2015年 ガーナの労働事情

2015年10月23日 講演録

ガーナ労働組合会議(GTUC)青年委員会
ガーナ鉱山労働組合
アブドル・ムーミン・バナ

第1副議長

 

1.ガーナの経済状況

 ガーナ経済は、過去30年間、原材料の輸出に依存した経済で著しい経済成長を達成した。しかし、国内総生産(GDP)の成長率を見ると、2013年の7.3%から、2014年には4.2%に低下し、2015年は3.5%と予測されており、経済活動の鈍化している。2013年に1人当たり所得1841ドル(約22万2190円)は2014年には1417ドル(約17万1018円)に低下した。
 ガーナ経済は、為替ドルに左右されやすい経済で、自国通貨安とエネルギー価格の上昇により、インフレが起きている。2013年12月のインフレ率は13.5%であるが、2014年12月には17%に上昇した。2015年の見通しは13.7%となっているが、これが達成できるかどうかは為替の影響が大きい。

2.労働情勢(全般)

 現在の最低賃金は、日額3ドル(約362円)にも満たない。2013年は5.24ガーナ・セディ(2.4ドル=約290円)、2014年は6ガーナ・セディ(1.9ドル=約229円)で、2015年は7ガーナ・セディ(2ドル=約241円)と予測されている。ガーナの特徴として賃金の低さが挙げられる。ガーナの生活水準調査によれば、インフォーマル経済で働く人が多く、労働人口の45%の月収が、平均149.04ガーナ・セディ(約42ドル=約5069円)であり、これは2014年の全国最低賃金の月額162ガーナ・セディ(45.5ドル=約5491円、法定労働時間ではなく月27日以上労働した場合の平均賃金)を下回っている。
 法定労働時間は1日8時間、週40時間だが、インフォーマル経済に従事する多くの人が、1日8時間以上の長時間労働をせざるを得ない。
 労使関係は比較的穏やかであるが、主として不当な労働条件を理由にした数多くの労使紛争が起きている。労使紛争を扱う機関である全国労働委員会が受理した件数は、2007年に686件、2008年に632件、2009年に722件となっており、増加傾向にある。直近のデータは、まだとりまとめられていない。
 ガーナの労働法では、労働者を雇う場合には労働契約が必要であり、特に6カ月以上の場合は書面での契約が必要である。契約書には、採用日、役職、賃金、労働時間、時間外手当、年次休暇、ケガや病気の場合の条件、解雇予告、社会保障、年金制度などの詳細な内容を規定しなければならない。しかし、現実は残念ながら法律がまったく守られていない。雇用主側には、労働者を搾取しようという意図があり、このような違反を取り締まる部署の権限が非常に弱く機能していない。
 正規の仕事があるにもかかわらず、それを契約社員や臨時雇いなどの非正規の仕事に置き代わる状況が広がっている。労働者が非正規の働き方を選択するのではなく、雇用主側に労働者から搾取しようという意図から、こうした実態となっている。
 ガーナの労働市場は、インフォーマルセクターが大きい。インフォーマル経済ではほとんどが独立自営の労働者であり、収入は不安定で、休暇取得の余裕はない。

3.労働組合の直面する課題

 労働組合の組織率(組織化された産業部門で働くフォーマルセクターの労働者の割合)は、1999年には50%と見積もられていたが、2006年までに36%に低下した。経済が成長しない中で、失業者が増え、組織率が低下している。フォーマル経済が縮小する一方、インフォーマル経済は組織化されず、圧倒的に不安定就労で、何のセーフティーネットもない。
 企業別労働組合など、全国的な独立労働組合の乱立がガーナ労働組合会議(GTUC)と、その加盟組織の地位を脅かしている。ガーナの労働法では、企業別組合は独立していなければならないとされている。つまり、問題を抱えていてもナショナルセンターや産業別労働組合の支援を得られない。従業員にとっては労働組合加入のメリットがないため、このような労働組合が、労働組合に対する失望感を拡大している。また、フォーマルセクターに新たに加わる労働者は熟練度が高い場合が多く、既存の労働組合に加入する必要性を感じていないことも多い。
 国際通貨基金(IMF)と世界銀行は、ガーナ政府に新自由主義の導入を押しつけ、労働者を犠牲にして投資家に利する政策が広がってきており、労働者の権利の行使が困難になってきている。
 また、労働組合指導者は基本的に政治色を持ってはならないと見られているため、労働組合指導者が声を上げにくい状況がある。その背景は1950年代の反植民地運動から始まっている。初代エンクルマ首相はガーナ独立のために労働運動を利用し、労働組合の結成を支援する政策をとった。その後多数政党制となり、公平性の観点から労働組合は中立を保つことを大会で決議した。しかし、最近労働組合の中では、どの政党にも距離を置くことが良いのかどうか、労働者側となる政党との距離を縮めるべきか真剣に話し合われている。

4.課題解決への取り組み

 組合員、労働者の権益保護という労働組合本来の任務を果たすいくつかの戦略を駆使している。
 例えば、ガーナ鉱山労働者組合(GMWU)は、物価スライド方式給与を交渉により獲得し、これによって組合員の給与は改善されることになった。
 組織内に青年・女性に特化した委員会をつくり、予算を割り当て機能するものにした。具体的には、住宅ローン、奨学金制度、マイクロファイナンス基金など、青年に限らず組合員に対する福祉活動を、実行している。

*1ドル=120.69円(2015年10月23日現在)