2011年 チャドの労働事情

2011年11月11日 講演録

チャド労働組合同盟(UST)
Mr. トゥーナ・ティエベイェ・アブドゥライェ

 

1. 労働事情(全般)

 チャドの1人当たりのGNPはアフリカ平均が650米ドルであるのに対して、チャドは220米ドルにすぎない。労働人口471万8,218人のうち、44.08%が就労者で、55.02%が未就労者である。そして、就労者の80%が農業従事者である。
近代産業は雇用創出につながっていないのが実情である。近代産業では、民間部門で2万7,000人が就労しているが、石油部門とあわせても全就労者数の5%にすぎない。石油部門は、チャドの輸出の80%を占め、最も収益性が高い。しかし、石油部門の就労者は4,000人にも達していない。
チャドにおいてもインフォーマル部門が非常に大きな位置を占めている。地方から仕事を求めて都会に大量に流れてきた若者たちの雇用の場となっている。また、IMFの構造調整計画によって生じた失業者たちにとっても、このインフォーマル部門が重要な受け皿となっている。
若者や女性の就職は困難を極めている。チャドでは、就労者の22.6%がディーセントワークに就くことができないままである。今後は人口も増える一方であり、今よりも3倍の量の求職者が生まれるのではないかと予想されている。

2. 労働組合が現在直面している課題

 (1)通貨CFAフランの引き下げ
(2)食糧危機
(3)金融危機
(4)エネルギー危機

3. 課題解決に向けた取り組み

 第1に、CFAフランの引き下げに伴う急速なインフレ対策として、労働者の購買力を引き上げるため、最低賃金を3万CFAフランから6万CFAフランへ引き上げる政令をつくる。また、最低賃金の引き上げに伴う新しい賃金体系もつくる。第2に、退職年金支払いの遅れの問題や老齢年金の引き上げの問題にも取り組む。第3にチャドにおける労働基準法の遵守やILOの国際労働基準法の遵守に向けた取り組みも必要である。その他、民主主義の確立、腐敗の撲滅やグッドガバナンスの実現、砂漠化防止が重要と考える。
ここ数年、USTは国内各地で大きな抗議活動を行なっている。この結果、政府も動き、ある一定の成果を得ることができた。第1に、最低賃金を希望どおり6万CFAフランに引き上げることに成功した。第2に、家族手当として子供1人当たり1カ月2,000CFAフランを得ることができた。第3に、民間、公務員の新しい給与体系をつくることができた。第4に、公務員に対して付加年金を払うという約束も政府と交わすことができた。

4. ナショナルセンターと政府との関係

 労働運動も含めて基本的な自由というものがまだチャドでは約束されていない。労働基準法に関しては国内法も国際法も守られていない。腐敗がはびこり、ガバナンスの悪さから期待したほど民主化は進んでいないのが実情である。
USTとしては、進まない民主化の中で、組合員の生活向上を目指すだけではなく、国の正しいあるべき姿に向かわせたいと考えている。そのため、USTは政府に対して率直な意見を提言してきたが、政府はUSTを目の上のたんこぶのように忌み嫌っている。そのため、政府とUSTの関係は残念ながら良い状態にはない。

5. 多国籍企業の進出状況と労使紛争

チャドの石油部門はほとんどが多国籍企業で運営されている。例えば、アメリカのエクソンモービルやシェブロン、マレーシアのペトロナス、中国のCNPC等である。これらの企業は調査、採掘、精製を一貫して行なっている会社である。最近、チャド南部ロゴン・オリエンタル州コメと呼ばれている石油採掘場にあるCIS社で大規模なストライキが行なわれた。その原因は、外国人労働者の賃金が非常に高い一方、地元チャドの労働者の賃金は非常に低いことにあった。このストライキは今年6月から状況は今も変わらずまだ続いている。