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No.399(2016/7/1)
ペルーの大統領選と労働組合

 6月5日、南米のペルーで、大統領選挙の決選投票が行われ、ペドロ・クチンスキー元首相(77)が、4月10日の初回投票ではトップであったフジモリ元大統領の長女、ケイコ・フジモリ氏(41)を、得票率の差が1%以内という稀に見る僅差で破り当選した。投票結果について、ケイコ氏は「ペルーの民主主義のため、結果を受け入れる。責任ある野党となる」と述べ敗北を認めた。決選投票では当初はケイコ氏が優勢とみられていたが、これが覆った背景としては、選挙直前に同氏が党首を務める政党幹部の汚職疑惑が発覚したこと、労働組合が立場の違いを超えて同氏への批判を強めたことなどがあげられる。

 ペルーの労働組合は、ケイコ氏の実父である元大統領のアルベルト・フジモリ氏が、1990年7月、労働組合との対話も掲げて当選したにもかかわらず、就任後は強権政治に転じ、労働法制を改悪して労働組合を抑圧したと批判する。労組の組織率が南米では最低のレベルの8%程度に低迷する原因は、そうした政策にあるとの声も強い。

 ペルーでは、労働組合の主な中央団体として、国際労働組合総連合(ITUC)に加盟する「ペルー統一労働組合同盟」(CUT-PERU)、「ペルー労働組合自治連合」(CATP)、ならびに、最大組織で世界労連(WFTU)に加盟する左派系の「ペルー労働組合総連合」(CGTP)などがある。今年のメーデーでも、CUT-PERUのJ.フィゲロア会長が、「労働者の権利と労働組合を消滅させようとするフジモリ政治(スペイン語でFujimorismo)を労働者の団結で拒否しよう」と訴えていた。

 今回の決戦投票では、これらの組織はいずれもケイコ氏「優勢」への懸念を強め、今回の選挙戦で、労働組合は「1990年代、労働者の権利を多国籍企業の利益に置き換えたあの時代を繰り返してはならない」と訴え、投票前日に首都リマで行われた大規模な「反ケイコ氏」の行動には多数の労働組合員が参加した。

 なお、ペルーの労働組合は、今回当選したクチンスキー氏の政策についても支持はしていない。同氏はポーランド系移民のファミリーであるが、資産家やミドルクラスなどを基盤としており、世界銀行勤務の経験もあるエリートで、2001年のポスト・フジモリ政権で首相を務めた。労働組合は、同氏に対しても、「新自由主義経済の転換、社会保障の充実、労働者と労働組合の権利の尊重」を求めている。

 ペルーの労働者を取り巻く環境は厳しく、2000年代後半の好景気のなかでも、若者の失業率の増大、インフォーマル労働者の増加、主力産業である鉱山での労働災害の深刻化などが見られた。今日、国際的な資源価格の低下などにより経済は足踏みをし、雇用情勢の悪化が続いている。クチンスキー新大統領は7月28日に就任の予定であるが、議会ではケイコ氏の率いる「人民勢力党」が4月の総選挙の結果、過半数を占めており、政権運営には懸念もある。新大統領と最大野党の指導者がはば広い社会的な対話を行い、経済や雇用の分野で新しい舵取りを行うことが期待されているといえよう。

発行:公益財団法人 国際労働財団  http://www.jilaf.or.jp/
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