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No.480(2017/11/1)
電通の過労死、罰金わずかの$4,400

 日本の大手広告会社、電通の過労死問題の罰金がわずか¥500,000($4,400)という判決が東京地裁で出た。
 電通の新入社員、高橋まつりさんが24歳で自殺し、過労死によると認定された問題は日本全国に大きな反響を呼び、労働法改定を叫ぶ声を広げたが、同じ問題が今週、公共放送、NHKの記者(31歳)の4年前の過労死について明らかにされた。
 検察は、電通の高橋さん他3名の2015年10月―12月の過重労働について起訴したが、現行労働法は軽微な罰金しか認めていない。高橋さんの母親も「もっと重い罰金への法改正を望む。同様の悲劇が日本全国、全産業、各企業で起きている」と述べている。

 日本政府によると、昨年度過労死と認定された件数は前年より2件増加の191件だとされるが、阿部政権は今年、残業制限やパート・契約労働者の賃金引き上げなど雇用に関する抜本的改革への行動を公約した。多くの会社でも問題改善を約束しているが、これを疑問視する労働者も多い。「会社は改革を進めていると言うが、私の残業時間は以前と変わらない。土曜日も働く。仕事量を減らさなければ残業は減らない。上司に怒られるので名前は出さないでください」とある38歳の女性銀行員は語る。

9月の米国雇用、7年間で初めて減少、そして最近の雇用傾向

 9月の米国の雇用は7年間で初めて33,000人の減少を記録したが、理由はハリケーンの影響とみられる。他方、失業率は8月の4.4%から4.2%へと改善し、時間給も0.45%改善、前年同月からは2.9%のプラスとなった。

 9月について経済専門家は「雇用の減少はハリケーンによるもので、特にフロリダやテキサス州のレジャー・観光産業に強く出たが、長期的には心配ない。賃金上昇や失業率減も異常値だ。多くの低賃金労働者が一時解雇され、平均賃金が上がった。失業率も多分同じだろう。間もなく通常に戻る。経済成長は9年目に入った」と語る。
 他方、トランプ大統領は「証券市場は過去最高を記録し、失業率は16年来の最低。共和党提案の減税で経済成長は加速する」と公言する。

 失業率については今年1月の4.8%からも可なり改善されているが、それでも多くの潜在失業者が存在する。今年全体の賃金上昇が2.5%を数える中、中位数以下の世帯所得は依然として2000年を下回っている。

 その一方、地域によっては労働力不足による賃金上昇があり、大手小売業“ターゲット”は基本給を現在の$10から州最低賃金ないしそれを上回る$11に値上げすると発表した。会社によっては退職者や家庭の主婦、障害者などにも賃上げで就職を勧誘するところが出ており、即日の就職面接に応じるところも多い。現行従業員にボーナスを出して引き留めを図る会社もみられる。アマゾンに次ぐEコマースの大手、“ラジアル”でも25倉庫で35%、7,000名の増員を計画して、賃金も$12から$16、2時間の範囲では無料通勤バスも運行する。熟練労働者への需要はさらに高い。モバイル・ショッピング・アプリを販売するデンバーの会社はエンジニアーやデータ処理の労働者に6桁のサラリーを提供し、採用紹介者には$1,000を出している。

 これに反して、労働市場の弱い個所では需要が低賃金労働に多く集まり、長期雇用が無い。労働力に占める成人の率は過去最低であり、景気後退時に失職ないし就職できなかった人たちの数は横ばいのままである。この点は、ベイビー・ブーマーの大量退職や学生の留年、若者の職業訓練延長などが原因と言われたが、問題なのは25歳―54歳の中心年齢に見られる労働力減少である。いま、米国ではこの年齢層の成人男子の半数が毎日鎮痛薬を服用していると言われるが、乱用が社会問題になっているオピオイド鎮痛薬服用の高い場所ほど労働力参加率が低く、参加率低下の20%が薬物の影響と見る人もいる。薬物中毒ではマイケル・ジャクソン氏と同様に、腰を痛めた人気歌手のプリンス氏が去る4月にその服用で急死した。

 同じ年齢層の成人女性の参加率も1999年以来低下しているが、景気後退時に見られた減少傾向には歯止めがかかっており、男性の低下に対して女性には改善がみられる。先進諸外国に見られるような有給産休や児童手当の改善が進めば、女性の改善はさらに進むと見られる。また低学歴の高卒男性の雇用見通しが依然として暗い中で、同学歴の中心年齢の女性には改善が見られ、失業した女性に就職希望者が増加していると思われる。

フットボール選手の国歌斉唱時の不起立問題、労働法は解雇を容認せず

 米国NFLプロ・フットボール・リーグの試合開始時に、選手たちがトランプ政権の人種差別に抗議して、国歌斉唱時に起立せず、ひざまずいた問題でトランプ大統領は選手の解雇を要求した。同時に試合を観戦したペンス副大統領にも退場を求め、退場した副大統領は「我が国の兵士、国旗、国歌に不敬を示すいかなる出来ごとも尊重しない」と述べた。
 10月8日に副大統領の地元、インディアナポリス・コルツと対戦したサンフランシスコ・49ナーズの選手10数名が“ひざまずき抗議”を行った。

 この問題は「雇用に関する諸問題を提起するのに、労働者はどの程度まで団結行動できるか?」の疑問を投げかけている。連邦労働法は原則的には、「労働者を集め、交渉を要求するなどかなりの程度まで行動できる。労働者は組合の有無に関係なく、職場においてお互いに助け合うための“共同行動”が出来る」とされ、各種判例は使用者に対する苦情を社会メディアに乗せて公的に政治的にも訴えることも認めている。

 NFLリーグ運用規約は「国歌斉唱時に選手はコート側面に起立する」と定めているが、「ひざまずいてはならない」とは定めていない。多くの専門家も「雇用面での連帯を示すために共同のジェスチュア、ないしそうした行動を法律は認めている」と述べる。ハーバード大学のザックス教授も「自分たちを守るという従来組織を持たない労働者は新たな防衛組織を求めている。新しい形は珍奇に見えるかもしれないが、、、」と語る。因みにNFLに労働組合はない。

 連邦労働法の保護を受けるには「従業員の行動が同僚労働者との“共同行動”であり、問題が仕事に関連しており、適切な手段により遂行されること」とされる。つまり、財産の破壊や暴力的脅しは出来ない。(労働協約でストライキ禁止条項がある場合も同様である)
1978年の最高裁判例では「仕事に関連する政治問題について、労働者は政治主張を行う権利がある」と定め、2008年の全国労働関係委員会(NLRB)でも「議会で審議中の移民法について労働者は賛成・反対の態度を公的に表明できる。但し仕事の怠業は出来ない」と規定した。

 各種判例は、連邦労働法が労働組合のない労働者にも集団訴訟の権利を保障していると認めているが、その権利を雇用契約時に放棄させることが出来るかどうかには議論が分かれている。トランプ政権はそれが出来るとの見解にある。最高裁、および全国労働関係委員会(NLRB)の判事が共和党指名多数となった現状で、トランプ見解に判決が傾く可能性もある。他方、リーブマンNLRB元議長は「人は本能的に他人が自分に同調してくれるよう求めている。その点で社会メディア、ツイッターの発達、違う形の社会的連帯の進化には目覚ましいものがあり、連帯は広がるだろう」と指摘する。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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