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No.462(2017/7/5)
カタールの外国人労働者、サウジなどの国交断絶でさらなる苦境に
~ITUC(国際労働組合総連合)などが処遇の改善を求める~
カタールの外国人労働者

 中東の湾岸諸国の一つであるカタールの産業は、建設業やホームヘルパーなどの労働力の多くをインド、バングラデシュ、ネパールなどからの外国人労働者に依存している。しかし、その労働条件や職場環境には大きな問題があることから、ITUC(国際労働組合総連合)や人権団体などが改善を求めてきた。さらに6月5日には、サウジアラビア、エジプトなど中東5カ国が、イランとの関係などをめぐり国交を断絶したことから、カタールの社会には物価上昇や建設事業の遅れなどの影響がみられ、国民生活への打撃となっている。なかでも、弱い立場にある外国人労働者は、食料品や生活用品が大幅に値上がりしたことにより、生活苦を訴えるものが増加している。

 カタールの労働問題が国際的な注目を集めている理由の一つは、2010年12月に、2022年のサッカー・FIFAワールドカップ(W杯)の開催国に選ばれたことにある。それ以降、同国では、スポーツ関連施設やホテルの建設、都市環境の整備などの計画が続々と発表され、今日では建設ブームが起きている。しかし、その作業を担う外国人労働者の処遇については、「カファラ制度」と呼ばれる旧来の労働者管理制度が、「現代の奴隷制度」といわれるような人権問題を招いていた。これに対して、カタール政府は、昨年12月、この制度の廃止を表明し、労働大臣は「わが国で働く210万人の外国人労働者が雇用契約の下で働くことになる」と述べた。

 カタールの「カファラ制度」とは、外国人労働者を対象とするもので、事業主が労働者の就労に際して国内での身元保証役となり住居の指定も行い、同時に労働者の転職や出国には事業主の許可を必要とする。このため、外国人労働者のパスポートを引受人が取り上げて管理することも横行している。従来の「カファラ制度」でもパスポートの没収は禁止されていたが、新しい制度では、罰金額を約2.5倍に引き上げて取締まりを強めるとしている。この改正について、ITUCや人権団体は、従来の制度の見直しに留まっており、今後の同国の動向を厳しくウオッチするとしている。

 そして、サウジアラビアなどによる国交断絶が、これらの状況に追い打ちをかけている。近隣諸国からの食料品、生活用品などの輸入が停止され、現在ではトルコやイランなどからの輸入で代替しているが、空輸のコストなどによる物価上昇、物資の不足による建設作業の遅れがみられる。帰国を希望する外国人労働者も増えているがその多くには許可が出されていない。ITUCのシャラン・バロー書記長は、今回の事態を受け、「カタールの政府は労働者の権利の擁護と帰国の保証を行うべきであり、同国に進出している外国企業は社会的責任を果たすべきである」と呼びかけた。

 カタールは日本が最大の輸出先であり、世界第三位の埋蔵量を持つLNG(液化天然ガス)は日本のエネルギー供給を支えている。また、首都ドーハは、1993年10月にW杯・アジア地区最終予選で日本がほぼ勝利を手中にしながら予選敗退した「ドーハの悲劇」でも知られる。わが国の関連企業や関係者が、カタールとその外国人労働者の今日の状況を理解し、緊張の続くこの地域での適切な対応をはかることが期待される。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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