2001年 ケニアの労働事情

2001年7月25日 講演録

ケニア労働組合中央組織(COTUK)
(ICFTU-AFRO推薦)
リリアンパラトンシパロ

ケニア砂糖プランテーション労働組合中央執行委員

 

ケニア労働組合中央組織(COTUK)について

 COTUKはICFTU-AFROとアフリカ労組統一機構(OATUU)に加盟しています。COTUKの組織人員は35万人、加盟組織の数は30です。

国内の状況

 COTUKは、民主的な労働組合です。現在ケニアにおいて、憲法改正の議論がされています。しばらくの間、ケニアにおいて憲法の見直しが行われていませんでした。政府は、国民や労働組合からも意見を聞いて、憲法の見直しを行っています。これは労働組合にとって有利なプロセスだと思います。労働組合の役員は選挙によって選ばれています。
ケニアは独立して以来、複数政党制というものがありませんでしたが92年から導入されました。今では7つの政党が存在していて、大統領選挙にはそれぞれ7つの政党が候補者を立てているという状態になっています。
ケニアの社会的な状況は幾つかの難しい問題に直面しています。1つには失業率が高く、同時にインフレ率も高いという点、さらには十分な数の住宅がありません。それと、医療施設が足りないという問題があります。インフレ率が高く、そのため多くの国民が貧困な生活を送る状況につながっています。

COTUKの活動方針

 労働者が正当な形で、労働運動から恩恵を受けるのが基本的な理念としてあります。

  1. COTUKの加盟組織と、使用者側との関係を改善すること。
  2. すべての労働者の経済的、社会的状況、条件を改善すること。
  3. 政府のもとに設けられている委員会や審議会に労働者の代表を参加させること。これらの審議会や委員会は、政府主導で行われていて、例えば労働法や制度、その他のさまざまな労働者に関する問題を審議する場になっています。
  4. 組合費を徴収すること。十分な資金を確保して、その資金源を維持すること。
  5. 病気、事故、失業、もしくは、労働争議といったものに関しての救済措置を組合員に対して設けること。例えば療養のための休暇。基本的には団体交渉で、加盟している組織がそれぞれ使用者側と団体交渉をして決めていきます。

 日本の場合は、団体交渉はそれぞれ企業別組合レベルで行われるということですが、ケニアの場合は、産業別レベル、ナショナルセンターに加盟をしている加盟組織レベルで団体交渉が行われています。
行動方針に掲げられている目標を達成するために、幾つかの具体的なキャンペーン活動をいろいろ展開しています。
1つ目は、加盟組織の役員や組合員に十分な教育研修を行うことです。教育研修の内容は、労働関係に関する事項もしくは健康に関する教育も行っています。これらの教育研修は、加盟組織レベルでも行われていますし、もしくはナショナルセンターが直接、その役員や組合員に教育研修をするという2つの方法があります。
2つ目は、組合員によって設立されたコーポラティブ、いわゆる共済組合のようなものを設立する活動です。
3つ目は、国際的な労働組合組織、例えばICFTU-AFROやOATUUと協力をしていくことです。
4つ目は、組合員の数を増やすことです。これは加盟組織を通じて多くの人たちを組織化していくことです。同時に、政府が行っているいろいろな委員会や審議会で労働に関する方針が打ち出されるわけですから、できるだけ多くの代表者をその場に送り込むことがもう1つの活動になっています。
また、COTUKの中にもいろいろな委員会を設けています。1つがコーポラティブ、先ほどの共済組合のような活動を担当している委員会。それから、労使関係の委員会、財政、経済、調査、研究、それから、組織拡大、さらには広報宣伝といったものの委員会があります。
女性局もあります。できるだけ女性労働者を労働運動の中に組み込んでいくことが目的になっています。
5つ目は、我々の加盟組織を通じて、できるだけHIV/エイズに関する関心を一般国民の間で高める行動があります。同時に若者、成年者を対象にしたプログラムも行っています。

ケニア労働組合中央組織(COTUK)
アロイスアグンバオチェンデ

ケニア地方政府労働組合事務局次長

 

労働運動の歴史

 ケニアは1963年に独立しました。それまではイギリスの植民地でした。ですから、独立してからまだ37年しかたっていません。イギリスから独立する前にも幾つかの労働組合はありました。これらはいわゆるクラフトユニオン(職能別組合)でした。その後に、ナショナルセンターが設立され独立の時点で2つのナショナルセンターが存在しました。政府は、2つのナショナルセンターが存在していることに、不満を持っていました。
政治に関して言えば、多くのアフリカ諸国が軍事政権を体験してきましたが、ケニアは幸いなことに軍事政権を経験していません。また、人口はイギリスから独立する前には600万人でしたが、独立後、37年間たった現在は、2,880万人を抱えるようになりました。
COTUKは1965年に設立されました。それ以前は、2つのナショナルセンターがあったわけですが、いろいろ対立する部分が多く、ケニア政府で委員会を設立して、全く新しいナショナルセンターをつくることを決めました。この決定はすべての労働者によって支持され、新しいナショナルセンターが1965年に設立されました。
加盟組織は30です。ただ、COTUKに加盟できない、加盟を禁止された組合がケニアには2つあります。1つはケニア全国教職員組合、もう1つがケニア全国公務員組合です。教職員と公務員の組合は、政府によってCOTUKに加盟をすることを禁止されています。
現在、ケニアには7つの政党があります。これら7つの政党は活発に活動しています。小さい政党を数えれば、約40ほどの政党が存在しています。
政治の最近の動きは、1996年に総選挙がありました。その選挙では、与党であるKANU(ケニア・アフリカ民族同盟)が過半数の議席を占め勝利しました。
現行の憲法は、ケニアがイギリスの植民地であったときに制定されたものであって、植民地政権時代からのものです。そういった事情もあって、現行の憲法に満足している人はあまりいません。そこで、この憲法の見直しを行う委員会が設立されました。おそらく現行の憲法は抜本的に改正されることになるでしょう。
経済の状況は、ほかのアフリカ諸国とほとんど変わらず、貧しい状況にあります。1999年に発表された統計によると、ケニアでは人口の60%が貧困層であると言われています。また、ケニアが独立したときには、GDP成長率は6.8%でしたが、現在は0.3%まで落ち込み、非常によくない状況になっています。
社会的な状況は、基本的に安定しています。しかしながら大きな問題が幾つかあることも否定できません。1つは高い失業率です。また、多くの人が貧困レベルで生活をしています。さらには医療施設が不十分で、いろいろな病気、疾患の問題があります。特にエイズの問題は非常に深刻です。政府にとってもエイズの問題は非常に大きな課題です。もう1つは、児童労働の問題です。そして、児童労働に加わえ、ストリートチルドレンが多く存在し、大都市で起きている強盗行為が問題になっています。
エイズの問題に関しては、COTUKが委員会を設けて、組合員のみならず、地域社会のメンバーに対しても広くいろいろな知識を持ってもらうよう教育活動を行っています。

