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No.441(2017/3/1)
労働法改定でウイスコンシン州の組合員40%減少

 ウイスコンシン州では2011年に共和党優勢の議会により公務員の団体交渉権が奪われ、2015年には民間でも組合費の納入を従業員の自由意志とする“労働の権利法”が導入された。こうなると労働組合に加入しているメリットはなくなる。その結果、組合員数は2010年の355,000人から2016年には40%減少して219,000人となり、組織率も全国平均の10.7%を割り込む8%へと低下した。

 ウイスコンシン大学のデラー教授は「高校を卒業して父親が務めていた会社に就職し、労働組合に加入して時給$30が得られた時代は過ぎた。労働組合が企業競争力を奪ったという者もいるが、労働組合のおかげで中産階級が育ち、所得格差が縮小したことも事実だ」と語り、鉄工業労組の幹部も「労働法改定で中産階級がなくなりつつある」と話す。

トランプ関税と自動車業界、一般生活費の上昇

 トランプ大統領は選挙期間中に物議をかもす様々な公約を行ったが、最大のものはメキシコとの国境障壁の建設である。最近大統領は実際にコンクリートとワイアーによる壁の建設、そして国境税による経済障壁を示唆したが、自動車業界はその影響を強く考えなければならなくなった。
 実際の壁建設の費用と費用捻出が問題になるが、概算では$250億と考えられており、メキシコが払わないとすると誰が払うのか?実際の壁が建設され国境税が実施されたときに米国経済への影響はどうなのか?などの問題が出てくる。

 自動車産業では多くの人がUAWの力を削ごうとする共和党の政策にうんざりしている。トランプ自身も組合が嫌いだが、それでも「外国に流れた雇用を取り戻す」と言明して、可成りの自動車労働者からトランプ支持を獲得した。
 トランプはメキシコに流れる雇用数千名を差し止めたと言明しているが、実際の数字はもっと少ないとの指摘もある。しかし彼は本気で企業に圧力をかけており、一定の効果は出ている。雇用を生み出したと言えないまでも、製造業の雇用減少は抑えている。
 自動車産業における雇用の流れの逆転は至難の業だが、メキシコに流れた雇用の多くは小型車生産に充てられた。しかし米国内2016年のメキシコ車販売は小型車、ミドサイズ、大型、ラグジァリ含めて赤字であり、8%減少した。ガソリンの低価格にもかかわらず、販売好転は見込みうすで、メキシコ生産車はさらに減少の可能性が強い。
 反面、2016年のトラック、SUV、ミニバン販売は好調だったが、これら車種は米国で生産され、労働者の雇用に当面不安はない。
 ただ、自動車販売はピークにあり、好調のSUVもこれ以上の雇用増加の見通しはない。メキシコからの雇用の逆流が期待できたとしても、販売が伸びなければレイオフの危険性もある。トランプ政策がどの程度の効果を発揮するかはいまだ分からない。

 政策については各種の影響が考えられるが、いずれにしてもコスト上昇を伴うことになる。米国生産が増えれば労務費は上昇する。関税は価格を上昇させ、需要は減少する。
 外国では米国生産車への報復関税を引き起こし、海外での販売は減少する。
 企業減税や金融規制緩和で救われる部分はあるかもしれないが、国境問題による価格の上昇と売上高減少の影響は大きい。

 ウオールマートなどに見られるように、消費者は海外の低価格商品に慣れてしまっている。商品はメキシコや中国、ベトナムなどで生産されたものだが、国境税による輸入品価格の上昇は消費者が負担することになり、消費を鈍らせる。
 製造業以外の企業の中で、減税などで大きな利益を享受する企業が出る可能性もあるが、これら利益は労働者の収入に直結しそうに無い。トランプ政策は米国人の生活費を上昇させ、それに追いつく賃上げがあるかどうかも疑問だ。問題は極めて複雑であり、簡単ではない。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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