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No.454(2017/6/1)
ブラジルで21年ぶりのゼネスト
〜テメル政権の年金制度改革と労働の規制緩和などに抗議〜
ブラジルCUTのデモ

 4月28日、ブラジルでは21年ぶりとなるゼネストが行われた。労働組合は、テメル政権の年金制度改革と労働規制の緩和などに強く反発、最大都市のサンパウロだけではなく、首都ブラジリア、リオデジャネイロをはじめ各地方都市でもストライキ、デモなど各種の行動が広がった。サンパウロでは、鉄道やバスなどの交通機関をはじめ幅広い産業でストが行われ、公立学校や銀行が閉鎖されたほか、デモ隊と治安部隊の衝突もみられた。労組の最大組織、CUT(ブラジル中央統一労働組合)のV.F.モラエス会長は、「ブラジル史上最大のストライキを行った。今後も年金と労働法制の改悪に立ち向かう」としている。

 ブラジルでのゼネストは1996年以来のことである。前回は中道右派(社会民主党:PSDB)のカルトーゾ政権時代の新自由主義的政策への反発によるものであった。その後、ルーラ氏、ルセフ氏と二代続いた労働者党政権(PT:2002〜2016年)の下ではゼネストは行われていない。その後、昨年8月末、ルセフ前大統領の罷免を受けて、中道右派(民主労働党:PMDB)の現テメル政権に移行したのだが、今回のストライキを機に、労使関係がかつてのような対立型に傾斜することが懸念されている。

 今回のゼネストでは労働組合が年金制度の見直しに激しく抗議している。例えば、これまでは労働者が所定の納付期間をクリアすれば、50歳代で年金を受給もできたのだが、政府の案では、納付期間にかかわらず支給開始の年齢を60歳以上としている。労働分野では、アウトソーシング(業務の外部請負化)の大幅な拡大が示されており、労働組合は歯止めのない雇用の非正規化を招くと強く懸念する。さらに、政権の腐敗問題も労働者や市民の反発を招いている。この間、閣僚や与党幹部のスキャンダルが相次いだが、先月(4月)にはテルメ大統領自身に建設会社大手との間の疑惑が持ち上がり、支持率も大幅に低下している。

 ブラジルの経済情勢では深刻な不況が続いている。国家統計局(IBGE)がこの3月に発表した経済統計によれば、2016年のGDP(国民総生産)はマイナス3.6%となり、2015年のマイナス3.8%に続いて、統計史上初めて、二年連続のマイナス成長を記録した。昨年は、不況の続く建設業、製造業、サービス業などだけではなく、それまでは比較的好調であった農牧業、鉱業の分野もマイナスに転じており、過去1世紀で最悪の景気後退ともいわれている。

 ブラジル政府の財政も急速に悪化している。地方などを含む政府の赤字は2014年から大きく拡大、2017年度には歳入不足が2千億ドルに達して政府機関の一部閉鎖も取り沙汰され、また、債務残高はGDP比も80%を超えると予想されている。テメル政権は、これに対し、国の経済と財政の抜本的な改革が必要として、年金、労働分野の改革のみならず、各種政府支出の削減や公共事業の縮小を含む大幅な緊縮政策を打ち出している。ゼネストの影響を問われたある経済閣僚は、「ブラジルを蘇らせるためには大規模な構造改革が必要であり、国会で関連法案を実現させる方針に変わりはない」としている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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