COTUKの活動方針

 1つは、法律に関連する問題に関して、加盟組織にアドバイスすることが1つの活動になっています。指導部の中でも、一般的な労働者の中でも男女平等が大事だということを教育しています。
もう1つは、正当な労働行為を我々は常に求めていますので、それに関しての取り組みも行っています。これに関しては、ケニア政府が審議会を設立し、ナイロビ大学の専門家、学者、産業裁判所の判事が参加して、正当な労働行為がどういった形で行われるべきかを審議しています。
また、職場における生産性向上について組合員に対して教育しています。また、それらに関しての情報をきちんと組合員に伝えるようにしています。使用者側、労働組合、労働者間でも情報が交換されるように努めています。
具体的な活動は、1つは、積極的に組織を拡大していくことです。世界銀行やIMFの構造調整政策の下で様々な条件が提示され、そのため多くの分野では、人員削減、解雇が行われています。その結果、もちろん労働者の数も減り、組織化された労働者の数も減り、組合員も減っていく状況があります。できるだけ多くの人たちを組織化する、インフォーマルセクターにも組織拡大を広げていくというのが活動の1つです。
もう1つは、政府が打ち出す方針の中に、労働組合もしくは労働運動を異様に規制するようなものがないか、もしくは、労働運動を禁止するようなものがないか、慎重に観察しています。
もう1つは、使用者側もしくは政府と、労働組合の間できちんとした情報の交換が行われているかどうか。もし行われていないのであれば、それを促進するような要求を立てています。今まではなかなか政府は労働組合に対して、現状に関する説明や情報を与えてきませんでした。きちんとした情報を提供するよう活動しています。
最後になりますが、組合の指導者に対しては、IT、情報技術に関しての教育訓練も行っています。指導部だけではなくて、末端の労働者組合員にもそういった教育研修、知識が広がるようにしています。我々が行っている活動が失敗しないで、成功裏に導かれるように努力をしています。

質問

 COTUKのオチエンデさん、あるいは、ICFTU-AFROのリリアンさんにケニアのことについて3点伺いたい。1つは推定の組織率。2つ目、もし組合側の統計がわかれば、失業率など。3 つ目が、現政権とCOTUKの関係について。それと、来年選挙があると思いますが、現政権のKANUを支持していくのかどうか伺いたい。

オチェンデ(COTUK)

 失業率について、人材労働省から出された統計によると、25から30%の労働者は、恒常的な形での仕事についています。残りの70から80%の雇用可能な労働者は、フォーマルセクターではなくて、インフォーマルセクターを出たり入ったりしているという統計が出ています。インフォーマルセクターというのは、通りで行商をする人、行商人などです。こういった人たちがケニアでは多くいます。
政治については、ナショナルセンターや労働組合がある特定の政党を支持することはありません。来年選挙があります。そこでもどこかの政党を支持することはありません。つまり、40ある政党のうちのどこかを支持することはありません。ただ、どの政党が政権に選ばれても、その政権を全面的に支持する、それがナショナルセンターの立場です。
どうしてこういうことをするかというと、ある特定の政党を支持して、その政党が与党にならなかった場合、労働組合や労働者に悪い影響が出てくるかもしれないからです。例えば、野党を支持しているから仕事を失った、失業率が上がったとか、そういったことになるかもしれません。そこで、労働運動におては、組合はある特定の政党は支持しない。どこかの側につくということはしないと決めました。つまり、お金も、人の支援もしないし、出さないということです。
ただ、労働運動のリーダーの中には、議員として参加している人はいます。例えば、COTUKの事務局長は国会議員です。ただ、彼は労働者の代表として送り込まれたのではなくて、一個人として、自分がいる選挙区の人によって選ばれて、その選挙区の住民を代表する議員として選ばれています。
それから、組合員がどの政党を支持するのか、それは全く個人に任せられています。組合の方でも特定の政党を支持しませんし、特定の政党に票を入れなさいということは全くしていません。
COTUKは、どれだけの組合員が登録しているか、数えてはいません。基本的に我々の加盟組織のほうが組織拡大を実際に行っており、その数を把握しています。ケニアでは約500万人が雇用されていると言われています。そのうち、COTUKに加盟をしている組合員は、全国で35万人いると言われています。しかしナショナルセンターとして、把握していません。加盟組織に任せています。