、権力層と一般市民の双方がともに民主化していくための段階的な方策をまとめることであり、あらゆる党派や思想の違いを超えて、合意を形成していく必要がある。そして最後に、民主化のプロセスを継続していくために、それぞれの立場にある者たちが、互いに多様性を認め合うことである。
 社会対話を通じた問題解決の仕組みを確立することこそ、民主化運動の中で労働組合に求められる役割である。それは、[1]労働者の生活を改善して、購買力を向上させていくための闘いを続けていくこと[2]経済回復政策を通じた雇用創出により失業を防ぐこと[3]富の公正な配分が行なわれるように努めること[5]労働組合同士の協力と連帯のネットワークを創出すること[6]人権尊重の原則を確立すること――などである。
 24年以上前のことであるが、1988年にアルジェリアはすでに「春」を経験している。政治・経済のさまざまな分野で根本的な変化が起きた。そのひとつの成果として、政治的多元性である複数政党制が確立した。65以上の政党が存在して、70以上の労働組合が結成された。また、市民団体も数千作られた。140以上の新聞があり、テレビに関しては幾つもの衛星テレビ局が設立された。その後数々の障害があり、いわゆる暗黒の20年と言われる時代を経験し、20万人もの犠牲者が出た。その中には450人の労働組合の活動家も含まれている。その後、国民和解のための政策が出され、国民投票を経て承認された。こうした歴史を経て、今日、アルジェリは民主化に向けての取り組みを進めている。