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No.403(2016/7/8)
カンボジア、インドネシアの労働事情

 5月20日に行われたカンボジア・インドネシアチームの労働事情を聴く会から、カンボジア労働組合連盟(CCTU)、インドネシア労働組合総連合(CITU)、の報告の一部を紹介する。

<カンボジアの労働事情>

【不安定で劣悪な労働環境、低いコンプライアンス】
 カンボジアの経済成長は堅調であるものの、物価もそれに伴い上がっている。そのため、一部の物価は最低賃金の上昇(1.4倍:2014→2016年)を上回っている。しかも雇用は不安定である。とくに不安定な業種は、建設業や漁業、れんが製造業などであるが、それらの業種は請負が多く、かつ、企業規模が小さいために、労働法によるカバーがなされず、一般的に日当が1日5ドル以上とされる以外に決まりはない。しかも、未成年労働者も多く、事故が発生しやすい劣悪な労働環境にある。事故など何か問題が起こった場合は、すぐ逃げられてしまう。短期で雇用が継続しないため、労組結成しようにもできない。
 カンボジアでは、労働契約にも問題がある。とくに期間の定めのある契約の場合は、失業率が高いことも背景にあり、労働者は非常に不安定な状態にある。さらに、労働条件の改善の要求をしただけで、雇用契約が途中であっても解雇されてしまったり、組合員になっただけでも解雇されてしまうなど、法律は整備されていても、法律に対するコンプライアンスは非常に低い。そのため、労働者は労働組合への加入を躊躇し、組織化の障害となっている。

【労働界全体で互いに協力を】
 カンボジアの労働組合は、複数労働組合の問題を抱えており、同じ企業の中で労働組合同士が競い合う事態になっている。同じ企業の中で多くの労働組合があった場合は、労働組合同士が協定を結んで、競争しないようにしていかなければならない。
 今後、我々の取り組むべき課題としては、労働界全体で互いに協力し、使用者に対して有期の労働契約の利用を止めさせるよう訴えていくとともに、組合員の立場に立って組合員の利益のために運動を進めていくべきである。

<インドネシアの労働事情>

【周辺の諸国と比べて、低い賃金水準】
 最低賃金は、インドネシアの場合、州単位、州ごとにそれぞれ異なる。バタム工業地域を含むリアウ諸島州の数字を例とすると、2014年の月額最低賃金は、166万5千ルピア(1ルピア=0.0077円)で、日額にすると6万6千600ルピア、時間当たりでは9千514ルピアとなった。2015年には、月額195万4千ルピアで、USドルだと大体、143ドルとかそのぐらいだが、日額でいうと7万8千160ルピア、時間当たりでは1万1千166ルピアで、2016年は、月額217万8千710ルピア、USドルでいうとおそらく160ドルほどになる。日額では8万7千148ルピア、時間当たりにすると1万2千450ルピアである。
 インドネシア経済は外国からの堅調な投資に支えられて高い成長が続いており、GDP成長率は、2014年に5.02%、2015年は4.71%、2016年は4.91%に達する見込みである。賃金は近年急速に上がってきたものの、インドネシアは周辺の諸国と比べて、賃金の水準は非常に低い。そういったなかで最低賃金の決定は適正生活が可能となる賃金水準でなされるべきであり、適正な生活が可能となる最低賃金水準へ引き上げを求めていく。

【労働者が持つ権利についての理解】
 労使紛争は、2014年には7万7千700件、2015年は4万8千800件となっている。内容は解雇等、さまざまで、解決方法も二者間の協議で解決するものもあれば、なかには裁判沙汰になるケースもある。裁判沙汰になるような場合は、解雇をめぐる紛争が圧倒的に多い。
 インドネシアの場合、法律的には、労働契約に関して経営側と労働者側が合意した場合、その内容を書面化して、政府に提出することになっているが、現実には労働者も政府にも提出されていない実情にある。
 とくに、インフォーマルセクターの労働者が契約違反や破棄等の憂き目にあうことが多いが、問題なのは、そういった人たちが、労働者が持つ権利について理解しておらず、組織化されるに至っていないことにある。
 また、経営者の側にも、労働組合というものは会社を壊滅させかねない敵だというような捉え方が今なお見られる。政府の側にでさえも組織化された労働組合の発展を阻もうとする間接的な干渉というものがいまだにあり、そのために1つの企業の中で、いわゆる単独の労働組合、インディペンデントユニオンといった形のものが多くなっている。

【課題解決に向けての労働組合としての取り組み】
 インドネシアでは取り組みの際、常に3つのステップを基本的な考え方としている。第1段階は、いきなり行動するのではなく、しっかりとした調査や研究などを行ないコンセプトを定めてから動く。第2段階として、そのコンセプトを、政府や関係者にロビー活動を通じて要求内容をしっかりと伝える。第3段階では社会的支持の拡大を目的としてデモやキャンペーンなど、具体的な行動に移して訴えていく。これらの課題解決についてもそういったかたちですすめていく。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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