2009年 チャドの労働事情

2009年1月28日 講演録

チャド労働組合同盟(UST)
ジェコジンゴト・ンベナジェル

全国司法書記官組合書記長兼USTアドバイザー

 

1. 労働情勢

 チャドは1960年の独立以来、軍部が蜂起し、その体制は常に軍部により支配されてきた。2006年4月には軍部の反体制派が蜂起し、多くの移民や労働者が命を落とした。また、2008年2月には軍の反体制派による2.3事件が起き、最大の被害者を出す戦闘となった。
それ故、チャドでは労働運動と政府との関係は必ずしも安定したものではない。労働組合活動は、組合を過激な野党のように考える与党によって、厳しい統制の下に置かれている。このため、労働運動家や組合員はそれぞれの職場などであらゆる差別にさらされている。また、失業率も高く、若い労働者は組合に加入すると解雇されるのではとの恐れから、労働運動に身を投じることができないでいる。

2. 現在直面している課題

 チャドの労働運動は現在社会経済、政治状況下で多くの問題を抱えている。社会経済上の問題としては、国民の生活条件、労働条件が日増しに悪化していることが挙げられる。賃金は極めて低く、にもかかわらず、生活必需品は高騰し、労働者は毎日をただ生き延びるためだけに生活苦と闘っている。これが労働組合にとって最大の問題である。政治的問題では政治や行政から、労働組合に対する干渉がある(組合の強制的解散、ストを理由とする処罰など)。

3. 課題解決に向けた取り組み

 これらの問題について、労働組合は以下の対策を講じた。

  • 政府に対し建設的な対話を呼びかけているが、残念ながらこれまで実現には至っていない。こうして、対話がないことから2007年5月には無期限ストに突入。このストは3ヶ月続き、公共部門の活動を全て麻痺させ、また、民間部門にも大きな影響を与えた。しかし、政府は国民のことを考慮することはなく、ストによって得られたものは何もなかった。
  • 2008年5月1日のメーデーの際、USTは政府に対して持続的な社会協定を求めて、ソーシャル・ダイアローグへの参加を求める陳情書を提出した。

4. ナショナルセンターと政府の関係

 公式には3つのナショナルセンターが存在する。それらは、チャド労働組合連盟(UST)、チャド労働者自由総連合(CLTT)、そしてチャド労働組合連合(CST)である。しかし、UST以外の2つのナショナルセンターは、USTの活動を妨害するために設立された御用組合のようなものであるので、本来のナショナルセンターとしての資格はUSTにある。
政府は公務員省をして、2007年のストを理由にUSTのNC代表性としての資格を剥奪し、公共部門の運営からも排除した。さらに、政府はUSTへの補助金支給も差し止めた。結局、対話は失敗したのである。
政府に買収された他のナショナルセンターは、労働組合と政府の共存を訴えるため全国キャンペーンを行った。

5. 多国籍企業の進出状況

 チャドは産業が未発達な上、独立以来、今日まで内乱や戦争に疲弊しきった国である。したがって、この分野では2003年に石油開発会社が進出してきたことが特筆される。ESSO、PETRONAS、EVRON、EXON MOBILなどが企業連合を形成し、国の南部で油田開発を行っている。また、石油産業以外では中央アフリカ諸国銀行(BEAC)が進出してきた。