2010年 マラウィの労働事情

2010年10月8日 講演録

マラウィ労働組合会議(MTUC)
メアリィ・ムランビワ・ナクウェンダ・デジニェンバ(Ms. Mary Mlambiwa Nakwenda Dzinyemba)

商工業関連労働組合(CIAWU)事務局長

 

1.労働情勢

 マラウイは、30年以上にも亘る一党独裁を経て、ようやく1995年に民主主義を勝ち取り、労働組合運動も1995年にようやく復活した。
民主主義の開始とともに共和国憲法が制定され、労働者の権利が明文化された。それに沿って結社の自由、団結権、団体交渉権を規定する労働関係法(1996年)、雇用法(2000年)が制定された。また、労働安全衛生法、さらに労働者補償制度も制定され、これらすべてが労働者のより所となっている。
マラウイ労働組合会議(MCTU)には、22の関係労働組合が加盟し、組合員数は約20万人である。

2.現在直面している課題

 労働組合の最も差し迫った課題は、政府が議会を通じて法制化を図ろうとしている年金法案である。この法案は現行の年金制度を改革しようとするものであり、女性は60歳、男性は65歳になるまで年金を受給できないと規定する非常に挑発的な内容となっている。反対の根拠として、マラウイの人々はHIV/AIDSや様々感染症・疫病による切迫した問題を抱えていることが挙げられる。労働者はまだ働けるうち、すなわち45歳から50歳くらいまでの間に様々なベネフィットを享受できるようにすべきであるというのが私たちの主張である。法制化された場合、MCTUは何らかの行動を起こすであろうと圧力をかけ、利害当事者として協議に参加させるよう強く要請している。目下のところ議会は同法案の審議を保留している。
 その他の課題としては、第1にマラウイの労働法を無視する一部の外国投資家(企業)による不正な労働慣行の問題がある。最も影響が大きいのは、英語で書かれた法律を理解できないふりをする中国人投資家である。従業員の長時間働や女性労働者に対する数多くのセクハラ問題が起きている。従業員に補償を与えず、理由を説明することなく、突然、操業場所を変えたり、場合によっては国を去ってしまう事態が発生している。
 第2に、労働組合員が、経営者や管理部門の一部のポジションを提供され労働組合を去ることによって、労働組合のリーダーシップが低下している問題がある。そのためナショナルセンターとしては、常に組合員に対して様々な訓練や教育を行っていかなければならない。
 第3には、労働の不安定化、つまり、正規労働者が非正規労働者やその他の形態の労働者に置き換えられている問題がある。労働者は、自分の仕事が守られる保障がないため、こうした事態でも、労働組合への加入をためらっている。
 第4に、労働組合の財政問題がある。我々の労働組合は、組合費から得る収入のレベルが低いため、様々な支出によって、組合財政が赤字となっている。

3.課題に対する労働組合の対応

 こうした課題に対処するため、ナショナルセンターや産別組合とともに、様々な形のワークショップやセミナーを開催している。また、ラジオを通じて、労働者に労働組合から得られるベネフィットに関する意識改革を促し、労働組合に加入するよう働きかけている。組合に加入すれば、様々な問題の解決が図られると説明している。
 現在、組合は、組合員がディーセントな賃金を得られるよう、最低賃金引き上げについて政府側と話し合いを行っている。それによって、組合加盟費を値上げできるのではないかと考えている。組合費納入を容易にするためにチェック・オフ・システムの導入を始めた。
 労働の不安定化については、12カ月以上の雇用保障なしに雇用してはならないことを法律に規定するよう政府及び経営者に対して訴えている。

4.政府との関係

 政府との関係はかなり良好である。労働組合が参加する三者構成協議があり、時には政府と労働組合との話し合いも行われる。現在も、年金問題に関して政府がMCTUを交渉の場に引っ張り出そうとしている。また、労働組合は、市民社会団体やNGOに対しても様々なサポートをさらに提供するよう政府に呼びかけている。

5.多国籍企業について

 現在、マラウイには非常に多くの多国籍企業が存在し、今後も増えていくと予想される。多国籍企業には、スタンダードバンクやショップライト、ゲームストアーズなどがあり、それらの企業は組織化されている。多国籍企業の中には、雇用は提供するものの、国の法律を守らない企業が多数ある。そのため、労働組合と多国籍企業の間でたびたび労使紛争が起こっている。紛争の原因には賃金の問題が挙げられる。小売業の多国籍企業のほとんどは、母国においては、マラウイよりも多くの賃金を支払いながら、マラウイにおいては月当たり100ドル未満の賃金しか支払っていない。
 最近では、ショップライトが15%の賃金引き上げを否定したことから紛争となった。我々は、第2回目の話し合いでもし合意に至らなければ、労働裁判所にこの案件を持ち込むことを考えている。
 スタンダード銀行でも前貸しあるいは前払いについての金額削減をめぐって別の紛争が起こった。スタンダード銀行は、ほかの国々で操業する場合に比べ、マラウイ労働者の労働条件を低く設定していたからである。この紛争は、関係省庁の介入によって収まった。企業は、新聞に名前が出て自社の名を汚したくない、また、法廷に出たくないという理由で紛争解決に応じた。