2011年 ケニアの労働事情

2011年10月21日 講演録

ケニア労働組合中央組織(COTU-K)
Mr. バラサ・ソスペーター・アダムス

 

1.労働情勢(全般)

 ケニアには、5つの主要な労働関連法があり、すなわち、1)雇用法、2)労働関連機関法、3)労働災害給付法、4)労働関係法、そして5)労働安全衛生法である。すべて2007年に制定されている。また、2010年に制定された新憲法は、ストライキと労使間団体交渉の権利を含め、労働者の立場を考慮して作られた権利章典を認めている。
ケニアにおいて労働組合を結成する場合は、単純多数原則が尊重され、過半数の従業員が組合を結成したいと考えれば組合を結成することができる。その場合、使用者側は組合の認知を拒否することはできない。使用者側から組合の結成が認知されればすぐに団体交渉に入り、労働協約を締結することとなる。ケニアの労働運動は、闘争心が強く、産業界で問題が起こると必ず組合が立ち上がるという性質を持っている。これまでのところ、平均約25%から35%の賃上げを達成している。
ケニアの組合は産別組合が中心で、登録組合数は36組織あるが、そのうち、34は唯一のナショナルセンターであるCOTUの加盟組織である。未加盟2組織はケニア公務員組合と教職員組合である。加盟費納入人員は150万人で、COTUに払われる組合費は平均1カ月1ドルとなっている。現在の労働者数だが、インフォーマルセクターの労働者が約880万人と最も多い。フォーマルセクターの従業員は主に政府の公務員で210万人、自営業者が70万人いる。2009年のインフレ率は9.9%となっているが、2011年の率はもっと高いと考えられており、30%くらいではないかという予測もあるが、これは原油価格の高騰が原因である。主要通貨へのケニアシリングの価値が低下している。食糧価格も高騰している。

2.労働組合が現在直面している課題

 貧困ライン以下(1日1ドル未満)で暮す人たちが50%に達している。貧困により労働者は生計をたてるためにどのような労働条件でも受け入れてしまい、労働組合への加入を望まない。
一方、企業はアウトソーシング(業務外注)を進めており、臨時雇用の増加が問題となっている。このような短期間雇用者は、憲法では組合に参加する権利が認められているものの、実際には組合に加入できない。1カ月、1週間という短期間、臨時雇用で雇われている人たちが増えている。また、880万人のインフォーマルセクター労働者の組織化も大きな課題である。
政府統計局によると、2010年の失業率は12.7%であるが、青年失業率は40%を超えている。それと並んで深刻な問題がHIV/AIDSである。職場でのHIV/AIDS撲滅に努力してきたが、貧困とHIV/AIDSを撲滅するという努力を同時に行った結果、生計を支えるため多くの児童労働の存在が問題となっている。
現在、地域統合問題が進んでいる。ウガンダ、ブルンジ、ルワンダ、タンザニア、ケニアのアフリカ5カ国が地域的な統合に乗り出している。組合も5カ国で連合体をつくろうという考えが出ているが、指導者選出をどのようにするかが課題となっている。

3.労働組合の取り組み

 労働者に影響を与える重要な問題に政府と使用者の両方を関与させることが必要である。また、新憲法の下に設置された委員会のメンバーとして、労働条件交渉能力だけでなく、社会的対話能力の向上に努めることが求められている。 短期雇用の問題に関しては、大統領令を出すよう要請中で、このような雇用形態を禁止する大統領令が出なければ、3週間以内にストに突入することを検討している(2011年10月21日現在)。一方、880万人のインフォーマルセクターの労働者の組織化については、この課題解決のため、来年の1月に大会を開催予定で、その中でこれからの労働運動をどのように展開するかを論議することとなっている。
新憲法に基づく郡政府の設置により、それぞれの郡で、日本の地方連合会のような形をつくることを検討している。各地方の委員長選びがこれから始まる。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 ケニアには強力な政労使三者機構があり、労働争議が発生した場合には社会的パートナー間で友好的に解決されることが多い。一般的に言えば、我々は政府との誠実な関係を維持している。

5.多国籍企業の状況

 農業、商業部門にいくつかの多国籍企業が存在する。その大半において、組合承認協定と団体交渉による協約を締結している。(農業部門のジェームズ・フィンレーとユニリーバなど)しかし、輸出加工区で操業している企業は依然として労働者の労働組合加入を拒否し続けており、この結果おきる争議は労働裁判所に付託されている。