2009年 アルジェリアの労働事情

2009年12月11日 講演録

1.労働事情(全般)

人  口 34、895,000人(2008年)
労働組合 アルジェリア一般労働組合(UGTA)
        加盟20組織 48地方組織  組合員数1,600,000人

 2008年12月時点での生産年齢人口はILO統計によると10,315,000人で、41.7%を占める。2007年の40.9%に比べると僅かに増加。
 現在の労働人口は推計約9,146,000人、雇用率は26.6%。この62.4%は都市部、32.6%は各地域に分散している。
労働者全体に占める常勤職員の比率は35.0%。非常勤職員および家事手伝いの比率は36.0%。求職者および自由業者の比率は29.0%。
 業種別の就業構造は商業、経営その他のサービスが労働者全体の56.6%、建設部門17.2%、農業13.7%、工業12.5%となっている。
 失業者数は1,169,000人で、失業率は11.3%。2007年に比べると失業率は低下した。

2.労働組合が現在直面している課題

  1. 民営化による解雇と失業問題
  2. 民営部門における熾烈な競争
  3. 非正規労働者と児童労働の増大
  4. 購買力の低さ
  5. あらゆる分野でのハラスメント、特に女性労働者に対する各種のハラスメント
  6. 不公正、賄賂、汚職、官僚機構の腐敗

3.その課題解決に向け、どのように取り組もうとしているか

  1. 労働監視局による経済・社会の変化に見合った監視機能の改善につながる法制度の 導入。
  2. 国家雇用局を、民営部門の拡大に伴う労働市場の拡大に歯止めをかけるための拠点にすること。
  3. 公務員雇用基本法の改正につながる(二者間及び三者間の)社会的対話の実現。
  4. 公営各部門における有期労働者および契約労働者の編入に関する法律の検討。公営部門における賃金の引き上げに関する交渉の指導。
  5. 児童労働の監視や防止に向けた戦略構築のためのデータ調査の検討。
  6. 貧困家庭に対する無料治療、児童労働を予防するための貸し付けなどの援助体制整備。
  7. 有効な社会保障を確立するための社会保障制度の近代化。

4.ナショナルセンターと政府との関係

 UGTAは高い提言能力を有し、国家によって設置された政治・社会団体との関係を築いている。重要な問題に関して公益や国民の立場を擁護し、意見の調整を行っている。経済・社会分野や各方面との関係におけるUGTAの活動や立場は、国益や基本法制およびUGTAの内部規則に沿ったものである。
 UGTA執行部および各地域、各レベルの組合組織は大統領選挙、国民議会選挙、地方議会選挙の成功に尽力し、国民和解キャンペーンにも集会や地域活動を通じて貢献した。また大統領の主催する集会にも労働者を動員し、UGTAが支援する大統領の政策に関する説明、啓発活動のため諸委員会を設置した。経済・社会の各方面と協力してこうした活動を行う際には、共和制の維持、政治の安定と社会平和に向けた努力、国益の擁護、近代的・民主的国家の建設に向けた努力、国家の開発および社会的公正の実現などUGTAの主要目標に関する説明を行っている。

5.多国籍企業の進出状況、多国籍企業における労使紛争について

 アルジェリアでは最近、経済を中心に大きな変動が生じている。基本的には、対外貿易自由化への動きやEU諸国とのパートナーシップ協定締結、自由通商区域の設置に向けた動きに起因するものである。またアルジェリアは市場経済移行、外国との合弁事業の自由化を目指す広範な改革プログラムを実施しており、これらの改革を支援するため燃料部門以外の分野でも投資を奨励する一連の法律を制定した

 製薬分野:「スィダール」コンプレックスは、アルジェリアにおける燃料部門以外での外国とのパートナーシップの模範例である。同コンプレックスはアルジェリアの製薬分野における先駆的な国家的事業であり、外国の複数のパートナーとの契約により、国内外の市場における地位を高めている。

 郵便・交通分野:アルジェリアはエジプトのオラスコム社と合弁契約を締結し、オラスコム社は仏アルカテル社から免許の売却を受け、GSMネットワークを手に入れた。合弁企業は2002年2月15日に正式に営業を開始し、携帯電話の通信網を開通した。

 石油・鉱業分野:鉱業部門は2001年7月3日に鉱山法が発布されて以降活発化しており、外国からの投資が進み、官民双方で合弁事業が進展した。例えば、新鉱山法に基づき、金鉱開発に関するレバノン企業との合弁契約が締結された。また金鉱開発公社とオーストラリア企業の合弁により、国内南西部での金鉱開発が進んだ。鉄鉱開発公社FERPHOSとインド企業の合弁により、国内東部での製鉄分野の生産量が倍増し、生産手段の近代化が図られた。また同じく鉱山法により、セメント製造分野のプロジェクトが実現し、エジプトのオラスコム社が石灰鉱に投資した。これら海外投資の総額は約5000万ドルに上る。鉱業部門のさらなる活性化に向けた活動が続けられている。

