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No.453(2017/5/15)
国際労働法社会保障法協会アジア地域会議・セミナー、東京で開催
~アジアの労働法と労使関係などについて13カ国、18名の若手研究者も参加し報告と討論~

 3月27日から29日まで、東京の労働政策研究研修機構(JILPT)の国際会議室で、国際労働法社会保障法協会(ISLSSL)のアジア地域会議が開催された。また同会議に続いて、JILPT東京比較労働政策セミナーが開かれた。それらの会合には、ISLSSLのティジアーノ・トレウ会長(イタリア)をはじめとする役員が10名、招待講演者等が7名、また今回はアジアを中心とする13カ国の若手研究者が参加した。日本からは労働法・社会保障法の研究者、行政等関係者、実務家等約40人が参加した。

 会合の初日はISLSSLアジア地域会議であり、菅野和夫JILPT理事長(ISLSSL名誉会長)の挨拶で開会、荒木尚志東大教授(ISLSSL)の基調報告が行われた。続いて特別講義と討論に入り、ISLSSL会長、康長健副会長(アジア地域・台湾)、招待講演者のドイツ・ゲーテ大学のマンフレッド・ワイス名誉教授から報告があり、セミナー参加者を含めての意見交換が行なわれた。なお、地域会議としての報告と意見交換では、今後の運営についてさらに論議をすすめることを確認した。

 二日目からは上記のJILPT東京セミナーに入り、5人の講師の講義と各国報告、そして討論が行われた。講義と討論では労働のデジタル化が一つの焦点であり、「インダストリー4.0の労働市場と労働法への影響」(台湾)、「デジタル・プラットフォームとギグ・エコノミー(※)への労働法の適用」(豪州)について報告と提起が行われた。このほか、中国について、労働改革と争議(米国)、積極的労働政策(中国)、また日本からは濱口桂一朗JILPT所長により日本の労使紛争解決に関する比較研究が報告された。

 各国報告では13カ国、18名の労働法、労働政策研究者からそれぞれ興味深い研究成果の発表があった。例えば、フィリピン大学の労使関係研究者からは、同国で深刻化する短期雇用の多用による雇用問題が報告された。最近、ドウテルテ大統領は雇用安定のため労働契約の短期化の禁止を指示したが、経営者が高コスト化を避けて雇用を縮小する恐れも強く、産業特性を分析して現実的に対処すべきというものである。ミャンマーやカンボジアなどの後発開発途上国からは企業の法律家が参加し、最新の状況と研究成果が報告され熱心な質疑応答が行われた。

 国際労働法社会保障法協会(ISLSSL)は世界の労働法、社会保障法の研究者による国際的な協会である。そのアジア地域会議は、2005年の台北での会合以降、今回まで開催がなく12年ぶりの会合である。アジアの労働法と労使関係が大きな動きを見せている今日、この会議のいわば「復活」が東京で実現した意義は大きい。このテーマで多数の若手研究者が参加したセミナーは初めてであるが、関係者は、来年以降も継続したいとしていた。わが国の研究者、実務家との交流を含め、会合の成果がさらに広がることを期待したい。

※ギグエコノミー(Gig economy):インターネットによる単発の仕事受注やそれで成り立つビジネス形態のこと。例としてウーバー等の配車やAirbnb等のホテル仲介など。今年3月のOECDの労働の未来国際セミナーでも取上げられた。本来はその場限りロック演奏などを指す言葉である。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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