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No.414(2016/9/12)
ウオールマート中国のストライキ、そして労働問題

 8月24日の米専門誌レーバー・ノーツによれば、7月1日、江西省の首都、南昌市のウオールマートで70名の従業員がストライキを行った。理由は会社が5月に提案したフレックス勤務時間制に抗議するものであった。
 その前日には、広東省深圳市でも抗議ビラを配るなど小規模の活動が起きている。
 南昌市でのストライキは全従業員によるものではなかったが、それでも管理者は非常に驚いて話し合いを持とうとした。しかしストライカーは真剣に討議する姿勢が見えないとして交渉を拒否した。
 中国はワイルド・キャット・ストライキの多発国であり、工場労働者、教師、清掃夫、トラック運転手、タクシー運転手などによるストが年間10,000件を超えている。
 ウオールマートが中国に進出したのは1996年、現在433店舗(10,000人)を展開しているが多くはフルタイム労働者である。しかしパートタイムが増える傾向にある。
 提案されたフレックス勤務時間制は1か月174時間を超えなければ、一日の労働時間や週労働時間を自由に変えられるもので、残業代支払いが抑えられること、副業につく労働者の副業勤務におおきな困難を起こすこと、フルタイムからパートないし一時契約労働への移行を容易に促す危険性がある。
 中国労働法では労働監督機関に届け出れば、こうした勤務体制は認められるが、5月以降管理職による従業員への説得が強制を交えて続いている。
 この点について南昌市のAさんは「ウオールマートは個人の自由を束縛し、署名しなければ帰宅できないと言い、時に暴力をふるうこともある。労働組合も御用組合化して、労働法違反を続けている。監督機関にも訴えたが違反は続いている」と言う。Aさんは既存の労働組合に反対して組合選挙に立候補し、昨年会社を解雇されているが、会社への抗議活動や署名した人たちの翻意を促す活動を続けている。
 苦情は勤務時間制だけでなく、低く抑えられた賃金、組合選挙への介入、発言を求める従業員への脅迫などがある。輸出のための工場団地として開発された深圳市のウオールマートの賃金は1996年から2000年にかけては地域平均の3倍であったが、その後の急速なインフレにより実質賃金は地域の3分の1に低落した。こうした事例が中国各地で起きている。
 特にこの勤務時間制と管理職の脅しに対する従業員の怒りは強く、制度が全国に広がる中で、不満を語り合う場は広がりを見せており、全国的な抗議活動の一体化の動きが強まっている。
 ウオールマート労働者の中心になって活動するのは25人程度、現職者と退職者がおり、組合選挙立候補者も多い。彼らは2014年創立の緩やかな組織、“ウオールマート中国労働者協会(WCWA)”を中心に活動する。2人の創立者のうちの一人であるAさんは「協会は全国のウオールマート労働者が抱える利害を話し合う場として設立された。ウオールマート労働者のための独立組織であり、共通理解と相互扶助を目指して労働者の権利擁護のために、法律相談も続けてゆく。第3者の介入は許さない」と語る。
 しかし協会は非公式団体であるだけに、安定した組合員が存在するわけではなく、常勤役員もいない。居るのはウエッブサイトを担当する職員一人である。組織人員を増やすことに政治的リスクを抱える不安も抱える。こうした中で、ソーシャル・メディアを使った数千名労働者への理解の広がりは大きな力となっている。ある現職労働者は「現在20-30の討議グループがあるが、500人を対象にしているのは10グループ、それ以外のグループは200人から400人程度を抱えている。中には弁護士や永年勤続者もいる。討議は大変活発だが、会社による検索や妨害もあり、警告を受けて脱退した労働者も多い」と語る。その他、直接面談しての相互理解も行われている。ACFTUは「小売企業がこうしたフレックス勤務時間制度を実施しないよう警告する」との声明を発表した。しかしウオールマートを名指しするものではなく、会社は新勤務時間制度を撤回していない。
 WCWAの苦闘する姿は米国ウオールマートの労働団体、“OURウオールマート”との国際連帯にも発展している。WCWAは同様のフレックス時間勤務問題を抱えるUSウオールマート労働者に公開書簡を送って、「今までUS労働者は$15闘争の経験を教えてくれつつ、同時に中国労働者の支援も求めた。このことを即座にウオールマート中国に伝えた」と書いた。「今日のあなたが明日は我が身だ」と。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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