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No.400(2016/7/4)
グローバル企業のサプライチェーンでの責任(インダストリオールニュースより)

 5月29日~6月1日に開催されたILO総会ではグローバル企業のサプライチェーンの様々な課題が取り上げられ、その対応が各国政府に提起された。
 ILOの推定によれば、40カ国におけるサプライチェーン内における労働者は世界の5分の1以上を占め、1995年の296万人から2013年には453万人に増加した。
 ITUCの調査研究によれば、世界の大手50企業が雇用している労働者は全体の6%にすぎず、残りの94%、1億1600万人の労働者はサプライチェーン内の下請けや、孫請けの中にいて、表には出てこない。インダストリオールは多国籍企業のサプライチェーンにおける労働権侵害に対処するために新基準を設けるべく、グローバルユニオンの運動に参加する。

 低賃金や不充分な規制や取締りを利用するビジネスモデルがグローバルに拡大している。
 衣服産業では、米国に輸出している20カ国で、労働者権利のスコアが73%低下、価格も42%減少している。サプライチェーンの各段階で労働者の賃金と労働条件は何故悪化しているのだろうか。サプライチェーン全ての段階で労働者は製品を作り、サービスを提供し、自分たちがまともな生活をおくるのに充分な大きな利益を企業にもたらしてきた。CSR(企業の社会的責任)を求める政策は失敗に終わった。賃金や労働時間の改善もなく、労働組合へ入る権利さえも確保できなかった。最悪の事例だが、パキスタンのアリエンタプライズ衣服工場での火災では254名の労働者が亡くなり、バングラデシュ、ラナプラザ工場での崩壊で1134名が死亡したが、いずれの工場もSAI、BSCIという社会的監査保証機関が安全だという証明書を事故の前に交付していた。

 インダストリオールは、グローバルサプライチェーンに関するILO条約を要求する労働者グループを支持し、労働者の権利を尊重し確保するため法的な責任を確立し、そのための道筋を示す。これまでサプライチェーンにおけるグローバルルールがない場合、インダストリオールは1000万人の労働者をカバーする47の多国籍企業とグローバル枠組み協定を締結し、多国籍企業自身が責任をとる措置を講じてきた。最近我々がH&Mと結んだ枠組み協定はミャンマーとパキスタンにおける労使紛争を解決するのに役立った。具体的には組合承認と解雇された労働者の再雇用という解決に至った。この協定は160万人の労働者をカバーした。また、Inditex社と結んだ枠組み協定はブランド衣服供給企業と下請け企業で雇用されている140万人が対象で、基本的労働権の保証だけでなく、工場レベル、国レベル、グローバルレベルでの労使紛争解決制度が謳われている。

 一方、インダストリオールは衣服産業においてグローバル衣服企業とACTというプロセスのなかで生活賃金へのアプローチについて協力し合ってきた。ACT (Action, Collaboration, Transformation) は衣服繊維のサプライチェーンにおける生活賃金実現へ国際ブランド及びアパレル小売り製造者と労働組合がイニシアティブをとるという意味で、ACTは衣服繊維産業を有する国の産業内で団体交渉を通じて協約を結び賃金を改善することが目的だ。そして産業全体にその結果を拡大するだけでなく、全ての製造産業に影響を及ぼすことを狙いとする。
 ACTの過程で関与したグローバルブランド各社とインダストリオールは和合の覚書を締結した。その覚書は衣服生産国で生活賃金の達成には結社の自由と団体交渉権の実現が不可欠と明示している。
 労働組合とバイヤーとサプライヤーを結びつける制度を創ることによりACTのプロセスは公正で安定した衣服産業のために、真のサプライチェーン労使関係を生み出す。ACTは衣服労働者の賃金を改善する最高のチャンスだ。

 インダストリオール・グローバルユニオンは労働者の利益確保のため、サプライチェーンを規制すべく多国籍企業と直接接触し、企業名を名指しし、恥をかかせたこともありました。グローバル競争で賃金や労働条件の悪化に歯止めをかけるべく、サプライチェーンにおけるルールを確立する我々の努力にILOの協力と支援をお願いしたい。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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