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No.469(2017/8/3)
韓国、新大統領のもと、非正規など雇用改革の検討すすむ
~年内にも改革のプランと行動計画の策定へ~

 韓国では、前職の朴恩恵(パク・ウネ)氏の辞任に伴う選挙により、5月10日に文在寅(ムン・ジェイン)氏が第19代大統領に就任した。文氏は、選挙戦での公約で、雇用対策の重視や非正規問題の解決などを掲げていた。そして、大統領就任の当日、「雇用委員会」の設置を表明し、深刻化する非正規労働や若年者雇用の問題などに挑戦する姿勢を示した。同委員会は、年内にも改革のプランと行動計画をまとめる方向であり、内外の注目を集めている。

 文大統領は、就任の2日目に、はじめての現地視察先として、仁川(インチョン)国際空港を訪れた。同空港は韓国の非正規労働問題のシンボルとして知られており、マスコミも大きく報道した。仁川空港は、サービスの好感度では世界のトップクラスであり、韓国を代表する公的事業の一つであるが、一万人以上といわれるスタッフの約8割は非正規職であり、労働者の不満や世論からの批判の対象となっている。視察を終えた大統領は、公約である「非正規労働ゼロ」の実現に向け、公的事業や政府部門で先行させると表明した。

 韓国の非正規労働問題は深刻さを増している。経済社会のグローバル化がすすむなかで、性別や年齢を超えて拡大し、全労働者に占める割合は4割を超えており、零細な自営型労働を含めれば55%という分析(労働側推計)もある。無年金あるいは低水準の年金受給者の問題とも合わせて、労働者やその家族の貧困化の大きな要因とされる。また、日本に比べて若年者を解雇しやすい法制度のもとで、青年層の失業が拡大しており、大卒を含む若い社員の解雇が社会問題となっている

 雇用改革の検討プロセスも注目される。韓国では、1990年代末の経済危機の際に、金大中大統領が「労使政委員会」を設置した。この委員会は、労使の激しい対立を経ながらも成果を上げてきた。しかし、朴恩恵政権時代には、雇用対策について一定のコンセンサスに漕ぎつけたものの、その後、実効ある政策を展開することができなかった。今回の「雇用委員会」は、これに代わるものとして設置されており、政労使の代表に加えて、非正規労働者と青年層の代表、専門家などを含む30人が参加している。

 「雇用委員会」は、6月21日の初回会合以降、労使団体や企業関係者との意見交換を続けており、6月下旬に、中央経済団体(全総)、中小企業団体、二つの中央労働団体と相次いで対話を行った。また、7月には商工団体、公共企業の全国組織、そして「雇用15大企業との意見交換が行なわれている。このなかで、経営側は正規労働の正規化は過度なコストをもたらすとして懸念を表明、労働側は韓国労総(FKTU)は基本的に支持の立場であるが、民主労総(KCTU)は、非正規労働者の賃金格差を正面からとらえていないとしてやや距離を置く姿勢である。

 今回の韓国版「働き方改革」は、非正規労働者や青年の雇用問題など労働問題の根幹に切り込もうとするものである。「雇用委員会」の事務局は、8月末から9月はじめにかけて課題と方向性を整理し、年内にも改革のプラント行動計画を取りまとめたいとしている。今回の改革が成功するか否かは、文大統領への高い支持が続くなかで、世論の支持と関係者のコンセンサスを得て、具体的な施策の実施に踏み切れるか否か、その「速度」にかかっているとも云えよう。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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