2010年 アルジェリアの労働事情

2011年1月28日 講演録

アルジェリア一般労働組合(UGTA)
ターレブ アブデッラー アフメド(Mr.Taleb Abdellah AHMED)

教職員組合執行委員兼UGTAアインサラー地区組織担当書記

 

1.当該国の労働情勢(全般)

 アルジェリアにおける労働状況は、経済改革に代表されるようないくつかの重要な局面を経て、その改善が顕著であり、かつ比較的安定している。アルジェリア一般労働組合(UGTA)と政府、使用者によって2009年12月に行われた第13回三者間会合の結果、適切な労働環境の実現のための交渉が進展し、最低賃金の引き上げや、労働協約の見直しと労使協定の形成、部門ごとの法制づくりや特別法の制定などに関して、いくつかの合意が得られた。
 これらの合意を適正にかつ早期に実施することによって、労働状況はより一層改善されるであろう。経済と社会の発展の実現と、生活レベルの向上、格差の縮小、貧困の解消など、包括的かつ継続的な発展を命題とする戦略の策定を目的とする「国家経済社会協定」が政府、UGTA、使用者の三者間によって合意されて以降、全般的に労働状況は改善されている。

2.労働組合が現在直面している課題

  • 部門ごとの法制づくり、労働協約・労使協定をめぐる協議の開催。
  • 状況改善をめざし団体交渉を効果的に活用する。
  • 労働者が組合に参加する権利や適切な労働条件の確保など、労働関連の法律や協定を尊重し順守するよう、特に多国籍企業や民間企業に働きかけていく。
  • 労働法違反撲滅のために労働監督局など監視機関の役割を活性化する。
  • 社会的対話を通じて、すべての企業に組合結成の自由、表現の自由を普及する。
  • より多くの分野・業種での組合の結成を支援し、労働者を啓発する手段を開発する。
  • 富を生み出す生産的労働、かつ労働者の基本的権利と尊厳を守る労働を通して、社会の安定と発展を実現し、次世代の若者の将来を保証し、持続的発展が実現されるよう、より一層努力する。これは、労働組合が「国家経済社会協定」に積極的に参加することによって可能となる。
  • 民間部門の労働者の組合加入促進。
  • 未組織部門の組合加入促進。
  • 青年労働者と女性労働者の組合への加入が少ない。
  • 児童労働の撲滅。

3.課題解決に向けた取り組み

 効果的で実効性を持つ提言力を有するためには分析・調査能力が不可欠であり、綿密な準備とより多くの経済調査・社会調査が必要である。

  • グローバル化のリスクに直面している組合活動の基本的進路を提示し、詳細な戦略を策定し、新たな活動手法を構築することによって、労働者の権利と期待に合致したグローバル化の実現が可能となる。労働者の代表者が各種の法律委員会(政府、UGTA、使用者のそれぞれの代表者が同人数参加し、同等の力を持つ委員会、合同委員会、保健委員会、安全委員会など)へ効果的に参加することが肝要である。
  • 組合関係の各種機関との協力関係を強化することによって、労働問題が社会に与える負の影響を解消し、労働者に強制されている政策事項を見直し、労働者の利益と権利の保護に努める。
  • 適切な労働環境やディーセントワークを実現する手段である団体交渉を効果的に行うための教育訓練、手法の改善を行う。
  • 労働関連の国内法と国際法の周知と理解を広めるための広報ネットワークを整備する。
  • 労働監督局と社会保障監督局の役割の活性化。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 UGTAは多くの労働者を代表する機関として、政府にとって重要な意味を持っており、政府との良好な関係を享受している。UGTA組合員は社会の様々な問題を現実的な方法で解決するために努力を続け、1990年以降定期的に開催されている政府、事業主との三者会合や二者会合を通じ、相互尊重と相互利益の精神に基づいて諸問題の解決を模索し続けている。組合と政府間のこのような対話は新たな段階に入っており、社会の発展に寄与し多くの部門の労働者の利益となる大きな成果を上げている。
 一方、いくつかの部門においては交渉が難航しており、要求に応じるよう圧力をかけるための最終手段として、合法で合理的なストの実施に至ったケースもある。UGTAは労働問題を解決する責任を負った重要な立場にある。対話は問題解決の適切なアプローチであると確信しており、これまで多くの成果をあげてきた。その代表的なものを以下に記す。

  • 経済部門における労使協定187件
  • 「国家経済社会協定」の締結
  • 労働者のための基本法と、部門別の特別法の制定
  • 賃金と昇給の規定作成
  • 労働関連の法整備と労働者の購買力に関する調査の実施
  • 社会保障制度の改善
  • 雇用の維持と、雇用創出プログラムの支援
  • 三者間会合を13回開催
  • 二者間会合を12回開催
  • 企業における労使協定13,813件
  • 企業レベルの協定2,946件