 石油部門では、米ARCO社が1996年4月15日に国営石油会社ソナトラック社と合弁契約を締結した(1994年7月には合弁の意思を確認する契約が締結されていた)。同契約に次いで、ソナトラック社は米欧亜と重要な諸契約を締結した。特に重要な事業は欧米のもので、以下の通り。
 フランス:15事業、総費用30億アルジェリア・ディナール
 スペイン:10事業、総費用30億アルジェリア・ディナール
 アメリカ: 6事業、総費用68億アルジェリア・ディナール

2009年2月25日 講演録

アルジェリア一般労働組合(UGTA)
ファディーラ テリブ(Ms. Fadila Telib)

教員養成学校労働組合委員長兼UGTA中央執行委員

 

1.一般労働事情

アルジェリアでは90年代初頭に経済改革が実施され、新しい世界秩序による情勢の変化やアルジェリア・EU協定の調印を経た現在、労働者の状況は次のように分類される。
(1)法制化部門。
(a)公営部門(経済関連分野、一般公務分野)
(b)アルジェリアの社会・経済にとって新しいものである民営部門、の双方を含む。法制化部門に対しては、労働者および経営者を組織化するための労働法制や特別協定が適用される。公営・民営の各部門における労働者の状況はそれぞれに異なっている。
(2)非法制化部門。
いかなる法律も適用されず、監視も行われない。この部門における労働者の状況は「悲劇」としか言いようがないものである。

2.労働者が直面している問題

(1)民営化、(2)公団の閉鎖、(3)労働者の解雇、(4)購買力の低下、(5)失業率の上昇、(6)65%に上る民営部門の登場。同部門には労働組合活動に関する認識が欠如、(7)強制労働、(8)不適切労働とセクシャル・ハラスメント、(9)児童労働、(10)非正規労働の増大、(11)社会保障の欠如、(12)労働監督局役割の弱体化、(13)労働組合組織率の低下と青年の組合離れ、(14)経済分野に関する社会対話の不振。

3.問題解決のための取り組み

  1. 市場経済に対応するための組合内における意識改革に向けた努力、(2)公団内部における組合員拡大と団体交渉力の強化。
  2. 民営部門における組織化努力。
  3. 非組織部門の組織化に向けた労働監督局との協力。
  4. 社会的対話を通じた職業訓練システムの強化の努力。
  5. 公団内部において様々のレベルで対話や協議を行うための技術を習得させるための組合員育成プログラムの促進。
  6. 増加する女性労働者の組織化、組合編入の努力(女性・家族問題省によると、今後10年間で女性労働者の割合は40%に達する見通し)。
  7. 青年労働者の組合加入促進、未組織労働者の組織化。
  8. 国際協力や、世界各地域の労働者の経験に関する情報交換。アメリカ国際労働連帯センターやスペイン、日本、ドイツ等の労働者との協力。資本主義体制におけるあらゆる成功例から学びとる姿勢。

4.労働運動と政府の関係

 客観的に見ても、アルジェリア一般労働組合(UGTA)は社会における有力なパートナーであり、専門家委員会を通して各種の事業計画や法案、研究報告を行っている。また三者会議や二者会議を定期的に行っており、90年代初めに開始されて以来、国民レベルの社会・経済対話において次のような成果を挙げられる。(1)2006年のアルジェリア国民社会・経済協約、(2)公務員基本法、(3)民営部門に関する協定、(4)賃金の向上、(5)最低賃金の引き上げ(12,000アルジェリア・ディナール)、(6)新アルジェリア労働法の制定に参画、(7)購買力向上プロジェクトの策定に参加予定。

5.多国籍企業

 産油国であるアルジェリアには多数の多国籍企業が参入している。その大半は石油関連企業である。組織化された企業においては、労働者は全ての権利を享受している。そのような企業としては、SAIPEM(伊、掘削会社)、BASP(米、油田サービス会社)、HESP、BJSP、Dowel shlum BERJd、Saha(伊、ホテル会社)、その他にも下水道や道路建設に関連するドイツやフランス、日本などの企業、ダノン社のような食品会社などがある。一方、組合組織のない企業、ANADARCO(油田サービス)、HALIBERTON(石油開発)、TOTAL(燃料輸送・供給)、WESTERN(掘削)その他の多国籍企業があり、その多くは燃料部門に参入している。砂漠の奥地で厳重な警備の下に活動している。