バックナンバー

No.405(2016/7/21)
米国国務省が年次人身売買報告を発表、タイの取り組みを考慮

 米国務省は毎年“年次人身売買報告”を取りまとめており、現在の対象国は188ヶ国である。今年の報告書では、4段階評価の中でタイが最悪の第3階層から第2階層に引き上げられた。
 ケリー国務長官は、報告書は2,000万人に及ぶ世界の人身売買についての注意を喚起する目的で作られており、事実を記述するだけで政治目的などはないと言う。
 最悪の第3階層には27か国がリスト・アップされ、北朝鮮やシリア、ミャンマー、綿花栽培での政府による児童労働と強制労働が指摘されたウズベキスタン、ジブチ、ハイチ、パプア・ニューギニア、スーダン、スリナム、トルクメニスタンなどがあげられる。
 第2階層は人身売買への対策が不十分ながらかなりの努力があったとされる国々で、タイ、マレーシア、キューバなどが第3階層から引き上げられた。
 タイについては、漁業で広範に行われている人身売買と強制労働が問題視されているが、過去2年間で2,000人が解放されており、人身売買業者が2014年に104人、2015年に241人収監され、政府役人も2014年に7人、2015年に34人を有罪とされた取り組みが評価された。
 ミャンマーでは、少数民族のロヒンギャ・モスレムへの法的地位の拒否と仏教徒による迫害のため数万人が国外に逃れ、それが人身売買を助長しているという。その他にも国内各地での強制労働、そして軍隊による児童の徴用も指摘された。
 マレーシアについては、電子産業における35万人、さらにパーム油農園における強制労働、カンボジア女性の人身売買問題、そしてロヒンギャ人の人身売買に関連するマレーシアとタイ南部で発見された数百人の殺害遺体事件があるが、検察調査はあまり進んでいない。にもかかわらずマレーシアの第2階層への引き上げはTPP交渉への参加を配慮したものとの批判がある。
 人身売買は国際的な制裁の対象になるケースが多く、今月初めEUは「タイが強制労働に早急かつ具体的対策を講じなければ、今年末には漁業製品の輸入を禁止する」と通告している。

カナダ労働組合とトルードー自由党新政権が蜜月、その中で公務員給与遅配問題

 昨年11月の総選挙で保守党のハーパー政権が自由党のジャスティン・トルードー政権に代わった。その数日後、ナショナル・センターであるカナダ労働会議(CLC 330万人)の会議に出席したトルードー新首相は「労働組合と協力してゆきたい。閣僚には常に労組と相談するよう指示した」と述べた。
 その後の状況はカナダ公務員労組(CUPE)のハンコック会長が言うように、「今までは労働組合との協議が全くなかった。それが根底から変わって政府との政策協議が進むようになった」と一変した。CLCのハッサン・ユサフ会長も「政府と労働組合が緊密に協議するようになった。最近の成果が企業年金の拡充だ。政府閣僚に電話すると必ず返信があり、労働問題だけでなくTPPなどの通商問題、産業、運輸政策なども協議する。保守党政権にはなかったことだ」と述べる。民間最大労組UNIFORのジェリー・ディアス会長も「過去10年間よりも最近6か月の協議回数のほうが多い。前例のないことだ」と語る。
 他方、カナダ商工会議所は「TPPなどの通商問題では250回に及ぶ相談があったが、企業年金については相談がなかった」と不満を述べる。
 TPPについて企業側は賛成だが、労働組合は雇用を減少させるとして激しく反対しており、政府の協定撤廃に期待をつなぐ。協定の承認期限は2018年2月までだが、米国の態度決定までカナダは手の内を明かさない方針である。
 昨年の総選挙で、労働組合は反労組の保守党政権打倒を目指して結束し、最大州のオンタリオ州では教員組合を先頭に自由党候補を大量当選させて政権実現に大きく貢献した。その自由党支援は従来の左翼政党、新民主党(NDP)支援を大きく変換するものであった。
 その結果、自由党新政権は今までの保守党による反労組政策を次々と廃止しており、組織化を制限する法律、労働組合会計の開示義務、老齢年金支給開始年齢の65歳から67歳への引き上げなども撤廃した。
 労働組合が政権との関係を改善し、権力を掌握できた現状は30年来の好機といえるが、労働組合を取り巻く環境は厳しい。カナダの組織率は先進諸国の中で最高水準にあるが、それでも1997年の21%が昨年は17%へ低下した。中でも製造業は1990年代から400,000人減少して組織率も10%減の26%へ低下、組合衰退の主因となっている。
 新たな分野への挑戦もあり、インターネット・タクシー配送、ウーバー社の運転手組織化などが試みられているが、労働法がいまの経済環境にそぐわない点も多い。しかし、UNIFORに合併した旧カナダ自動車労組(CAW)のバズ・ハーグローブ前会長は「労働組合に力があるなら法律を変えればよい。トルードー政権と協力して実現する」と語る。

 他方、前保守党政権が導入した公務員29万人についてのIBM新給与システムがうまく機能せず、数か月にわたって数千人の給与遅配が起きている。ある公務員が2,500回も給与センターに掛合ったが支払いできない状況から、大手のカナダ公務員連合労組(PSAC)がシステム廃止を要求する事態が起きている。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
Copyright(C) JILAF All Rights Reserved.