インドネシア労使関係・労働政策セミナー

 11月4日と5日の2日間にわたり、インドネシア共和国西ジャワ州ブカシ市において、国際労働財団(JILAF)とインドネシア労働組合総連合(CITU)との共催で、「CITU/JILAF労使関係・労働政策セミナー」を開催した。
 これまで首都ジャカルタ市を中心に開催してきた本セミナーは、今回、工業都市が点在し、多くの日系企業・事業所も拠点とするジャカルタの東隣ブカシ市で行われた。
 セミナーには、在インドネシア日本国大使館からの来賓、労働移住省、使用者団体等からの講師を含む計80人(CITU地方支部/加盟組織役員(うち女性参加者も25人))が参加した。また、開催地域を反映し、日系企業に所属する組合員参加者も30余人を数えた。
 開会に際しての挨拶で、主催者組織を代表しCITUのアリ・アクバル副会長は、「日系企業においても、他国資本との程度の差こそあれ、労使間の問題は皆無ではない」と述べ、またJILAFの團野久茂専務理事は、「資源を活かし、成長の過程にあるインドネシアは、次は内需による成長が期待される。一方、労使関係や生活水準向上でなお課題があり、関連法制度の構築も社会的要請となっている」と述べた。来賓の本多信一郎在インドネシア日本国大使館一等書記官は、「経済発展に労働組合の役割は重要。日本も過去の激しい労使対立の時代を乗り越え、今日の労使関係を築いた。本セミナーは時宜を得たもの」と挨拶した。
 つづいて講義およびパネルディスカッションが行われ、それぞれの枠で参加者からの発言があった。
 ルスディCITU事務局長は講義で、「雇用環境と関連施策に対応した労働組合の役割」として、労働組合が関係する政策は賃金だけではなく、社会保障、会社の資力と投資、金融の動き、グローバルサプライチェーン等の関連産業政策について見わたす必要性について説明し、対立だけではないと訴えた。
 團野専務理事の講義では、「戦後日本労働運動の形成と労使関係の特質」と題し、生産性向上への貢献を通じた建設的労使関係の構築や雇用安定の取り組みの重要性とともに、日本がたどった労使関係の歴史的経過を昨今のインドネシアでの労使関係と照らし合わせて概説し、「単に『賃金上昇』を要求して『物価上昇』を招いては意味がなく、労働者の生活全般を見据えた政策立案と要求が必要」とした。
 本講義に対しては、日系企業組合員からの発言が複数あり、主に「強大な資本(使用者側)によってコントロールされ使用者寄りになっている政府に対して労働者は何ができるのか」や、「日本では大きなデモなど生活改善闘争は行われていないのか」「JILAFには、日本の本社に働きかける、あるいは日本の組合と繋いでほしい」等が述べられた。これらに対して「三者対話は重要であり、その合議体の設置を要求すべき」「日本でも労働組合による大きなアクションはあるが、これと労使関係の安定は別であり、闘争は協議を尽くした後とすべき」等と応じた。日系企業参加者の関心の高さが顕れた質疑・意見交換となった。
 次に、地元で工業用地開発会社に勤務する小尾吉弘ジャカルタ・ジャパンクラブ(JJC)専門委委員より、「公平な分配と持続的経済発展」と題した講義が行われた。「労使対話の重要性」が強調され、その中での「労働組合の役割」等のポイントについて示された。
 労働移住省・ワヒュー年金局長からは、本年7月より開始された年金制度についてのプレゼンテーションが行われ、新規発布の関連法令(2015年政令45号、46号他)にかかわって、制度の構造と運用について説明が行われた。
 1日目の最後のプログラムとして、團野専務理事、ソフヤンCITU副会長、ハルジョノ・インドネシア経営者連盟(APINDO)専門家の3人により、「職場環境改善」に関するパネル討論が行われた。討論では、当地で7月に発生した日本資本の薬粧会社の新規稼働工場での爆発死傷災害も話題としても取り上げられていた。團野専務理事は、日常からの労使間での環境改善にむけた取り組みの重要性を訴えた。
 2日目は、「持続的な雇用の保障」「年金制度開始と労働組合の対応」「職場環境改善」をテーマに3分科会に別れ討論し、その後全体会で討論内容を発表した。セミナー総括で、團野専務理事は「資金と設備だけで企業は成立せず、継続雇用と事業の発展も労働者との協力で初めてなしうる」ことや、「対話を基礎とした日本の職場環境改善の機能と取り組み」「年金の財源確保」について、その重要性を訴えた。アクバル副会長は、「本セミナーは、その内容の充実さと参加者の議論参加の観点から3日間にすべきで、首都圏だけではなく地方の組合員に対しても参加機会がほしい」としてセミナーを締めくくった。

日程

月日内容
11月04日セミナー1日目
11月05日セミナー2日目

参加者の様子

開会あいさつ

ルスディCITU事務局長

小尾委員講義

労働移民省・ワヒュー局長

パネル討論の様子

「持続的雇用保障」分科会の様子