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No.402(2016/7/8)
EU国民投票における英労使の動き

 6月23日のイギリスの国民投票の結果は「EU離脱」を僅差で決定したが投票前後の労使の動きを追ってみた。ロンドンに本部をもつイギリス労働組合会議(TUC)は投票日の前日、製造業の使用者団体EEFのテリー・スクオラーCEOとTUCフランシス・オグラディ書記長が異例ともいえる共同声明を発表してEU残留を訴えるとともに「ぞっとするような賭け」をしてはならないと警告した。EU離脱は労働者と労働者を雇用している産業に計り知れない影響をもたらすことになるとし経済の現実について投票する前にもう一度考えるよう訴えた。

 Wales TUC(本部:カーディフ)のマーティン・マンスフィールド書記長は、国民投票について「EUが今現在保障している労働者の諸権利を獲得するために数世代にわたる闘いがあった。ここでEU離脱をすれば、その諸権利を取り戻すまでにまた数世代かかることになる。働く者の諸権利に加えコミュニティーの活性化と一番大事な雇用創出に必要な財政支援をしたヨーロッパと縁を切ってもやっていけるほどウエールズに余裕はない、と残留の立場を明らかにした。

 翌24日、スコットランド労働組合会議(STUC)のグラハム・スミス書記長は、スコットランド首相は、投票結果を受け、独立に向けた2回目の国民投票を実施する意向のようだが、今回の国民投票は2014年のときとは違い、不確実性を増すものであることをスコットランド市民は認識しなければならない。英国の貿易の最大相手国はEU諸国であり、EUが基盤になって保障されていた基本的な労働者の権利が脅威にさらされることになる。EU離脱が憲法上どうなろうと労働者の公平で安定した雇用確保のために従来通り、ロビイ活動と労使交渉をすすめていく。

 また、マンチェスターに本部がある商店通関連労働組合(USDAW)のジョン・ハネット書記長は、EU国民投票については、年次代表者大会で圧倒的多数で「残留」支持を決め、全国の多くの組合員がEUへの残留を望んだにもかかわらず、その民意が反映されなかったのは残念だが、結果は尊重しなければならない。しかし、EUによって守られていた労働者の諸権利がないがしろにされてはならない。国民投票の結果は国を二分したことは深刻であるが、引き続き平和と安全のために近隣諸国との良好な関係を構築していかなければならないと述べている。USDAWはTUC傘下4番目の組織人員約40万人を持つ。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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