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No.444(2017/3/6)
コロンビア内戦停止とFARC兵士の社会復帰

 半世紀にわたる内戦で20万人以上が殺害され、労働組合幹部も数千人が殺されて、国際労働機関(ILO)から世界最悪とも指定されたコロンビアだが、昨年反乱軍との停戦が実現して、反乱軍兵士は武装を解除しつつ、市民生活に順応する日々を送っている。
 ラパスも全国に散在するそうした場所の一つだが、ここに屈強な若者80名が暮らしている。山中のジャングルから出て軍服から平服に着替え、街中で暮らすようになった反乱軍元隊長のアルタミランダさんは「我々は52年間、ハンモックで暮らしてきた。今や小さなプレハブの家だが、そこで暮らすことになった」と話す。FARC(コロンビア革命軍)の元隊員たち7,000名は投降して国連派遣軍に兵器を渡し、昔のニカラグアやエル・サルバドルがそうであったように、左翼の政治勢力としての新たな活動を始めようとしている。

 コロンビアの和平停戦協定はいったん国民投票で否決されながら、サントス大統領がノーベル平和賞を受賞し、停戦協定に若干の修正後、国会承認を受けて実現した。しかし国民投票による否決の苦さは残っており、来年の選挙でサントス大統領が退任するとなれば、事態がどう動くかわからない不安をはらんでいる。
 このラパスでも投票の40%が反対であり、今や隣人として暮らす元兵士たちへの思いも複雑である。協定に反対したフエンテス医師は「許したい気持ちはあるが、当時の暴力は忘れることが出来ない。弟も殺された。これからは兵士たちの行動次第だ」と語る。
 兵士たちの住環境はかなり出来てきており、ブルドーザーによる整地で小さな家やサッカー場など、再び家族と暮らせるよう社会復帰への準備が進められている。兵士の住居地域周辺はコロンビア軍が警護に当たっており、国連軍も兵器回収を担当している。

 内戦が終わった今、兵士たちは今後の生活をどうするのか? 元の村に帰って農業に従事するのか。政治活動に入るのか。高収入が期待できる政治活動を考える者も多いが、何の学校教育も無かった彼らに自信はない。革命軍発足の動機となった大地主たちからの農地解放を求めて、原点に戻った活動をどこまで平和裏に徹底し、国民の共感を得られるのか?

 言えることは、まずこのラパスで住民の疑心を解くことだ。ここでも多くの住民が殺され、1997年には町長も殺害された。この町はサントス大統領による停戦実施発表の後、FARCが兵士たちの住まいの場所として選定したものだが、キンテロ町助役は「何の相談もなく決められ、ショックだ」と語る。多くの町民が猛烈に反対し、兵士たちには「歓迎しない。他へ移れ」とあからさまに言うものもいる。
 停戦合意が国民投票で否決された後、FARCの司令官は「再交渉に応じる。戦争には戻らない」と公約したが、アルタミランダ元隊長も住民数百人の前でみんなに謝罪した。
 反対の先頭に立っていた右派民主センターの有力指導者も「和平のほかに選択の余地がないと思うが、彼らが許せない」と語る。武装解除活動の国連派遣軍が反乱兵士とダンスしたビデオを見て、怒った住民が国連関係者4名を解雇させた騒ぎも起きた。

 一方、政府は単なる武装解除を超えて、遠隔のジャングル沿岸など未開拓地の開発も考慮に入れているが、そこに政府関係者の姿を見ることはない。FARC兵士の居住地には電気もなく、水道もない。ラパス郊外の元FARC駐屯地には、未だに数名の兵士が残って午前4時30分に起床して、停戦による教育は受けているものの、銃を肩にキャンプ地を徘徊している。しかし、若い兵士が家族と再会して涙を流す姿も見られた。
 他方、インタビューされた大半の兵士は「FARCが家族だ。FARCがどうなるのかわからないが、そこに残りたい。」と話す。ある32歳の女性兵士だが「13歳の時に家を出て反乱軍に入った。そこしか教育を受ける場所がなかった。家族と連絡は取っていないが、会うつもりです。新しい生活になじむのが大変だ。マットレスで眠っても良く眠れない。こういう生活に慣れていない。でも少しづつやっています」と話してくれた。

ワシントンのトランプ・ホテルに労働組合誕生、利益相反の疑い

 ホワイトハウスから数ブロック離れたワシントン・トランプ・ホテルの清掃、客室関係の従業員40名が大統領就任10日後の31日、UNITE/HERE労組ローカル25(ワシントン地域に6,500名組合員)への加入を決めた。
 トランプ・ホテルについては昨年ラス・ベガスでも労働組合が結成されたが、大統領はホテルの経営を子供たちに任せつつも、所有権は手放そうとしない。大統領は労働争議を審査する全国労働関係委員会(NLRB)委員の任命権を握っており、憲法が禁じる利益相反の疑いが強まっている。
 大統領は今月、幾人かの労組幹部と懇談会を持ち、AFL-CIO会長とも会談を持つなど融和姿勢を見せてはいるが、当のUNITE/HEREとの会談はなく、ラス・ベガスでは労使交渉を求めてのデモ行進、ワシントンでは新結成の労組による待遇改善要求、他の各地のトランプ・ホテルでも労組結成の動きに遭遇している。
 UNITE/HEREはトランプ・ホテル全般を網羅する5年の労働協約を交渉して、清掃や皿洗い労働者に年収$52,000を確保したいとしている。
 こうした中で先週、自由派の市民団体が「トランプ大統領は外国政府からの支払いやギフトを禁じる憲法に違反した」とする訴えを行った。トランプ側弁護士は「ホテルの宿泊費や公正な市場価格取引には憲法の禁止規定は適用されない。外国との取引で得た利益やホテルへのギフトなどは財務省に渡している」と説明したが、そうした取引や支払いの明細は一切無い。一方、司法省は「提訴内容を審査しており、適宜回答する」と述べている。

世界最大のチリ銅山でストライキ

 2月7日、チリにある世界最大のエスコンダィダ銅山の2,500名労働者は労働協約交渉で、会社が提示した賃金労働条件の引き下げに対し、逆に改善を要求してストライキに入った。
 ここでは2006年に26日間、2011年に14日間のストライキがあり、その時世界の銅価格は急騰した。銅価格が現在より42%高かった4年前の協約交渉では$49,000のボーナスが支給されたが、今回の交渉で労働組合は7%の賃上げと$39,000のボーナスを要求している。
 銅山の主要株主は豪州のBHPビリトンだが、年間120万メトリック・トン、世界の6%を生産する。バチェレット大統領は話し合いの継続を呼びかけて、介入を強めている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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