5.多国籍企業の状況

 多国籍企業は特にエネルギーや建設部門、いくつかの大規模な事業において精力的に企業活動を展開しており、適切な職務内容と適正賃金で労働者を雇用し、社会保障や各種褒賞金を与えるなど労働者を公正に処遇している。しかしながら、適正な労働条件を確保せず、悪条件の労働、労働者を差別し不平等に扱う、また社会保障を利用しないなど、基本的な労働条件を順守していない多国籍企業も見受けられる。労働監督局が把握する上記のような違反件数は増加しており、特に労働者の安全衛生に関する面での違反が目立つ。
 労働者個人からの訴えの中には賃金、各種手当、労働時間、保険、職場での安全面などに関するものが多いが、これらの労働者が組合に加入し団体交渉に参加すれば、組合としてそのような問題と戦うことができる。これらの企業に共通して言えることは、労働者が組合に加入することが困難であり、また時には加入すれば労働契約を更新しないなどと脅される場合もあるということだ。UGTAはこれらの企業における組合加入者を見つける努力をしている。求職者がこれらの企業に雇用される前に予め労働組合に加入していれば、問題解決の足がかりとなるかもしれないからだ。これらの企業は、生産力を押し上げ富をもたらし雇用の増大に寄与する工業や農業を主な事業としていることから、労働者を組合に参加させ団体交渉を活発化させることで労使紛争を減らすことができる。同時に国際的に合意されているような適正な労働条件を提示できれば、労使紛争に歯止めをかけられるであろう。

アルジェリア一般労働組合(UGTA)
ケジュル ファディラ(Ms.Kedjour FADILA)

教職員組合執行委員兼UGTAアルジェ県労働組合執行委員

 

1.当該国の労働情勢(全般)

 アルジェリアにおける労働は、アルジェリア憲法に準拠する社会関連法と、各種の国際条約によって規律されている。
 アルジェリアの労働者は以下のように分類される。

  1. 一般公務部門:保健、教育、高等教育、職業訓練などに従事。
  2. 公営の経済部門:部門別、公社別の協定に従い労働者の権利が保護される。
  3. 民間部門:政府、組合、事業主の三者間で合意された法律や協定に従う。
  4. 未組織部門:労働者全体の46%を占める。

2.労働組合が現在直面している課題

 アルジェリアにおける労働運動は、数々の労働闘争を通じて、労働組合を結成して政治的に闘争するという概念を獲得するに至った。この過程で労働運動によって権利を勝ち取るという考えが労働者間に浸透し、国家と社会の安定に寄与した。
 1989年以降、多くの労働組合が誕生した。業種毎の組合(保健や教育関連)が結成されたが、これらの組合による活動は、本来の組合活動からはかけ離れたものであった。
 アルジェリアの労働組合は民主的に運営されている。組合は強い提言力を持ち、対話と協議によって問題を解決することを信条とする。その活動は全国レベルにわたる。主な課題は次の通りである。

  • それぞれの部門を規制する法律の制定と充実、部門ごとの合意形成。
  • 監視機関(労働監督局)の役割の活性化。
  • 業種、職種ごとの組合結成の促進。
  • 最低賃金と基本給の見直し。
  • 民間部門の労働者の組合加入促進。
  • 未組織部門の労働者の組合加入促進。
  • 青年労働者と女性労働者の組合加入促進
  • 児童労働の撲滅。

3.課題解決に向けた取り組み

 UGTAは、政府、組合、使用者の三者間の対話と協議によって社会・経済問題は解決できると考える。主な取り組みは次の通り。

  • 各種機関と組合の協力関係の強化。
  • 職業訓練と啓発活動を通じて国際法・国内法の周知を図る。
  • 労働監督局や社会保障監督局の役割の活性化。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 UGTAと政府側との関係は法律に規定されており、国のため、労働者のためという共通の目的を持つものとして相互に尊重しあう関係にある。両者の協調により以下のような成果を上げた。

  • 部門間合意187件。
  • 三者間会合を13回開催。
  • 二者間会合を12回開催。
  • 企業における労使協定13,813件。
  • 企業レベルの協定2,946件。
  • 一般公務関連の法律と、特別法の制定。
  • 「国家経済社会協定」(政府、UGTA、使用者の三者間による合意)の締結
  • 賃金と昇給の規定作成。
  • 既存の雇用の保護と新規雇用の創出。

5.多国籍企業の状況

 アルジェリアは国外資本の参入を積極的に受け入れてきたが、いくつかの国外企業においてはその活動に以下のような不正行為が見受けられる。

  • 国内法に違反した企業活動。
  • 労働者の組合活動の権利を軽視。
  • 労働協約や労働保険内容を不正に変更。
  • 企業側の自由裁量による懲罰や解雇など労働者を抑圧。
  • アルジェリア人労働者を賃金・待遇面で差別。
  • 労働者を犠牲にして手っ取り早く私益を上げようとする試み。