タイ労使関係・労働政策セミナー

 国際労働財団(JILAF)は、ITUCタイ協議会(ITUC-TC)の4ナショナルセンター(SERC、LCT、TTUC、NCPE)*1との共催のもと、インダストリオール(TEAM、TWFT、ALCT)*2の参加も得つつ9月14~15日、タイ・バンコクで「労使関係・労働政策セミナー」を開催し、各組織の労働組合リーダー75人が参加した。
 セミナーでは、「グローバル化とアセアン共同体(AEC)発足に対応する労働組合の役割~建設的労使関係構築の重要性~」を主要テーマに設定し、労働組合、政府関係者、使用者団体、学識者それぞれの立場から、グローバル化がもたらす影響やその対応などに関する発表などがあった。
 JILAFからは、「健全な労使関係の構築による雇用と生活条件の向上~戦後の日本労働運動の経過と労使関係の特質~」と題し、グローバル化がもたらす労働者を取り巻く変化・変容などの情勢認識を示したうえで、日本の労使関係の変遷・経験(労使協議による協力と団体交渉による対立を調和的に配置)がアジア諸国における多国籍企業を含む労使関係の安定において有用と説くとともに、①組合費収入に基づく基本的組織運営②インフォーマルセクター労働者を含む組織化・組織拡大③ナショナルセンター間連携・労働運動の結集④社会や組合員からの運動への共感――などの重要性について、経験談を交えつつ講演した。
 次に、タイ商務省・チョーティマー国際通商交渉局アセアン事務局長より、「AECに向けて」と題する特別講義があり、アセアン憲章に基づき2015年12月発足予定のAEC(ASEAN Economic Community)、APSC(ASEAN Political-Security Community)、ASCC(ASEAN Socio-Cultural Community)鼎立の基本理念・タイ政府の取り組みを概説したうえで、AEC発足に伴う単一市場・単一生産拠点に向けた、①輸入関税の廃止②サービス事業の自由化、投資障壁の低減③熟練労働流動(医師、歯科医、看護師、会計士、建築士、測量技師、エンジニア、観光)の自由化における効果と課題、政府としての戦略――などを双方向型で解説した。
 参加者からは、「アセアンのめざすべき方向性が包括的に習得できた」との感想があった一方、「AEC発足に伴い、タイ政府は国益追求や投資家重視に傾化するあまり、これまで以上に労働者軽視の姿勢を強めるのではないか」との厳しい意見も提起された。
 その後、タマサート・サックディナー大学教授より、「グローバリゼーション・AEC:労働運動の役割」と銘打った労働側視点の講話があり、旧宗主国により異なる労使関係(総じて民主主義・労働運動の根付きが脆弱)やAECにより自由貿易化される優先9分野(農産物加工、漁業、木製品、ゴム製品、繊維・衣類、電機、自動車、ヘルスケア、ICT技術)、非熟練(単純)労働力の段階的な移動自由化に伴う懸案(タイ人労働者の就労困難、賃金などの低下、格差拡大)などを共有した。そのうえで、グローバル化に対峙可能なタイの労働運動の集約化・組織化の促進(現在の推定組織率2.7%)・組合人材育成を通じた組織強化や相互扶助制度の確立、産業別交渉力の強化とナショナルセンター統一化の重要性など、闘争中心型運動からの脱却と新たな運動創造(社会の共感を得つつ求心力・組織力を高める)に向けた戦略の一端を識者の立場から詳述した。
 参加者から、物価上昇と最低賃金(全国一律300バーツ/日)との相関、アセアン各国の労働運動の現状と新たな労働運動創造に向けた具体案、インフォーマルセクター労働者の課題などに関する活発な質疑が提起された。前述の講演をふまえ、「グローバリゼーションにおける建設的労使関係の構築と組合運動の強化・発展に向けて」にかかるグループ討議・行動計画の作成・相互発表を行ない、セミナーを終了した。

*1 ITUC-TC加盟4ナショナルセンター
・国営企業労働連盟(SERC)
・タイ労働会議(LCT)
・タイ労働組合会議(TTUC)
・全国民間産業労働者会議(NCPE)

*2 インダストリオール加盟組織
・タイ電子・電気機器・自動車・金属労働組合連合会(TEAM)
・タイ繊維・被服・皮革労働組合連盟(TWFT)
・タイ自動車労働組合会議(ALCT)

日程

月日内容
09月14日労使関係・労働政策セミナー1日目
09月15日労使関係・労働政策セミナー2日目

参加者の様子

JILAFによる講演の様子

商務省による講演の様子

タマサート大学教授による講演の様子